2019.04.17
Bリーグ2018-19シーズンよりスタートした、ユーザーが対象ショットの中からナンバーワンタフショット『MONTHLY BEST of TOUGH SHOT』を決める、バスケットボールキングとカシオ計算機株式会社による共同企画。記念すべき第5回目(第23節~第24節対象)は比江島慎(栃木ブレックス)が最多票を獲得した。
そこで今回、比江島に受賞記念品のG-SHOCK『AWG-M100SF-1A3JR』を贈呈し、ビッグショットについて話してもらった。また、青野和人ヘッドコーチ(越谷アルファーズ)が、どのようにしてこの一発が生まれたのか、相手やチームメートとどのような駆け引きがあったのかなど、指揮官ならではの視点で解説してくれた。
――『MONTHLY BEST of TOUGH SHOT』の受賞おめでとうございます。まずは率直な気持ちを聞かせてください。
比江島 このような素晴らしい賞は限られた選手しか受賞できないので、とても光栄ですし、うれしいです。
――千葉ジェッツ戦で決めた今回のシュートを振り返ってください。西村文男選手から石井講祐選手にパスが出たところを読んで、スティールして、単独で速攻を仕掛けています。
比江島 山崎(稜)選手と遠藤(祐亮)選手が西村選手にダブルチームを仕掛けたことで、パスコースが限定されていました。石井選手のところに出させるように誘発したらパスが来たので、しっかりと手元を狙ってスティールして、前が空いていたのでダンクできるなと。試合中は結構ダンクを狙っているので、最初からいこうと決めていました。
――後ろからシーホース三河時代のチームメート、ギャビン・エドワーズ選手が迫っていました。
比江島 余裕だと思っていましたが、あんなに近くまで来ているとは思わなかったです。相手が跳んできたので、もうダンクに持ちこむしかないなと。しっかり決まったのでとても気持ち良かったです。第1戦に負けたことで、対千葉戦は天皇杯も合わせると3連敗中だったため自分もチームもすごく気合が入っていました。ダンクはチームに勢いを与えられるシュートで、観客もすごく盛りあがれるシーンの一つでもありますよね。
――オーストラリアから帰国して約2カ月が経過しました。疲れなどは感じていますか?
比江島 僕のシーズンが始まったばかりなので、全然疲れはありませんし、逆にもっともっと試合をしたいです。2月の日本代表戦もフレッシュな状態で臨めて、メンタル面もしっかり作ることができました。
――G-SHOCK、時間についても聞かせてください。
比江島 開幕前にもG-SHOCKさんの時計をいただきました。自分は時間を守れるタイプで、意外としっかりしているんですよ。遅刻はあり得ません。
――今季は変化の多いシーズンになっていると思います。
比江島 様々なスタイルのバスケットに触れることによって、いろいろな考え方や発見があって、本当にいい経験ができていると思います。オーストラリアで結果は残せませんでしたが、行って後悔していません。得るものもありますし、行って良かったなと。それは栃木でも同じで、本当に素晴らしい経験ができています。新しいチームに行くことが大変だとわかりましたが、その中でも自分の持ち味を出していかなければいけません。それは今後の課題でもあります。
――代表での経験はチームでどのように活かされていると感じますか?
比江島 安齋(竜三)ヘッドコーチからは「代表の時のようなプレーをしてくれ」と言われています。帰国当初は試合勘が薄れていましたが、今は代表で自信をつけて帰ってきたと思っていますし、それらを栃木で活かせれば絶対に貢献できるはずです。Bリーグ再開後の三遠ネオフェニックスとの2試合も、精度の高いシュートを決めることができました。(※3ポイントシュートは3本中3本成功の100パーセント。2ポイントシュートは12本中8本成功の66.7パーセント)
――代表やチームにおいて、最後のシュートを任される場面はどのような気持ちでいますか?
比江島 とにかく楽しんで、自分が決めるんだという気持ちでいます。自信を持って打つのと、自信を持たないで打つのは違います。それは「自分が絶対に決める」という気持ちですよね。これまで自分のミスで負けた試合もありましたが、それらも活かしながらそのシーンを楽しむようにしています。もちろん、しっかり責任を持って、打ちきらないといけません。
――シーズンは終盤戦に突入しました。意気込みとファンへのメッセージをお願いします。
比江島 タフショットはチームにいい影響を与えることができて、ファンの皆さんも大いに盛りあがります。今後も狙ってきたいですし、ダンクシュートも決めたいです。その中でチームに勢いを与え、貢献していきたいと思います。チャンピオンを目指しているので、引き続き応援よろしくお願いします。
第4クォーター残り8分で千葉のボール。相手はセットプレーに持ちこむ。シューターの石井講祐選手がボールスクリーンを掛けにいき、同じサイズの選手同士のスクリーンで相手にスイッチなのかを混乱させ、スクリーンのふりをして外側にスリップ(抜けるような動き)。ここで遠藤祐亮選手と山崎稜選手の2人が西村文男選手について行ってしまい、石井選手がオープンとなった。しかしコーナーの選手についていた比江島選手が読みを働かせ、そのパスをスティールし、そのまま前にドリブル3回。追いかけて来たディフェンスに叩かれながらもダンクシュートを豪快に決め、千葉は堪らずタイムアウトを請求した。
比江島選手は栃木に合流後、すぐにシステムに順応。前日の試合ではシーズンハイ(18得点)を叩きだすほど、合流してからどんどんオフェンス力が上がってきていた。そしてこの日はポイントガードに徹して、シュートタッチが絶好調の遠藤選手らにパスを出し続け、チームの勝利を優先できて、献身的にマルチにポジションをこなしている。実はこのダンクシュートが唯一の得点ではあったが、インパクトが強く観客席は総立ちで彼の大活躍を喜んでいた。
千葉には天皇杯から前日まで、3回連続逆転されての敗戦。どうしても悪い流れを払拭する試合にしなければならないとチーム全員が下がって守るのではなく、第1クォーターの初めのポジションから攻めるディフェンスを続けた。誰一人体力の温存などを考えず、球際の選手へ激しいプレッシャーを掛け、フリースロー後はプレスディフェンスを展開し、千葉の選手がほとんどシュートエリアでボールもらえないほどだった。
またこの試合で印象的なシーンとして、第2クォーターに栃木が流れを制して20点差まで広げ、残り3分38秒に千葉がタイムアウトを取った場面。その後のポジションで千葉がプレッシャーの裏をかき、ボールスクリーンに行くふりをして、スリップしてゴール下で簡単な得点を挙げた。千葉の見事な戦術の実行力に対し、栃木はすぐにタイムアウトを請求。安齋竜三ヘッドコーチがこの試合の大事さと絶対に気を緩めないことを確認させるために激しく喝を入れた。たかが1ゴールかもしれないが、1つのきっかけで千葉はゲームをひっくり返す実力があるのを理解しての行動であった。栃木をよく知る指揮官にとって選手とブースターに「栃木の勝ち方」を伝え、将来栃木の歴史を語るのに大切な一戦となった。
インタビュー=村上成
解説=青野和人
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