12月19日、「第96回天皇杯・第87回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会」の皇后杯ファイナルラウンド女子準決勝の2試合が行われ、7連覇中のENEOSサンフラワーズと2013年以来の優勝を目指すトヨタ自動車アンテロープスが決勝進出を決めた。
決勝では2大会振りとなるこのカード。ともに日本代表候補選手を多く擁するチーム同士の対戦となったのだが、今大会では少し事情が異なる。
ENEOSは、主軸を担う林咲希、梅沢カディシャ樹奈らをケガで欠いてファイナルラウンドに臨んだが、さらに16日の準々決勝で渡嘉敷来夢が大ケガをするアクシデントに見舞われた。決勝も、大黒柱を欠いての戦いとなる。
一方のトヨタ自動車は、タイムシェアしながら多くの選手を起用するスタイルで、馬瓜エブリン、ステファニー姉妹をはじめ選手個々がしっかりと役割を果たしており、選手層は厚い。
しかしENEOSには女王としてのプライド、意地がある。準決勝では気迫でデンソーアイリスを圧倒しており、トヨタ自動車のルーカス・モンデーロヘッドコーチも「渡嘉敷選手はいませんが、ENEOSが連覇しているには必ず理由があります。いい選手が多く、成長しているからです」と語っている。
そのような中、決勝戦で注目したいのが2人の新人だ。
ENEOSは、準決勝で渡嘉敷の代わりにスターターとして出場した中田珠未。明星学園高校、早稲田大学時代と、いずれも世代のトップを走ってきた選手で、182センチで走力もあるオールラウンダーだ。準決勝では20得点3リバウンドという数字を残し勝利に貢献した。
「梅嵜(英毅)ヘッドコーチからは、試合前に30点取られてもいいからリバウンドは10本以上取るようにと言われていました。正直、渡嘉敷さんの穴は個人的にも大きくて、いつもはシックススマンの役割なので、最初からチームの代表として出るのは荷が重かったのです。スタッツ的にはリバウンド10本は取れなかったのですが、(要所で)ボックスアウトを徹底することはできたました」と中田。
さらに「ベンチからも、試合に出ているメンバーからもみんなが声を掛けてくれました。小さなプレーでもほめてくれて、私がやりやすいようにしてくれたので、周りのおかげです」と準決勝を振り返った。
いよいよ迎える大一番、「渡嘉敷選手は『それしかできないから』と言うけれど、私的にはそれが力になってるし、冷静でいられます」と、中田はベンチから大きな声を出して後押しする渡嘉敷の思いも背負って挑む。
一方、トヨタ自動車のルーキー・平下愛佳は、桜花学園高校を卒業した18歳。高校時代は名門・桜花学園において1年生の頃から主軸を担っていたほどの実力を持つ。
皇后杯、日立ハイテククーガーズとの準決勝では29分37秒の出場で13得点5リバウンド3スティールの活躍。得意とするミドルシュートなどをコンスタントに決めていた。そんなルーキーをモンデーロヘッドコーチはこう評する。
「若い選手なので少しずつ学んでいってほしいし、才能もあると思います。今日は13点決めましたが、どの試合でも13点決めることのできる選手だと思っています。まだ若いので、プレッシャーを与えず、どんどん成長してほしいと思います」
また約30分近い出場時間について「以前はディフェンスの面で足りていないところがありましたが、今はそこも成長している。だからこそ多くコートに出ていて、それを得点につなげることができています」とも語った。
「ルーキーと感じさせないほど気持ちが強い選手」とは馬瓜エブリン。勝負強さと安定感があり、度胸満点のプレーをさらりとこなしてしまうのも平下らしいといえるだろう。
どちらも高いポテンシャルを持つ選手たち。トップチームに加入後、初となる『決勝』という舞台でどんなプレーを披露してくれるのか、期待したい。
文=田島早苗