【井口基史のスカウティングレポート】B1のヘッドコーチが出そろった…「新型コロナの与える影響は!?」

新型コロナウイルス禍の中、各クラブは開幕の準備を進める(写真は昨年の開幕戦から)[写真]=B.LEAGUE

バスケットボールレポーターとして人気の高い井口基史氏の経歴は非常に興味深い。なぜなら氏のプロフィールにあるように「スカウト・通訳・GM・クラブ代表まで経験」しているからだ。開幕を約1カ月後に控えた各クラブの状況はどんな感じなのだろうか? 特に今年は新型コロナウイルスの影響で誰も経験したことのない時間を過ごしている。そこでクラブの裏事情を知る井口氏だからこそできるレポートをお届けする。

文=井口基史

 ブースター、クラブ、地域の期待を預かるチームの指揮官、ヘッドコーチ(以下HC)が出そろった。B1という国内最高峰のステージで、チームの指揮をとることができる人物は今シーズン20名。

 その内訳は日本人HCが16名、外国籍HCが4名という状況です。昨シーズンはシーズン途中のHC交代もありますが開幕時点では日本人HCが13名(最終15名)、外国籍HCが5名(最終3名)という状況からすると大幅に増えたわけではありませんが、最終3名を外国籍HCの数字とすると1名多いことになります。日本人と外国籍HCの割合を比べることが今回のトピックではありませんが、新型コロナがどのようにチームに影響するかをREPORTしたいと思います。

そもそもシーズンオフはどういう時期か

 私がチーム編成の仕事をしていた時は、オフシーズンはシーズン中に訪問しコミュニケーションや感謝を伝えることができないパートナー企業を回るパートナーツアーや、社会貢献活動でコミュニティーを訪れるなど、非常に大切かつ、ある意味クラブが一番ファイトしないといけない期間ですが、ここではバスケットボールにフォーカスします。

 まず移籍動向が落ち着き始める『7月上旬から』日本人選手達が合流しチームとして決められた練習がスタートする。それまでは個人やグループ単位でワークアウトと呼ぶ自主練習に費やされていた時間を、7月のあるタイミングからチームスケジュールに準じて、HC以下全てのコーチングスタッフがそろった状態でチームの取り組むメニューに入っていく。

 ワークアウト期間もHCやコーチングスタッフと共に過ごすことはあると思いますが、あくまでも選手本人やコーチングスタッフがシーズン中に感じていた個人の課題、チームに必要な能力を伸ばす期間という別の考え方。チームスケジュールが始まれば個人を伸ばすことは当然継続しますが、よりチームとして取り組みHCが求める強度のコンディション、HCが求める筋肉量などに加えて、HCの目指すバスケットボールの共有の期間に入っていきます。

 チームによっては早い時期から外国籍選手の合流を求めるコーチもいると思いますが、一番多いのは『7月末~8月中の外国籍選手の合流』。それまでの期間に日本人選手だけでHCが求めるディフェンスとオフェンスのチームルールの確認を積み重ね、外国籍選手が合流した時にはそのルールを体に染み込ませ、徐々に5対5のゲーム形式の練習で成果を確認し合い、大学生、B2、B3のチームと練習試合を行います。

各クラブは開幕戦で最高のパフォーマンスを発揮できるように準備を進めている [写真]=B.LEAGUE

『9月に入ると』より具体的にベースラインやサイドラインからのスローインのシステム作り、5~10分で5~10点差で負けている状況からどうやって追いかけ、逆転するかのシチュエーションのスクリメイジ。10秒以下で逆転しないといけないスペシャルプレー系。ゾーンやプレス、トラップ系のディフェンスを用意するなど、非公開の練習試合と公開されるプレシーズンゲームで試すことを変えながら『10月の開幕を』迎えることになります。もちろん準備が足りなければ急にHCから練習試合のおかわりもありますが、開幕前の方がコーチングスタッフも選手も辿り着いておきたい着地点のイメージが多く、身体だけじゃなく頭も心も一番忙しい期間でもあるかもしれません。

新型コロナで合流できない事態

 報道されている情報ではバスケットボールに限らず、バレーやラグビーなど外国籍コーチや選手の入国について、関係各所が誠意状況改善に動いてくださっている状況ですが、チームビルディング期間をHC不在で過ごすことは、HCはもちろん、選手、スタッフ、クラブは不安な状況だと推測されます。のちに合流予定の外国籍選手も必要なタイミングで来日できるか不透明だと思いますので、同様の不安があると思います。

ゲームマネージメントだけでなくHCの仕事は多岐にわたる [写真]=B.LEAGUE

 日本人選手にしてみると、自分を使ってくれるはずのHCにワークアウト期間のアピールのチャンスが薄くなってしまっている。きっとメニューは与えられているはず、映像で練習はチェックしているはず、オンラインを使ったミーティングも行われているはず、時差を乗り越えライブで練習も見ているなど、対策は全て講じていると思いますが、満足な状況ではないかもしれません。特に6人目やベンチからスタートを奪いたいなど、昨シーズン十分なプレータイムが無かった日本人選手にとってはさらにつらい状況で、おそらくハイライト映像やスタッツの多い選手が重宝され、マニアなブースターが好きな短い時間で貢献するタイプの選手には、さらなるファイトをしないとプレータイムがえられないシーズンになるかもしれません。

求められるチームマネージメント

 どこかのタイミングで暫定HCやHC代行、アシスタントコーチの昇格などを決断しないといけない時期がくるかもしれません。また外国籍選手が予定通り合流できない場合は、未完成のロスターでスクランブル開幕することもありえるでしょう。

 仮に開幕に間に合ったとしても、コミュニケーションやカルチャー作りからスタートしないといけないチームが陥るスロースタートは、ブースターにとっては全試合をアリーナでフルブーストできない環境に加えた、高いフラストレーションになるかもしれません。

 5シーズン目のBリーグ。経験したことのない新型コロナの状況下でマネージメントチームの判断力、リスクの考え方、また緊急事態にはチームもブースターからも頼られるベテランやOBの存在まで試されるかもしれないと感じています。

 昇降格がないシーズン。新型コロナでも様々なファイトの姿勢をブースターに示すチームが、歴史の中で「あのピンチを残り超えた経験がある」とコート内外でも戦い続けるカルチャーを背負うカラーになりそうな気がします。

 我々にできることは少ないですが、コートの外からできるブーストも、違うレベルのクオリティーが求められるシーズンになりそうですね!

 うぉー!! 燃えてきたー!!

シーズンを終えたとき、どのHCが勝利の美酒に酔えるだろうか [写真]=Getty Images

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