ケガ人を抱える川崎を気負いなき篠山竜青が支える。「一目ぼれ」した同世代との初対面も糧に

ベンチスタートとなっても篠山竜青の存在感は変わらない [写真]=B.LEAGUE

「チームの現状を考えたときに、交代でコートへ入って、チームの状況をガラっと変えてくれる選手として、今は篠山に控えとしてその役割をやってもらっています」――

 こう語ったのは、12月7日に71―53でレバンガ北海道を破った川崎ブレイブサンダースの佐藤賢次ヘッドコーチだ。マティアス・カルファニジョーダン・ヒースの相次ぐ離脱のため、新外国籍選手を迎えてのチーム作りを余儀なくされ、さらに長谷川技をケガで欠くという緊急事態の中、川崎は12月2日の宇都宮ブレックス戦からはじまったバイウィーク明けの試合で3連勝を飾っている。その過程で主将の篠山竜青はベンチスタートを務めているのだ。

故障者続出というチームの危機に佐藤HCは篠山のベンチスタートを決断 [写真]=B.LEAGUE


 あくまでも期間限定の起用であると佐藤HCは言う。本音を想像すれば先発で起用したいだろうが、経験豊富な司令塔であり、ルーズボールなど泥臭いプレーもいとわない彼を控えに回すことは現状、ベストな選択なのだろう。

 篠山本人も仲間の負傷に心を痛めつつも、任された役割をまっとうできていることに、一定の手ごたえを持つ。

マット・ボンズ選手とセドリック・シモンズ選手が入ってきたからこそ、自分自身もなるべく早く彼らがスムーズにプレーできるように、ゲームをコントロールしないといけません。それをバイウィークから意識して取り組んできました。その中で2人がしっかりチームのプレーに絡んでいると感じているので、ある程度は彼らの個性を引き出せてやれているのではないかと思っています」

 ここまでのシーズンを振り返ると決して満足できる個人スタッツではない。しかし、本人は「あまり悲観的にならなくてもいい」と振り返った。「数字的には物足りない部分も今シーズンは続ている」としながらも、高い2ポイントシュート成功率(56.9パーセント)や18試合で24本の3ポイントシュート試投数を踏まえて、心と体の準備にフォーカスしていることを語った。

「リズムに乗ればどんどん打つマインドになるのですけど、今はチームのリズムの中で打たないといけない場面でしっかりと打っていこうと思っています。気持ちの持ちようの少しの差ですね。きっと(数字は)上がっていくと自分で信じていますし、それに向けて練習をしています」

 篠山にとって12月6日の北海道戦では心踊ることもあった。プロ車いすバスケットボール選手(NO EXCUSE所属)香西宏昭がとどろきアリーナへ応援に訪れたのだ。香西との縁はリオのパラリンピックに向けた予選にさかのぼる。篠山は香西のその華麗なプレーに「一目ぼれ」をしてしまったのだという。ただ「LINEでは仲良くなりましたが、会ったことがないという不思議な感じでした」と直接会うことは今回が初めて。8月に開催された『BASKETBALL ACTION 2020 SHOWCASE』ではニアミスに終わり「写真を撮りたかったのですが、叶わずでちょっと悔しいんですよ」と会見で話していただけに、ようやく巡ってきた対面を次のように明かした。

「香西選手は高校を卒業してからの海外挑戦などを含めて、いろいろな経験をされており、まさか同い年とは思っていませんでした。もっと車いすバスケと交流を深めて、スポーツとして広まっていければ良いなと思っています。競技を見れば分かっていただけると思いますが、本当に激しいスポーツです。2人とも30歳を過ぎて東京オリンピック・パラリンピックを目標としてやっている話をしているので、本当に良い刺激になりました。これからもお互いで高めあいながらやっていきたいと、改めて昨日お会いして思いましたね」

香西宏昭選手のプレーに「一目ぼれ」したと篠山。ついに憧れの人と対面 [写真提供]=川崎ブレイブサンダース


 ともに1988年生まれで、チームを引っ張る立場である。待望のひと時は両者にとって競技に取り組む糧になったことを感じさせた。

 尊敬する同世代から受けた刺激は、篠山にとって今後に向けた活力となるだろう。現在、川崎は東地区4位。緊急事態と思われる状況であるが「しっかりケガをせずにコートに立って、昨シーズンの分も含めてやろうという思いが強い」と、数字や環境に焦ることなく前を見すえる。チームとともにステップアップする彼の姿に気負いはない。

文=大橋裕之

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