プロの舞台でも得点力を発揮するレバンガ北海道の山口颯斗…「自分の強みをうまく出せている」

レバンガ北海道で早くも先発を務める山口颯斗[写真]=B.LEAGUE

満22歳以下の選手を対象に、個人の能力に応じた環境を提供することを目的として運用されている「特別指定選手」。これまで数多くの選手が特別指定選手としてBリーグ各チームに加入してきたが、今年も多くのホープたちが参戦した。レバンガ北海道山口颯斗もその一人。昨年行われた第72回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)で得点王に輝いた実力をBリーグでも遺憾なく発揮し、出場10試合で平均9.1得点と大活躍。2月10日の宇都宮ブレックス戦から先発を務めるなど、早くもチームの中心選手になりつつある山口は、プロでどのような活躍を思い描いているのか。

インタビュー・文=岡本 亮 取材日=2021年2月23日

宮永HCのスタイルに共感して入団を決めた

――レバンガ北海道に入団を決めた理由を教えてください。
山口 理由は3点あって、1点目はチームのコンセプトが「オールコートでのハードなディフェンス」ということ。僕はディフェンスが苦手なので、(ディフェンスを)やらなければいけない状況に身を置くことで、改善できるのではないかと思いました。そして、宮永(雄太)ヘッドコーチのバスケットが外国籍選手に頼らず、どの選手にも攻めるチャンスがあるスタイルだということ。あと、ポジション的にも他チームと比較して出場するチャンスを多くもらえるのではないかと思い、入団しました。

――大学4年次は新型コロナウイルス感染拡大の影響で思うように練習や試合をこなせなかったと思いますが、具体的にどのような影響がありましたか?
山口 コロナの影響を初めに体感したのは、U22日本代表の合宿が途中で打ち切りになったことです。その後、筑波大でも4月3日以降体育館が使えなくなって…。5月中旬から授業という形で使用できるようになりましたが、部活動が再開したのは7月中旬ごろでした。

――体育館が使えない時期はどのようにコンディションを維持していたのですか?
山口 自宅でトレーナーの方とZoomでトレーニングをしたほか、栃木県の実家に帰省して、近くにある屋外用のバスケットコートでシューティングをしたりしていましたが、屋内と屋外では感覚が全然違うので、(部活動が)再開したてのころは自分のシュートタッチを忘れていました。

――そういった難しい状況を乗り越えて迎えたインカレは準優勝という結果に終わりました。
山口 4年生たちと一緒にできる最後の大会だったので、勝って終われなかったのは本当に悔しかった。優勝して終わりたかったです。

――インカレでは準々決勝でキャプテンの菅原暉群馬クレインサンダーズ)選手が負傷離脱したため、山口選手にもチームを引っ張ることを期待されたと思います。
山口 菅原の負傷離脱など様々な要因が重なった結果、大会をとおして4年生で僕だけがコートに立つ時間帯がありました。2年生からスタートで出させてもらい、チームの中心にいたので、プレーで引っ張っていこうとしましたし、「勝ちたい」という思いから「頑張ろう」とか「やろうよ」という周りへの声掛けが自然と出るようになりました。本来、僕は菅原や野本に着いて行ってコートで仕事をするタイプなので、あそこまで声を出したのは誰も見たことがなかったと思います(笑)。

――筑波大学での4年間は大きな財産になりましたか?
山口 そうですね。筑波で過ごした時間は自分の人生の中で一番成長できたと感じているので、とても大切な4年間になりました。

レバンガの「どの選手にも攻めるチャンスがある」スタイルに惹かれたという[写真]=B.LEAGUE

新人王も狙っていきたい

――卒業後の進路はプロが第一志望だったのですか?
山口 小学生のころからプロしか考えていなかったので、ほかのことは一切考えていませんでした。

――では、プロが夢ではなく目標に変わった瞬間は?
山口 大学2年生から試合に出られるようになり、その時から「プロにはなれるだろうな」と内心思っていたので。その頃から目標に変わり、プロになるための具体的な課題が見えてきたという感じです。

――1月23日の横浜ビー・コルセアーズ戦でプロ初出場・初得点を果たしました。
山口 デビュー戦で得点ができなかったら「もどかしい気持ちで終わる」と思っていたので、積極的にシュートを狙いにいきました。初得点は、自分の中では曲がって落ちたと思ったのですが、うまくリングに入ってくれたので素直に良かったです。

――2月10日の宇都宮ブレックス戦でプロ初先発を果たしましたが、先発することは数日前に伝えられていたのですか?
山口 全然そんなことはなくて、当日の朝の練習でも何も言われず、試合開始の1時間半前くらいに「今日最初から行くぞ」と伝えられました。特に緊張はなかったですが、相手が(地元の)宇都宮ブレックスということもあり、気持ちが入りすぎちゃっていたので、少し空回りしてしまいました。

――ここまで10試合に出場して平均9.1得点。ここまで活躍できている理由を分析してください。
山口 一番はまだスカウティングされていないので、どういうプレースタイルか分からない部分があると思います。それ以外でもドライブからのフィニッシュは今までずっと練習してきたので、そういう部分が通用しているのかなと。あとは身長を生かしたポストアップなど、自分の強みをうまく出せているなと思います。

――では、逆にプロの舞台で感じた自身の課題は?
山口 やはりディフェンスの部分ですね。不甲斐ないと思う瞬間がありますし、外国籍選手への対応もまだできていないところがある。1対1ではやれている部分もありますが、外国籍選手が絡んでくると、まだまだダメだなと思うところがたくさんあります。

――宮永HCの印象を教えてください。
山口 コート外では、ヘッドコーチとしては若く、ベテラン選手と近い年齢くらいで気さくに話しかけてくれるので、そこはうれしいです。コート内ではやるべきことをハッキリして、ダメな時は率先して声を出してチームを締めてくれるので、僕が言うのはおかしいかもしれませんが、「本当にヘッドコーチ1年目なのかな?」と思うくらいです。

――ここまで雪深いところに住むのは初めてだと思いますが、北海道の街の印象は?
山口 一言でいうと寒い(笑)。あと、僕はそこまで都会に住んだことがなかったので、札幌は都会だと思います。雪と寒さは大変ですが、それを除けば素晴らしい街ですね。

――ブースターの印象を教えてください。
山口 お客さんはたくさんいますし、今は声が出せないですが応援の熱はすごく感じています。僕のグッズを持って手を振ってくれるとうれしいですし、とても熱い方たちだなと思って楽しくコートに立たせてもらっています。

――では今シーズン、残り試合どのように戦っていきたいと思っていますか?
山口 まずは平均2ケタ得点を目標にやっていきたいですね。あと、うちのチームはリバウンドが弱いので平均5本くらい記録できればと思っていますし、このまま試合に出続ければ新人王の資格が今シーズン限りとなるので、そこも狙っていきます。

――最後にブースターへメッセージをお願いします。
山口 山口颯斗という選手が新たに入りました。直接アリーナへ来て応援していただくことが一番ですが、このご時世なのでなかなか難しいと思います。ですが、画面越しでも応援の熱は伝わっています。僕のことをもっと知ってもらいたいですし、チームがもっと勝てるように頑張っていくので、応援よろしくお願いします!

「ブースターの方の応援の熱はすごく感じている」と話す[写真]=B.LEAGUE

PROFILE
山口颯斗(やまぐち・はやと)レバンガ北海道
1998年10月1日生まれ、栃木県出身。正智深谷高校から筑波大学へ進み、2年次からスターターに定着。昨年行われたインカレでは準優勝に終わったものの、敢闘賞と得点王を受賞した。インカレ終了後にレバンガ北海道への入団が発表され、1月23日の横浜ビー・コルセアーズ戦でプロデビュー。鋭いドライブや体格を生かしたポストアップなどから積極的にリングへアタックし、チームに勢いを与えている。
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