2016.12.24

1年次のウインターカップで訪れた転機、女子日本代表の栗原三佳を変えた恩師の一言

バスケ情報専門サイト

今年の夏に開催されたリオデジャネイロ・オリンピックでメダルまであと一歩と迫ったバスケットボール女子日本代表のシューター、栗原三佳。ブラジルでも、その高精度の3ポイントシュートで世界の注目を集めた栗原は、地元の“普通”の中学校から、縁あって強豪、大阪薫英女学院高校へと進学し、ウインターカップにも2度出場した。もともと“バスケットボールエリート”ではなかった彼女は高校時代にどういう成長曲線を描いたのか。苦い思い出もありつつも、飛躍のきっかけにもつながったウインターカップについて語ってくれた。

インタビュー=村上成
写真=三浦彩乃

――大阪薫英高校に行くことになった経緯を教えてください。
栗原 中学校の顧問の先生や、担任の先生の縁で一度練習試合に行き、そこで声を掛けていただきました。あまりバスケットボールで高校に行くことを意識していなかったので、戸惑いはありました。高校ではバスケをするつもりではいましたが、勉強して受験してと考えていたので(笑)。

――実際に薫英に入ってみての印象はどうでしたか?
栗原 本当に強いチームの試合を初めて見て、こんなところでできるのかな……というのが最初の印象です。入ってみても全国大会に出場したことがある選手や、先輩もみんなうまくて「みんなすごいなー」と他人事のように感じていました。1年間は日々勉強で、日々ついて行くのに精いっぱいで迷惑を掛けないようにしっかりやるという感じでした。

――薫英特有の練習などはあったのですか?
栗原 中学が門限や下校時間に厳しい普通の中学校だったので、放課後だいたい1時間くらいの練習に、週1回の朝練という環境だったんです。それが、高校に入って毎日朝から2部練になって、まず練習量が違いました。「みんなこんなに練習するんだ」という感じでしたね。それと私が高校生の時には、大学生も同じ体育館で練習をしていたので、バスケットボールの幅広い世界を見られたというか、大学生と試合をする機会も多く、体の違いやスキルの違いを感じました。

――実際に試合に出始めたのは?
栗原 コンスタントに試合に出ることができるようになったのは2年生になってからですね。

――1年生の時と2年生の時にウインターカップに出場されていると思いますが、ウインターカップにはどのようなイメージをお持ちでしたか?
栗原 大阪はインターハイに2チーム出場することができるのですが、ウインターカップは1チームのみの出場なので、とにかくピリピリした試合が多かったです。1年生も2年生も試合には勝ったのですが、すごく緊張感がありました。

――コンスタントに試合に出始めたのは2年生だと思いますが、1年生の時に、実際に初めて出場したウインターカップの印象はどうでしたか?
栗原 1年目の時は必死過ぎて、先生に「他の試合も見てしっかり勉強しておけ」と言われました。夏のインターハイよりも冬のウインターカップに強いチームが出たりしたので、何が違うのかよく観察しましたね。2年生になると試合に出始めて、夏のインターハイでは相手に通用していたプレーが、相手もレベルアップしているので、冬に通用しなくなったりして、勝つ難しさがさらに増した感じでした。

ayanomiura_161208_252

――ウインターカップにどのような気持ちで臨んでいましたか?
栗原 2年生の時には、自分が来年は最終学年になるということを意識し始めた時期でした。責任感も出始めていたので、「成長しないといけない試合なんだ」という想いはあったのですが、うまくいかないことも多くて、苦しい大会でしたね(苦笑)。相手のチームも自分たちのことをよく知っているので、攻める部分の難しさがあったり、自分がしっかりしないと、というプレッシャーを自分自身に掛けてしまったりということも重なって、夏のインターハイとは違う雰囲気を感じていました。

――3年生の時はキャプテンとしてウインターカップの予選に臨んだものの、残念ながら出場できませんでした。その時のことを教えてください。
栗原 その試合は、確か残り10秒くらいで逆転されて負けてしまい、会場が男子と同じだったのですが、立ち直れなくて、男子の試合がやっている間中、泣いていました(笑)。ウインターカップに出られなくなり、オールジャパンに目標を切り替えて、実際にオールジャパンに出場できたので、そういう意味では泣いて気持ちを切り替えられて良かったです。

――残り10秒で逆転された時の気持ちは憶えてますか?
栗原 もう唖然として……。あと10秒あるってわかっていたけど、気が付いたら終わっていたという感じです。負けてしまった要因は、エースのケガなどのアクシデントもあったのですが、やはり高校3年なので、メンタル的な焦りもあったり、この試合で負けたら終わりというプレッシャーもあったり(苦笑)。だから、試合が競ったことで硬くなってしまったのかもしれません。

――栗原選手がウインターカップから得たものや今に活かされているものは何でしょうか?
栗原 1年生の時に、会場で試合を見ていて、先生から「これからは、こういう舞台で戦える選手にならなきゃならない」と言われて、こういう人たちを目指してがんばろうと思えたのが大きいです。全国のベスト4になると、また一段レベルが上がるのですが、そこを目指してがんばろうと思えました。プレーはまだまだなのに、気持ちだけは上を目指していましたね(笑)。先生のその一言で、もっと自分を出そうと気持ちが一気に変わりました。

――その先生の一言が、現在でもバスケット選手を続けていることにつながっているんですね。現在もWJBLで活躍中ですが、普段、試合の際に履かれている『ナイキ』のシューズの履き心地はいかがですか?
栗原 安定性を重視しているので、全体が固定されるシューズが好きなんです。また、ナイキのシューズはデザインを選べるシリーズもありますし、好きな色を選んで試合に出て、それがモチベーションになります(笑)。ナイキはウェアも、着て楽なのにデザイン性が高いのはいいですよね。

――最後に、今年ウインターカップに出る選手にメッセージをお願いします。
栗原 3年生は最後の試合になると思うので、思いきって楽しんでほしいというのが一つ。今までがんばってきたことを出そう出そうと思い詰めずに、今までやってきたことに自信を持ってやってほしいですね。

BASKETBALLKING VIDEO