2017.12.29

フロアワイパーたちのウインターカップ。“モップガールズ”の献身にフロアも心も洗われる

モッパーとして部に伝わる伝統を踏襲しつつ、自分たちでアレンジを加えているという[写真]=加藤夏子
バスケットボールキングプロデューサー(事業責任者)。学生バスケをテーマにしたCM制作に携わったのがバスケに関する初仕事。広告宣伝・マーケティング業務のキャリアが一番長いが、スポーツを仕事にして15年。バスケどころの福岡県出身。

 高校バスケットボールの頂点を決める冬の祭典ウインターカップ。全国から集った強豪校が激闘を繰り広げ、詰めかけた観客を魅了する。もちろん高校ナンバーワンを決める大会の一番の見どころは、質の高いプレーと胸を締め付けられるような緊張感のある試合であることは間違いないが、この大会を見ていると思わず目を奪われるのが各コートに配置されたフロアワイパー(フロアにモップかける係)たちのキビキビとした仕事ぶりだ。

 その無駄のない洗練された動きは一見の価値があり、ビシっとした礼儀作法も、完璧なチームワークも、なにより選手に事故がないように配慮して懸命に動くその姿には思わず心を奪われる。このフロアワイパーを務めるのは「東京都高体連バスケットボール専門部」に所属する先生を顧問に持つバスケットボール部員たちで、大会の運営に補助役員として参画している。

 この補助役員たちはテーブルオフィシャルズやフロアワイパーなどの役割を割り当てられ、東京で行われる様々な大会で活躍をしている。このフロアワイパーの苦労や、そのやりがいについて女子準決勝のフロアワイパーを務めた立教女学院高校の中西さん、笠原さん、森山さん、武智さんの4名に話を聞いた。

立教女学院の武智さん、笠原さん、中西さん、森山さん

 中西さんの説明によると、ウインターカップでは「東京都高体連バスケットボール専門部」の中から20校程度が事前にフロアワイパーとして割り振られて、大会が進むにつれて、トーナメントのように、その試合ごとのの動きや働き方を見て、徐々に担当校は絞り込まれていくという。

 キビキビと統制のとれた動きについては、事細かにルールが決まっているのだろうと勝手に推測していたが、意外や意外、臨機応変に対応しているとのこと。各学校ごとに先輩から引き継いだやり方をベースにしつつ、その担当をするフロアワイパー同士で、フリースローラインを拭くときはどうするか、ハーフタイムはどうするのかなど声掛けをして対応しているという。

 やっていて難しいなと思ったことは何かとの問いに、中西さんは「ハーフラインのギリギリのところで選手が転倒することがあると、第4クォーターには選手も大量の汗をかいていてフロアが濡れてしまうので、観客のみなさんの観戦の邪魔にならないようにも気を使いますし、選手もハーフライン近くだとすぐに戻って来て危ないので細心の注意を払います」と語る。この判断を瞬時にしなければならないのが、この仕事の難しさだという。

 ウインターカップでフロアワイパーを務めての感想を聞くと、「接触とか何事もなく無事に終わってほしいと思っています」と森山さんが率直な想いを口にすると、笠原さんは「3年生にとっては引退のかかる最後の大会なので、責任感をもってやっています」大会の重みを感じてフロアワイパーの重責にあたっていると語る。今年初めてフロアワイパーを務めることになった1年生の武智さんは「すごい一生懸命プレーしている姿をみて、少しでも役にたちたいと思っています」と笑顔で話す。中西さんは「全国大会という大きな舞台で、モップをかけるだけなんですけど」と苦笑すると、「私たちはモップをかける、ただそういうことだけに1年間をかけてがんばっているので、ウインターカップはその集大成です」と微笑んだ。

 ウインターカップで繰り広げられる数々の素晴らしいプレイ。切れ味鋭いドリブルも、豪快なブロックショットも、鮮やかな3ポイントシュートも、粘り強いディフェンスも、事故の不安なくプレイできるのは、このフロアワイパーの献身的な働きがあってこそ。彼ら彼女らの行き届いたパフォーマンスが数々の激闘を生み出していることを忘れないようにしたい。

同じ高校生である彼女たちの献身的な働きがウインターカップを支えている[写真]=加藤夏子

文=村上成

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