敗戦後、大粒の涙を流した東海大福岡の内藤唯…“急造PG”が見つけた新たな道

今大会は本来のポジションと違うポイントガードでプレーした内藤[写真]=山口剛生

 常にポーカーフェイスを崩さなかった東海大学付属福岡高校(福岡県)の内藤唯(2年)が、試合後、大粒の涙を流した。

「自分がゲームを作らなきゃいけなかったのにできなくて……」

 内藤は急造仕立てのポイントガードだ。メインガードを務めていた吉末菜桜(3年)が県大会で負傷し戦線離脱をしたことをきっかけに、フォワードの内藤がその役を任せられることになった。ポイントガードを専門とする選手が他にもいたにも関わらず、宮崎優介コーチが彼女を大役に抜擢したのは、期待の表れでもあったのだろう。

 内藤がポイントガードとしてプレーする上で、最大のネックとなったのが会話力だった。話をするのが苦手で、自分の要求を仲間にうまく伝えられることができない。インタビューをしていても、お世辞にも弁が立つタイプには見受けられなかった。

 東京成徳大学高校(東京都)戦では、ボールをまわりに散らせないという内藤のもう1つの弱点がそのまま表れたが、その理由の一つもコミュニケーション不足にあった。「指示に出ていた『フラッシュ』というプレーを途中で誰もやらなくなった時間帯があったのに、そこで自分が指示を出せなかった」と悔やむ。

10センチ近い身長差がある相手とのマッチアップにも苦しんだ[写真]=山口剛生

 試合後には、宮崎コーチから「自分の役割を果たせたのか?」と厳しい叱責を受け、涙がこみあげた。プレーや性格を鑑みると、本来のポジションである点取り屋のほうが自由に思いきりプレーできるかもしれない。

「これからもポイントガードを続けたいですか?」と尋ねると、「フォワードになってドライブしたいです」と言いきったのちに、控えめに「けれど……」と続けた。

「やっぱりポイントガードをやってみたいです」

 ポイントガードとして独り立ちするためには、自分自身を変えなければならない。これからも悩み、苦しみ、涙を流すこともあるかもしれない。それでも“司令塔”という可能性を見つけた内藤は、簡単には止まることはできないのだ。

文=青木美帆

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