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『B MY HERO!』
どんな強豪校であっても、歴史を紐解けば必ず「初出場」という扉を開いている。ただ彼ら、もしくは彼女らが素晴らしいのは、その開かれた扉を一度や二度で閉じることなく、そこから伝統を築きあげたことだ。だからこそ今、周囲から強豪校と呼ばれている。
「平成30年度全国高等学校総合体育大会 バスケットボール競技大会(インターハイ)」の初日。しかも第1試合。強豪校でも緊張しそうなコートに立ったのは初出場の鳥取城北高校女子バスケット部(鳥取県)だった。創部は1961年というから、もう少しで50周年を迎える。就任3年目の石谷洋祐コーチは「今の3年生とゼロからチームを作りあげてきました。何とか全国に出ようと精一杯やってきて、その3年生が力をつけて、下級生にもいい選手が入ってきてくれた」ことが歴史の扉を開いた要因だと語る。
その一方で校舎の建て替えに伴い、体育館も建て替えとなり、今春までは近隣の体育館を借りる日々が続いていたという。体育館が借りられないときは、鳥取が誇る観光スポット、鳥取砂丘さえも彼女たちのトレーニング場になった。学校が変わる過渡期にありながらも、彼女たちは工夫を凝らし、懸命に練習を重ねて、インターハイ初出場を決めたわけである。もちろん歴史の扉を開くことと、その先をさらに進んでいくことは別次元の話だ。
「1週間前にこちらに入って、インターハイに出場するチームと練習試合をするなど、全国基準の速さや強さなどへの準備はしてきたつもりだったのですが……。緊張して硬くなったのか、ゲームの出だしで力が発揮できませんでした」
千葉経済大学附属に57-77で敗れた後、石谷コーチはそう振り返った。その言葉どおり、勝負の分かれ目は最初の10分だった。ボールが手につかず、リバウンドでも苦しみ、ディフェンスの間合いさえもうまく取れずに、ミスから失点を重ねていった鳥取城北は第1クォーターを6-21で終えた。第2クォーターの10分を見ると18-20、第3クォーターは16-16、第4クォーターは17-20と、数字上はほぼ互角である。それだけに最初の10分間が悔やまれる。無論、敗因は初出場の硬さだけではない。
鳥取県予選を終えたあとに、1試合で20点近くを取る175センチのセンター、渡邉ほのかが腰を負傷し、エントリーから外れたこともチームにとっては大きなダメージだった。それでもキャプテンの草刈美樹は、「みんなでカバーしようと話し合って、実際にその穴が埋められたかどうかはわからないけど、チームで一つになって戦えたと思います」と胸を張る。
2年生ガードの石田愛理の母親と妹が手書きで作ったという横断幕には「心ひとつに」と書かれている。石谷コーチは「インターハイ出場が決まって新しいものを買おうかと思いましたが、これほど素晴らしいものを作っていただいたので、それを掲げさせてもらいました」と言う。
初めてのインターハイは苦い結果に終わったが、歴史の扉の先に見えたのは、家族を含めたチーム全員の心をひとつにした鳥取城北女子バスケット部の、伝統の礎であった。
文=三上太