2019.07.27

【インハイ男子展望】地元ライバルたちの思いも背負い、令和初の高校王者に輝くのはどこだ!

本格的に取材を始めたのが「仙台の奇跡」と称された2004年アテネ五輪アジア予選。その後は女子バスケをメインに中学、高校と取材のフィールドを広げて、精力的に取材活動を行っている。

 令和初のインターハイが7月28日から薩摩川内市を中心とした鹿児島県で行われる。ここでは4つのブロックに分けて、それぞれの注目カードや勝ちあがりなどを展望する。

 男子の第1シードは東海ブロック大会を制した桜丘高校(愛知県)。昨年は絶対的エースの富永啓生(レンジャー短期大学入学予定)を擁してウインターカップでも3位に入ったが、今年のチームは全員でディフェンスを頑張り、粘り強く戦うスタイルだ。また、リトアニアからの留学生・198センチのラポラス・ベンツロバス(3年)の成長もチームのプラスになっている。しかしその桜丘が左上のブロックをすんなりと抜け出すかと言えば、決してそうではない。

 近畿ブロック3位の報徳学園高校(兵庫県)や、U16日本代表候補に選ばれた金近廉(2年)を擁する関西大学北陽高校(大阪符)が序盤の刺客だ。その関西大北陽も初戦で戦う別府溝部学園高校(大分県)を突破しなければならない。別府溝部学園は昨年のウインターカップで全国デビューを果たすなど、急速に力をつけてきている。さらには関東王者の実践学園高校(東京都)や、下級生時から中心メンバーとして起用されてきた三谷桂司朗(3年)を擁する広島皆実高校(広島県)など力のあるチームもあり、どのチームがメインコートに立つのか、全くわからない。つまりは上記以外のチームにも十分にチャンスがあるわけだ。

東海ブロックを制して第1シードを獲得した桜丘[写真]=田島早苗

 左下のブロックは東北ブロック大会を制した明成高校(宮城県)が一歩リードか。八村塁のワシントン・ウィザーズ入団に沸き、後輩たちも「塁さんの続け」とばかり、今大会に意気込んでくるだろう。山﨑一渉や菅野ブルースといった1年生に注目が集まりそうだが、実際にはチームの土台を固める木村拓郎(3年)や、ガードとしての力を試される2年生の越田大翔らが勝敗のカギを握る。

 その明成とベスト8をかけて戦うであろう東海大学付属諏訪高校(長野県)にも注目したい。ディフェンスをベースにしたチーム作りは定評があるが、加えて今年は司令塔の黒川虎徹(3年)がオフェンスでどんなタクトを振るうのかに期待がかかる。しかし両校とも、対戦に至るまでには北陸高校(福井県)や飛龍高校(静岡県)といった強豪校を破らねばならず、体力との勝負にもなる。

 その先にも、新設されたU20日本代表に選出された杉澤ロメオ(3年)がいる東海大学付属札幌高校(北海道)、渡邊雄太(メンフィス・グリズリーズ)の母校である尽誠学園高校(香川県)、桐光学園高校(神奈川県)や延岡学園高校(宮崎県)など実力校が手ぐすねを引いて待っている。興味深い対戦としては、尽誠学園と延岡学園の「師弟対決」もある。もちろんともに勝ち上がればの話だが、延岡学園の楠元龍水コーチは尽誠学園で渡邊雄太とともに戦った卒業生。恩師である色摩拓也コーチとどのような駆け引きをするのか、対戦が決まれば、ぜひ注目したい。

今年の明成は下級生主体の大型チーム[写真]=小永吉陽子

 右上は福岡第一高校(福岡県)が引っ張る形になる。昨年のウインターカップを制したときの主力メンバー、河村勇輝小川麻斗、クベマジョセフ・スティーブ(いずれも3年)の3人が残り、激しいディフェンスからの超高速トランジションゲームは、相手チームを一瞬にして飲み込むほどの破壊力を持つ。

 その福岡第一に並々ならぬ思いを抱いているのが、ベスト4をかけて戦うことになるであろう東山高校(京都府)。昨年のウインターカップ2回戦で福岡第一に完敗し、そのリベンジを狙う。東山もまた米須怜音、中川泰志、ムトンボ・ジャンピエール(いずれも2年)といった昨年からの主力メンバーが残っている。米須と中川はまだ2年だが、その下級生を支える松野圭恭や脇坂凪人といった3年生も力をつけてきており、対戦すれば壮絶なゲームになりそうだ。

 もちろん、その2校以外にも土浦日本大学高校(茨城県)や北陸学院高校(石川県)、そして地元・鹿児島代表の川内高校が彼らの隙を虎視眈々と狙っている。特に川内はある意味でこの大会に賭けてチームを作ってきたと言ってもいい。エース・野口佑真(3年)を中心に集大成を見せたいところだ。また初出場の成立学園高校(東京都)の戦いぶりにも注目したい。

新チーム発足後は未だ無敗の福岡第一[写真]=大澤智子

 右下は昨年度のインターハイ王者で今大会の第2シード、今年の北信越大会も制した開志国際高校(新潟県)が抜けだしそうだ。ポイントガードの髙木拓海とセンターのジョフ・ユセフ(ともに3年)を軸に、2年生のジョーンズ大翔がかき回し、安定感のある板澤明日起(3年)がしっかりとまとめていく。そのチーム力は昨年の主力(現・大学1年)が抜けても健在だ。

 その開志国際とベスト8をかけて戦うことになりそうなのが、昨年のインターハイ決勝で敗れた中部大学第一高校(愛知県)。しかし今年はもうひとつ元気がない。常田健コーチはリーダー不在を嘆くが、昨年の大舞台を経験している深田怜音やバトゥマニ・クリバリ(ともに3年)らが殻を破れば、1年生にシューターの福田健人、ポイントガードの谷口歩が加わり、チャンスは十分にある。

 それらとベスト4をかけて争うチームは混とんとしている。高知中央高校(高知県)と、小野秀二コーチを正式に迎え入れ、新たな伝統構築に向かっている能代工業高校(秋田県)が半歩リードか。しかし他チームにも十分にベスト8進出のチャンスがある。蛇足だが、もし右上から福岡第一、右下から開志国際が準決勝に勝ちあがれば、井手口孝コーチ(福岡第一)と富樫英樹コーチ(開志国際)の“日本体育大学での同級生対決”も実現する。

 ともあれ、今年度はインターハイの出場枠が減少したため、昨年以上に濃厚な大会になりそうだ。そして今年度もファイナリストの都道府県にはウインターカップの出場枠が追加される。地元のライバルたちの思いも含めて、やはりインターハイは季節以上の熱を帯びそうだ。

ディフェンディングチャンピオンとして臨む開志国際[写真]=田島早苗

文=三上太

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