2021.08.11

「人間性が抜群」…指揮官も脱帽する小林高校・永田姫舞の『主将力』

2回戦では24得点8アシストをマークした小林の永田[写真]=伊藤 大允
元バスケットボールキング編集部。主に国内バスケ(Bリーグ、高校・大学バスケ)を中心に取材活動中。バスケでオウンゴールしたことあります。

 8月10日から新潟市東総合スポーツセンターで「令和3年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」の取材をしていて、思ったことがある。それは、初日から160センチに満たないガード選手の活躍が目に留まるということだ。

 杉吉優花・美咲姉妹(ともに3年/156センチ)、原愛翔(鎮西学院高校3年/153センチ)、佐藤愛華(湯沢翔北高校2年/152センチ)、滝本絵里菜(下妻第一高校1年/158センチ)……。このほかにも該当する選手はいるが、どの選手も小さな体を目一杯使ってコートを駆け回る姿が印象に残っている。

 その中で、本稿で紹介したいのが小林高校(宮崎県)の永田姫舞(3年)だ。

 156センチのポイントガードは、スピードに乗った切れ味鋭いドライブで相手を切り裂き、初戦の東海大学付属諏訪高校(長野県)戦、続く盛岡白百合学園高校(岩手県)戦と、ともに24得点をマーク。81−80と最後までもつれた白百合学園との最終盤では、逆転された直後に迷わずペイントアタックを試み、そこから自らのシュートで再逆転となる決勝点を挙げてみせた。

 今年の小林高校には、困ったときに得点を取ってくれる八十川ゆずゆ(3年)がいる。永田は、この日の勝敗を左右する場面でエースに頼らなかった。最後のプレーについてたずねると、「得点が欲しいときは八十川にたくすことは多いですが、ここぞというときには自分も点を取りに行くという強い気持ちを持っているので」と答えた。

 また、小さいながらもフィジカルが強く、「リバウンドが得意」と永田は言う。その言葉どおり、試合中は臆することなくリング下の肉弾戦にも参加し、ここまでの2戦合計で17リバウンドを記録している。

 小林高校の“走るバスケ”を体現するスピードに加え、得点、リバウンドでもチームに活力を与える彼女の影響力は、まだある。背番号4を託される永田の最大の魅力は、先頭でチームを引っ張るキャプテンシーだ。

 今春から指揮を執る橘裕コーチは「人間性が抜群」と切り出し、永田についてこう話した。

「キャプテンということもあって、言葉の力が素晴らしいと感じています。選手たちのことをよく理解していて、その場に合った的確な言葉を使って仲間に伝えることができる。現在、小林高校の練習では単に『怒る』ことをしないようにしていて、それをしっかりと言葉で伝えようというテーマで練習をしているんです。彼女はそれをちゃんと理解してくれています」

 永田はたとえ味方がミスをしたとしても、必ず笑顔で駆け寄って声をかけ、最後は「パチン!」と音が鳴るほどのタッチを交わしてプレーに戻る。

「ミスをして自信をなくしてしまったら良いプレーが出なくなってしまうので、誰がどんなミスをしても絶対に自分が笑顔で声をかけて、一人ひとりが100パーセントのプレーを引き出せるように意識しています」(永田)

「『小さくても強いんだ』ということを全国でも証明したくて、練習中から全員が意識しています」とも語った小さな主将は、明日もコート上で大きな存在感を放つ。

積極的にチームメートに声をかける永田[写真]=伊藤 大允

写真=伊藤 大允
取材・文=小沼克年

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