2023.06.06

翻訳アプリも駆使しチーム変貌…精華女子が4年ぶりにインターハイ出場

インターハイ出場を決めた精華女子 [写真]=佐々木啓次
中学や高校、大学などの学生バスケットをはじめ、トップリーグや日本代表と様々なカテゴリーをカバー。現場の“熱”を伝えるべく活動中。

 6月4日、飯塚市総合体育館にてインターハイ福岡県予選の女子決勝が行われた。男子同様に女子もインターハイの出場権は一枠。例年し烈な争いが繰り広げられているが、今年は昨年のインターハイでベスト4入りを果たした東海大学付属福岡高校と、前日の準決勝では福岡大学附属若葉高校との延長戦を制して勝ち上がってきた精華女子高校とが顔を合わせた。

 試合は、「出だしの、あの3ポイントシュートがチームを楽にさせてくれたかなと思います」と、大上晴司コーチが語るように、序盤に下川蒼乃(2年)が連続で3ポイントシュートを沈めた精華女子が勢いに乗る。谷千優(3年)や米森奈々心(2年)らの得点に加えて、1年生のアキンデーレ タイウォ・イダヤットが高さと強さを生かしたリバウンドで大きく貢献。アウトサイドの選手たちの思い切りの良いシュートも光り、精華女子が前半を終えて33-19とリードした。

 後半、東海大付福岡の伊良部由明(3年)、伊東友莉香(2年)らに得点を許して点差を縮められたものの、精華女子はアキンデーレ タイウォ・イダヤットのリバウンドシュートや堅いチームディフェンスで踏ん張り、リードを保つ。終盤には2点差に詰められた場面もあったが、最後は谷の3ポイントシュートで勝負あり。57-52で勝利し、4年ぶりのインターハイ出場を決めた。

強気のプレーでチームを引っ張った精華女子の谷 [写真]=佐々木啓次

 試合後、「2年生エースがケガでいない中、ほかの選手たちがよく頑張ってくれたと思います」とコメントした大上コーチは、4月末からチームに合流したアキンデーレ タイウォ・イダヤットの存在についても、このように語った。

「明らかにチームが大きく変わってきたというか、彼女がチームの中でも一番明るく、声を出して頑張ります。彼女からもらうエネルギーも、チームメートには大きな力になったと思います」

 アキンデーレ タイウォ・イダヤットは、合流して日も浅いため、翻訳アプリを使って会話をすることもあるようで、決勝でもアプリを用いながら、タイムアウトを取る度にチームメートに『シュートを打って。リバウンドは私が取るから』と伝えていたという。「その言葉で(周りの選手たちが)思い切りシュートを打てたのだと思います」とは、大上コーチ。また、そのリバウンドはオフェンス面だけでなく、彼女がからむことで東海大付福岡のセカンドショットのチャンスの芽も摘むなど、ディフェンス面でも大きな影響を与えていた。

精華女子のアキンデーレ タイウォ・イダヤットはインサイドで大きな存在感を示した [写真]=佐々木啓次

 チームに目を向ければ、「今日がベストディフェンスでした」と、指揮官が語るように、持ち味でもあるチームディフェンスが機能。キャリアのある相手ガード陣に対しても「3ポイントシュートやドライブを気持ちよくさせる場面がほとんどなかったのではないかと思います」と、大上コーチは言う。これに対して東海大付福岡の宮﨑優介コーチも「アウトサイドでうまく打たせなようにと相手がしっかり守ってきていました。そこでうちはドリブルからスタートしてしまい、リズムが崩れてしまいました」と、試合を振り返っていた。

「いいマインドで40分間戦ってくれたのは、全国大会に出られなかった昨年の3年生の分もという思いが強かったから。そういったことも含めてすべてがいい形で出せたゲームでした」と、喜びを言葉にした大上コーチ。全国大会に向けては、「昨年、東海さん(東海大付福岡)があれだけの成績を残して、(福岡は)男子だけではないぞという爪痕を残してくれました。私たちも全国ベスト4を目標に、(インターハイ開催地の)北海道に行きたいと思います」と、意気込んだ。

 4年ぶりのインターハイ。精華女子は、悔し涙を流してきた先輩たちの思いも背負いながら、全国で大暴れする。

東海大付福岡は伊東の奮闘で追い上げを見せたが… [写真]=佐々木啓次

取材・文=田島早苗
写真=佐々木啓次

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