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結果は敗退だったとしても、試合内容では負けていなかった。
まさに“グッドルーザー”という表現がぴったりだったのが四日市メリノール学院(三重県)だ。
12月23日に開幕した「SoftBank ウインターカップ2023 令和5年度 第76回全国高等学校バスケットボール選手権大会」。武蔵野の森スポーツプラザの第3試合で四日市メリノールが福岡県1位出場の東海大学付属福岡にチャレンジした。
同チームを率いるのは、全国中学校大会やJrウインターカップでチームを優勝に導いただけでなく、U16女子日本代表のスタッフとして、U17女子ワールドカップとの開催が重なったU16女子アジア選手権では薮内夏美ヘッドコーチに替わって采配を振るった稲垣愛コーチ。その経験豊富な指揮官にとってもウインターカップで指揮を執るのは今大会で2回目だ。
戦前の予想では東海大福岡有利と見られていたが、稲垣コーチはオールコートのプレッシャーディフェンスとインサイドへの寄りの早い守りで対抗。特に留学生への守り方は、全中や国際大会での経験を活かした戦術とも言えた。
「前半を1ケタ点差(のビハインド)で終え、第3クォーターは我慢して、第4クォーターで勝負」
稲垣コーチのイメージ通りに後半を迎えたが、ここで想定した試合運びにほころびが見え始める。激しいディフェンスはファウルの危険性をはらんだ諸刃の剣。寄りや飛び出しの早さが仇となり、ファウルトラブルに陥った。特にセンター陣のファウルが重なったことで、オフェンスリバウンドを奪われて、連続得点を許す結果となる。そして、第4クォーター残り4分26秒にはこの試合で最大となる16点ものリードを奪われる展開となった。
それでも四日市メリノールは諦めない。ここから太田蒼が4本の3ポイントシュートを決めて点差を1ケタ台に引き戻す。プレッシャーの強いディフェンスも試合終了まで勢いが衰えなかった。
稲垣コーチが悔しがったのは東海大福岡が予想以上に崩れなかったことだ。前半は互角に近かったリバウンドの数も終わってみれば東海大福岡の58本に対して四日市メリノールは28本。24本のターンオーバーを誘発させたディフェンスはほぼ成功したと言えるのだが、後半に入って高さの面でのビハインドが重くのしかかった。
試合後、メディア対応した稲垣コーチは、「うちの子たちは本当にすごいなと思って指揮をしていました」とコメント。「最後まで諦めずに本当によくやってくれたと思います」と、選手たちをほめ称えた。
「それでも(東海大福岡は)さすがでした。修正力というか、最後まで崩れなかったと思います。そのようなチームを相手に選手たちは頑張りました。中学から上がってきた子たちの多くは主力ではないし、太田にいたっては、中学時代、ベンチに入った経験もありませんでした。それぞれが本当によく成長したと思います」
稲垣コーチが「100点満点の出来だった」と評価するのも当然と言えるだろう。
志摩に次ぐ24得点をあげた太田は「3年生を勝たせてあげられなかった」と悔し涙にくれた。それでも「どんなときでもシュートを決めきれる選手になりたいです。そのためにももっと練習を頑張りたい。来年こそは目標であるベスト8に入りたいと思います」と決意した。
文=入江美紀雄