ビタミン炭酸飲料『MATCH(マッチ)』のCMをご存じだろうか? 今年の『マッチ』のCMは、平野紫耀さんと天龍源一郎さんが出演する高校を舞台にしたシリーズ。「なぜバスケを題材に?」と素朴な疑問を持ったバスケットボールキング編集部は大塚食品マッチ担当プロダクトマネージャーの小林一志氏に直撃! すると大塚食品とバスケットボールとの浅からぬ関係が浮かび上がってきた。
インタビュー=村上成
部活動のあとなど、汗をかいた後に飲んでほしい『マッチ』
――今年の『マッチ』のCMではバスケットボールを題材としています。そのきっかけについて教えてください。
小林 『マッチ』は20年ほど前に発売された商品ですが、コンセプトは「ビタミンとミネラルが入っていて、ゴクゴク飲める微炭酸」で、軽い運動後や遊んだあとに飲んでもらいたいものです。発売当初から認知、拡大をしていくための戦略や、どのような時に飲んでもらっているのかを調べてきました。その結果、部活動を終えてみんなで帰る時に一気に飲み干すというシーンが特徴的でした。軽く汗をかいたあとの他、しっかり運動をしたあとに飲んでいる方も多く、それも特に中高生を中心とした若い層でした。また、『マッチ』のことを知らないし飲んだこともない、知っているけどどんな味かわからないから飲みたくない、買って失敗するのが嫌だと感じている方も多いとわかったので、新規のお客様に飲んでもらえるような取り組みを考えたのです。まずは実際に体感していただこうということで、運動シーン、特に今回、バスケットボールシーンでのサンプリングを開始しました。試合や練習が終わったあとに飲んでもらえるきっかけを作ろうと。そしてもう一つ、マスメディアの広告も連動させようと、テレビCMなどにバスケットボールシーンも入れました。高校生の日常をみなさんに共感していただけるようなストーリーを作って訴求することは毎年行っていますが、サンプリングしているシーンと連動する広告を作っていきたいと思ったので、今回のようなCMにしました。
――CMのキャッチコピー「青春は、戻らないらしい。」とはどのような意味ですか?
小林 私は2011年から『マッチ』を担当していますが、キャッチコピーの中に「青春」という言葉を絶対に入れようと決めていました。それをどう表現するかで毎年悩んでいますが、ただ「青春」といっても青臭くて終わってしまうと思うので、高校生のみなさんに共感していただけるようにと考えています。キャッチコピーを検討する際、高校生の意見も聞き、今の、青春真っただ中の時期を大切にしてもらいたいなという思いがあって、どのように伝えると共感してもらえるかを考えています。青春は大人になってもあると思いますが、大人目線ではなく、高校生目線で表現できないかと考え、最後に「らしい」をつければという話にまとまりました。
――CMの反響や、「青春は、戻らないらしい。」というキャッチコピーの手応えはいかがですか?
小林 キャッチコピーが独り歩きしてくれていて、SNSなどで「#青春は戻らないらしい」を見かけますので、ある程度の評価をされていると感じています。CMは同級生が大人になってしまったというストーリーですが、そのようなところでより青春の大切さを表現できていると考えています。
――昔はビビアン・スーさんの「ビタミンスーマッチ」が流行りましたよね。
小林 そのキャッチコピーをすごく長く使っていたので、今の30代、40代の方はそれがすごく印象に残っているみたいです。
誰でも共通な思い出がある身近なバスケットボールを題材に登用
――今回はバスケットボール部が題材ですが、バスケットボールという競技に対してどのようなイメージをお持ちでしたか?
小林 私自身はサッカーをしていましたが、バスケも学校の授業で必ずやるくらい身近なスポーツですよね。体育館やグラウンドに必ずといっていいほどバスケットのゴールがあるので、どの年代の人でも接する機会が多かったと思います。最近はバスケの人気が上がってきて、中学校の部活動では部員が一番多いようですね。それは、バスケ部は男女ともあるところがほとんどだからかなと思います。それならバスケットボールを取りあげてみようと考えたわけです。
――今回のCM制作にあたって、エピソードや苦労した点があれば教えてください。
小林 苦労はいつもしているんですけど……(笑)。どのようにしたら中学生や高校生の共感を得られるかが一番難しくて。「The青春」というストーリーを作っても、やはり少しかけ離れてしまう場合もあるかなと。ただ逆にそれがオチの作りにもつながっているかもしれません。キラキラしたものだけが青春ではなく、少しリアルな部分も入れつつ、「まぁ確かにそうだよな」と思ってもらえるような作り方を意識しています。
――テレビCMという限られた時間の中で表現するのは難しかったと思います。
小林 最初にストーリーを作ってからいろいろと考えるのですが、15秒って本当に一瞬です。それだけに苦労はしますが、クリエイティブや制作スタッフの方々と相談しながら、作りあげています。
――実際に売れている層は、ターゲットにしている学生層ですか?
小林 実際は20代が多いです。発売して20年が経っていることもあり、当時学生だった現在の20~30代の方々がベースになっていると思います。10代はトライアルというか、新規で開拓していく年齢層なのでとても重要です。また、その上の世代が離れないようにすることで、新規層も含めてブランドを大きくしていかなければいけません。ただ、ブランドの印象は10代の時に認知、体験していただかないと、後々忘れ去られることもありますので、中学生や高校生の年代をすごく大事にしています。大人になって飲んだ時に「懐かしい」という感情など、少しでも思い出にしていただけるようになっていきたいですね。
――今後はどのような展開を予定していますか?
小林 今後も中高生のみなさんが共感していただけるようなストーリー作りを考えています。いろいろと構想を練っていますので、ご期待いただければと思います。