エゴとシュートセレクションの狭間で決め切ったシューター金丸晃輔

6年ぶりの代表戦で17得点をあげた金丸晃輔 [写真]=fiba.com

なぜ今まで代表に招集されず、なぜ今呼ばれたのか

ワールドカップで得た話題を解消するためには日本代表に金丸晃輔のシュート力が必要だ [写真]=小永吉陽子


 FIBAアジアカップ2021予選、アウェーでのチャイニーズ・タイペイとの一戦は、全員得点で39点差をつける快勝だった。帰化選手が不在で上背のない相手ではあったが、誰が出てきてもプレッシャーディフェンスを仕掛けて失点を50点台に抑えたことは、ワールドカップで課題に上がったディフェンス面で強度と意識が変わったことを示していたと言える。そんな中で注目を集めたのが、ライアン・ロシターと並ぶ17得点を記録し、スコアリングリーダーとなったシューターの金丸晃輔だ。

 金丸は2012年のアジアカップ(のちのアジアチャレンジ)でベスト5を受賞し、2014年のアジア競技大会で3位に躍進した時の主力だ。特に、2014年のアジア競技大会では中国以外がフル参戦という強豪ぞろいの中、長谷川健志ヘッドコーチ指揮の下で金丸と辻直人の両シューターが当たった大会。公式戦での代表復帰はその2014年以来、6年ぶりになる。

 正確にいえば、候補選手や強化試合には何度か選出されている。2016年には長谷川体制のもとでオリンピック最終予選の候補として中国遠征に参加。2017年2月にはルカ・パビチェビッチ体制でイランとの強化試合に出場。フリオ・ラマス体制となった2018年1月には熊本で開催された強化合宿に招集されている。だが、公式戦の代表12名に残ることはなかった。2016年のオリンピック最終予選に関しては、右足のアキレス腱を痛めていたことが落選の原因だった。当時、痛切な胸の内をこのように語っている。

「シーズン中もアキレス腱の痛みを抱えながらやっていたし、毎年、どこかしら痛くて、トレーニングとケアをしてギリギリのところでプレーしています。自分はチームではフルに出なければならない立場なので、シーズンを棒に振るようなことはしたくない。そうならないように代表活動ができればいいのですが、なかなか難しいです」

 今回のように1試合だけの予選ならまだしも、連戦の国際大会ではタフさが必要とされる。毎大会、終盤に失速するスタミナやメンタルのなさが当時の課題であったため、コンディション不良からハードワークができない選手が落とされるのは当然のことでもあった。

 だが、ワールドカップで3ポイントの試投数でも確率でも課題が出た今、人選や戦術を見直す必要があった。ラマスHCはあくまで「今のベストメンバーを構成する」と強調していたが、試してみる価値があるからこそ、シュート力を持つ金丸を招集したのは間違いない。金丸自身、ワールドカップを外から見ていて「仮に僕が出てもシュートどころか、簡単にボールを持たせてもらえないと思うほど、メンタルとフィジカルが強い舞台だと感じた。でももう一度、国際大会で自分のシュートを打ってみたい思いはありました」と久々の代表選出に思いを馳せていた。

代表で生き残るために、エゴを殺してでも取り組んだ課題

ラマス体制で試合に出場するためにエゴを殺すことを覚悟 [写真]=小永吉陽子


 ただ、金丸が代表で生き残るためにはもう一つ問題があった。自チームと代表でのプレースタイルの違いを受け入れ、短期間でアジャストすることだ。シーホース三河であれば「僕のやりたいように自由に得点できる」スタイルだが、日本代表ではシュートセレクションを重視する。世界を相手にシュート確率を上げるには、パスを展開してペイントアタックからのキックアウトで確実な『ノーマーク』を作り出すことが求められ、ピック&ロールからの展開も多い。

 金丸のように、ディフェンスがタイトな状態でも一瞬の隙を見て打つ『タフショット』は、チームの流れと違うことから好まれなかったのが、ラマスHCの金丸評だった。さらに本人が「僕はピックができないので…」と正直に明かすように、ピック&ロールの攻防については改善していかなければならなかった。
 
 これまで金丸が代表で好調なスタッツを残した2012年は鈴木貴美一体制で、2014年は長谷川体制だった。この時代はピック&ロールを多用しておらず、シューター陣はオフボールでの運動量とスクリーンを生かしてキャッチ&シュートで打つスタイルで、金丸自身、今もこのスタイルで生きている。そんな中で今回は「シュートセレクションを意識して、タフショットに見られないような感じを探っています」とエゴを殺してチームメイトに合わせていた。その結果、「特にこの2人が練習でいい感触だった」(ラマスHC)という理由で、金丸と安藤周人がシューターとして選ばれたのである。

 チャイニーズ・タイペイ戦の金丸は、3ポイントだけでなく、フローターやステップバックシュートなど、本来のマルチな得点力を見せたことでアピールができたといえるだろう。そしてラマスHC自身も、シューター用のフォーメーションを遂行させるなど、金丸の特性を認めて生かしていたことに、これまでとの変化が見えた。試合後には「金丸の得点能力は申し分なく、ディフェンスでも貢献してくれた」というコメントを出している。

「ゾーン」は打つからやって来るというシューター持論

シューターとしての矜持を語った金丸 [写真]=小永吉陽子


 ところで、金丸は予選直前に行われた2月17日の宇都宮ブレックス戦で3ポイント7/7本でパーフェクトという驚異のシュート力を見せているが、この時は「ゾーンに入っていた」という。

「ゾーンに入ってしまえばディフェンスが目の前にいても落ちる気がしません。でもゾーンの状態にするのが大変なんです」と持論を語る。では、ゾーンに入るためにはどうしているのか? との問いには「とにかく打つこと。空いたら全部打つ。そういうメンタルを持つこと。入り続ければゾーンに入っていくけど、迷ったら絶対にシュートは入りません」

 一方、代表での金丸は、チャイニーズ・タイペイ戦前には「空いたら自分が全部打つというメンタルになるには練習がまだ足りない」と言っていたが、試合が終わると「代表はスクリーンの強度が強いのでノーマークになりやすい。悪くはない感触で打てました。久々に楽しかったですね」と、クールな男から、ようやくはにかむ笑顔がのぞいたのだ。

 今回のチャイニーズ・タイペイは上背がなく、ディフェンスも甘かった。ゆえに、Bリーグでも見ないような金丸がコーナーで待ち受ける展開や、ノーマークになるチャンスが多かったともいえる。世界ではこんなに簡単には打たせてはくれないだけに、今後、さらなる強豪と対戦する時に、決め切れるかどうかが問題である。ただ――金丸を生かす動きが作れるのであれば、一瞬の隙を逃さないシューターを使わない手はない。6年ぶりの代表戦を終えて金丸はこう言い切った。

「ラマスHCはタフショットがダメというより、シュートセレクションを大事にしているのだと感じました。シューターは、打つべきところで打つものだと僕は思っているので、これからも、シュートセレクションを大事にしながら、自分のタイミングだったら絶対に打ちます」

文=小永吉陽子

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