2023.02.13

アディダスが窮地に…YEEZYとの契約解消により最大で約1000億円の営業赤字が発生か

アディダスに約1000億円の営業赤字が発生か[写真]=Getty Images
某ストリートメディアのシニア・エディターを経験後、独立。ひとつのカルチャーとしてバスケットボールを捉え、スポーツ以外の側面からもNBAを追いかける。

 アディダスが今、経済面で危機的状況に陥っている。

 ドイツのスポーツブランド最大手は、2023年の業績の見通しを公開。そのなかで投資家が目を背けずにいられなかったのは、同社が説明した「YEEZY(イージー)」とのパートナーシップ解消による副作用だった。

 YEEZYは、世界的知名度を誇るラッパーのカニエ・ウェストがアディダスとともに立ち上げたブランドである。常識にとらわれない前衛的なデザインはファッション層を中心にファンを虜にし、2010年代後半のストリートウェアおよびスニーカーシーンに圧倒的なインパクトと話題性をもたらした。

 後期はバスケットボールのカテゴリーにも進出し、シューズを開発。2020年のオールスターウィークエンドでは、ザック・ラビーンブランドン・イングラムが着用したことも話題となり、ヒート時代のアンドレ・イグダーラはYEEZYのシューズを公式戦で着用した最初の選手であることが報じられていた。

 しかし、21度のグラミー受賞アーティストは度々“奇行”に出ることでも周知され、昨年はSNS上でのアディダスに対する誹謗中傷や、反ユダヤ主義的発言、多様性や公正性に背くヘイトスピーチが続出。こうした危険な思想を世間は許すはずがなく、アディダスもウェストおよびYEEZYとの契約終了に至っている。

 そして、ブランド史上最も成功したコラボレーションに終止符を打ったことによるダメージは決して小さくなかった。2022年12月のレポートによれば、アディダスは現在、5億ドル(約660億円)超の​​YEEZY製品の在庫を抱えているという。

 また、ブランドの財務ガイダンスによると、既存の在庫を転用して売却しなかった場合、今年の収益は約12億ユーロ(約1690億円)、営業利益は5億ユーロ(約705億円)も減少する見込みのようで、会社が保有する全YEEZY製品の償却を決断した場合、2023年末までに7億4600万ドル(約986億円)という莫大な営業赤字が発生するという。

 さらに、アディダスは頼みの「IVY PARK(アイビー パーク)」とのコラボレーションラインも不振に喘いでいる模様。ビヨンセが主宰するアスレジャーブランドは、発売当初こそ話題を攫ったものの、『Wall Street Journal』によれば、同ラインの収益は2022年に50パーセント以上の減少を記録。アディダスは2022年にIVY PARKとのビジネスで2億5000万ドル(約330億円)の売上を見込んでいたが、実際のセールスは4000万ドル(約53億円)に止まったようだ。

 アディダスのCEOを務めるビョルン・ガルデンは、トップタレントをパートナーに迎えたビジネス失敗からの挽回に全身全霊を尽くすことを約束している。

「数字が物語っています。現在の我々は、本来あるべきパフォーマンスを発揮できていません。2023年は再び成長し、収益性の高い企業になるための基盤整備を行う変革の年となります。我々は消費者、アスリート、小売パートナー、そしてアディダス従業員に全力を注ぎます。共にブランドの熱気を高め、製品エンジンとディストリビューションを改善し、アディダスが素晴らしく、楽しい職場であることを保証します。アディダスには成功に必要な要素が全て揃っています。優れたブランド、人々、パートナー、そして他に類を見ないグローバル・インフラストラクチャー。我々は再びピースを組み合わせなければなりませんが、時の経過と共にアディダスが再び輝けるようになると確信しています。しかし、我々は時間が必要なのです」

『Sneaker News』によると、レポートが公開された直後、アディダスの株価は12.6パーセントも下落。これは紛れもなく、投資家の企業へ対する経済不信の表れである。

 デイミアン・リラードジェームズ・ハーデンドノバン・ミッチェルをはじめとするトッププレーヤーを抱えているだけに、NBAファンとしてもブランドの今後の一挙一動に注目したいところだ。

文=Meiji

 

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