2019.11.25

車いすバスケU23“京谷ジャパン”、全勝で2大会ぶりに優勝!

シュートを狙う赤石竜我 [写真]=斎藤寿子
新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年よりスポーツ専門ウェブサイトで記事を執筆。車いすバスケットボールの取材は11年より国内外で精力的に活動を開始。パラリンピックは12年ロンドンから3大会連続、世界選手権は14年仁川、18年ハンブルク、アジアパラ競技大会も14年仁川、18年ジャカルタの各大会をカバーした。

 北九州市立総合体育館で開催された国際車いすバスケットボール大会「北九州チャンピオンズカップ」。大会最終日の11月24日、京谷和幸ヘッドコーチ率いる男子U23日本代表は予選リーグ最終戦でドイツと対戦し、51-33で快勝。3戦全勝し1位通過で決勝進出を果たした。ドイツとの再戦となった決勝でも、第1クォーターから圧倒的な強さを見せて60-23と大差で勝利し、2大会ぶりの優勝を達成した。

最強の布陣で最高のスタートを切った決勝

 前日、すでに決勝進出が決まっていた日本だったが、“全勝優勝”に向けて予選リーグ最終戦のドイツ戦に臨んだ。結果的には51-33で勝利を挙げたものの、指揮官はあまり納得していなかった。

「全体的には、このチームの最重要テーマであるディフェンスは決して悪くはなかったと思います。ただ、立ち上がりがあまり良くなかったなと。相手がスタートから勢いよくくる中で、そこを我慢して後半で引き離すというゲームプランどおりではありました。とはいえ、前半はシュートの確率が悪すぎました。今大会、最後は気持ちよく勝って終えるためにも、決勝ではスタートから力強くいきたいと思います」

 その言葉どおり、決勝のスタメンには、最強の布陣が並んだ。29日に開幕するアジアオセアニアチャンピオンシップスの日本代表12人のメンバーにも入っている古澤拓也、鳥海連志、川原凜、赤石竜我の4人に、今年初めてシニア代表の強化指定選手に入った髙柗義伸の5人だ。

決勝では先発で起用された20歳の髙柗義伸 [写真]=斎藤寿子

 すると「これが日本の武器だ」と言わんばかりにトランジションの速い、スピーディな展開のバスケでドイツを圧倒。特に“京谷ジャパン”の真骨頂でもあるオールコートでのプレスディフェンスは、これまでのトレーニングの成果がしっかりと表れていた。

 巧みなチェアスキルで強く、素早くコンタクトして相手の動きを止め、さらにお互いに連携してタイミングよくスイッチしていく。相手に付け入る隙を全く与えない強固なディフェンスで何度も24秒バイオレーションを奪うなど、ドイツを翻弄し続けた。

 一方、予選リーグ最終戦では課題とされたオフェンスも、髙柗の開始早々の先取点を皮切りに、古澤、鳥海、赤石も続き、4人が競い合うようにシュートを決めていった。川原もクロスピックでチームメートの走路をつくり、アシストを決めるなど、陰で重要な役割を淡々とこなす姿には代表の貫禄がうかがえた。

最少失点&最多得点で有終の美

男子U23日本代表を率いる京谷和幸ヘッドコーチ [写真]=斎藤寿子

 第1クォーターで24-4と完全に試合の主導権を握った日本は、第2クォーター以降、ほかのメンバーも、この日のテーマとされた「チャレンジ」を指揮官にアピールするかのように、積極的なプレーでドイツを引き離した。

 そして最後の第4クォーター、コートに送られたのは古澤、川原、岩井孝義、熊谷悟、池田紘平の5人だった。いずれも今年23歳を迎え、U23代表としては今大会が最後となるメンバー。京谷HCは、彼らの集大成の場として最後の10分間を託した。そんな指揮官の思いに応え、5人は得点を今大会初の60点台にのせ、さらに失点は今大会最少の23点に抑えてみせた。

「特に決勝で最少失点に抑える試合をすることができたというのは、これまで合宿で積み重ねてきたディフェンスが、選手たちに本当に染みついてきたのかなと。今大会一番の収穫として評価してもいいと思います」と京谷HC。「ディフェンスで世界に勝つ」ことを掲げてチーム作りをしてきた一つの成果が見えた大会となったことは間違いない。

 今大会で、これまでU23日本代表をけん引してきた世代がほとんど卒業し、今後は新たに若いメンバーを加えた中で、2021年のU23世界選手権に向かうことになる。海外も育成・強化が進む中、日本もフレッシュなメンバーでのチーム作りが必至。2021年に向けて“京谷ジャパン”はこれからが本格始動だ。

文・写真=斎藤寿子

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