2019.12.03

全勝優勝へ向け快進撃の車いすバスケ“及川ジャパン”、中国に快勝し3連勝!

チーム最多の20得点を挙げた秋田啓。リバウンドでも最多タイの9個 [写真]=斎藤寿子
新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年よりスポーツ専門ウェブサイトで記事を執筆。車いすバスケットボールの取材は11年より国内外で精力的に活動を開始。パラリンピックは12年ロンドンから3大会連続、世界選手権は14年仁川、18年ハンブルク、アジアパラ競技大会も14年仁川、18年ジャカルタの各大会をカバーした。

 タイのパタヤで開催されている車いすバスケットボールの「アジアオセアニアチャンピオンシップス」。大会4日目の12月2日、予選リーグ第3戦が行われ、及川晋平ヘッドコーチ率いる男子日本代表は中国と対戦。12人全員が出場した中、プレータイムが最も多かった秋田啓が、今大会チーム最多となる20得点を叩き出した。攻守にわたって中国を圧倒し、63-42で快勝。予選リーグ3連勝を飾った。

「弱点」から「強み」となったリバウンド

 リバウンド数「49」という数字が、この試合の“及川ジャパン”の姿を象徴していた――。

 前日、強豪イランに20点の大差をつけて2016年リオデジャネイロパラリンピック以来の勝利という快挙を成し遂げた日本。だからこそ、及川HCは中国戦が非常に重要で、かつ難しさがあると考えていた。

 試合前、この日のテーマをこう掲げたという。

「隙を見せるな。気を抜くな。敵は自分」

 あくまでも目標は「全勝優勝」。全試合が必勝の大事なゲームであることを再確認させ、“勝って兜の緒を締め”たかったのだ。

チームを引き締めさせた指揮官 [写真]=斎藤寿子

 日本は第1クォーターの序盤こそリードを許したものの、徐々にディフェンスが機能し、リズムをつかんでいった。中盤以降は終始試合の主導権を握ると、指揮官の期待どおり、最後まで攻守にわたって実力の差を見せつけ、中国に付け入る隙を与えなかった。

 そして、新たな強みが示された試合でもあった。それは、高さのない日本がこれまで課題としてきた「リバウンド」。中国が「36」に対し、日本は「49」を誇り、この試合でも弱点という概念を払拭させたのだ。

 さらに、オフェンスリバウンドは「19」を数え、そこから13得点を挙げている。

 そしてそれが、高さのある秋田や宮島徹也などのハイポインター陣に限らず、高さではなくスピードで勝負する選手たちにも、オフェンスリバウンドを制する姿があったこと。さらにはこれまでディフェンス面で貢献度の高かった赤石竜我にも、オフェンスリバウンドからの得点シーンが生まれたこと。ここに、日本の新たな強さ、そして成長が垣間見られた。

オフェンスリバウンドからの得点も [写真]=斎藤寿子

 実は、最も注力してトレーニングしてきたのは、オフェンスリバウンドではなく、ディフェンスリバウンド。世界屈指の高さを持つイラン戦でも、ほぼ完璧にディフェンスリバウンドを制し、トレーニングの成果がはっきりと表れていた。

 しかし今大会、磨いてきたリバウンドの技術や意識は、ディフェンスにとどまらず、オフェンスでも発揮されている。これが常に成長し続けることを求めてきた“及川ジャパン”の真骨頂。中国戦は、それが明確に映し出された一戦でもあった。

 無傷の3連勝を飾った日本。予選リーグは残り2試合。東アジア最大のライバル韓国、そして世界選手権銅メダルのオーストラリアと強敵との戦いが続く。

「韓国、オーストラリアとは非常に厳しい戦いになることは間違いない。ただ、今の日本はたとえ我慢の時間帯があっても、必ずそれを打開してくれる選手がいる。どの選手、どのラインナップを出しても、勝てる力がある。その力を発揮して、全勝で決勝トーナメントに進みたいと思います」と及川HC。

 その指揮官を支える京谷和幸アシスタントコーチも「3試合をとおして、特にディフェンスがいい。この速いディフェンスが、韓国、オーストラリアに対してどこまでできるのかは非常に楽しみ」と語る。

 全勝優勝に向けて、ここからさらにギアを上げていくつもりだ。

文・写真=斎藤寿子

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