6月22日、日本車いすバスケットボール連盟は、現在行われているクラス分け出場資格再評価プロセスに関する説明会を行った。車いすバスケでは、選手は障がいの程度によって1.0~4.5の8段階のクラス(持ち点)に分けられている。今回の再評価は、現存のクラス分けが国際パラリンピック委員会(IPC)の規定に準じたものかどうか、つまりパラリンピックの出場資格を有しているかどうかを改めて見直すというもの。パラリンピック競技の中でも高い人気を誇る車いすバスケだが、今、IPCから厳しい目を向けられている。
「障がい」のボーダーラインの違いが問題に
今回の問題が発覚したのは、今年1月。IPCが公式サイトで国際車いすバスケットボール連盟(IWBF)に対して東京パラリンピックの実施競技から除外する可能性があること、そして現段階では2024年パリパラリンピックの実施競技から除外することが決定したことを通告したことが発表された。
日本車いすバスケットボール連盟(JWBF)では、この通告の2日後には緊急理事会を開き、プロジェクトチームを発足。すぐに対象選手の精査をして説明を行い、全国の医療機関と連携しながら再評価に必要な医学的な書類作成や検査結果の提出の準備を始めている。
では、今回は何が問題とされたのか。IPCでは、03年にクラス分け戦略を公表。これに準じたクラス分けの実施を、IWBFを含めた各国際競技連盟(IF)など全関係者に対して求めてきた。さらに、15年にIPCはクラス分けの改訂版を発表。これに沿ったクラス分けの規定を各IFおよび各国パラリンピック委員会(NPC)が定め、18年までにIPCの承認が必要という方針を打ち出した。
この方針により、18年8月の時点で東京パラリンピックの正式競技である22団体のうち、車いすバスケと車いすテニスを除く20競技がIPCからの承認を受けていた。そして今年1月にIPCから通告を受けた時点では、車いすテニスはすでに承認を受けており、残るは車いすバスケのみとなっていた。
実は、障がいへの解釈の相違により、IPCとIWBFにはクラス分け規定の内容に違いがある。IPCが定めるパラリンピックに参加する要件を満たす障がいは10あり、そのうち車いすバスケに適用されるのは7つとされている。ところが、従来のIWBFのクラス分けは、これ以外の障がいが含まれていた。
つまり、IPCが定めるパラリンピックの出場資格を持たない選手が、IWBFのクラス分けでは認められている。IWBFが主催する世界選手権などでは問題ないが、IPCが主催のパラリンピックとなれば、そうはいかない。
東京パラ実施に向け、目標とされる年内完了
当初IPCは、東京パラリンピックにおいては、今年5月29日までに東京パラリンピックに出場する可能性がある4.0と4.5のクラスの全選手の再評価が完了すること(フェーズ1)が条件とされていた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大を受け、8月1日に延長。加えて、そのほかの全選手に対しても、12月31日までに再評価を行うこととされている(フェーズ2)。
一方、現段階では除外されているパリパラリンピックにおいては、当初の予定通り、来年8月31日までにIPCのクラス分け規定に完全に準拠したクラス分けが行われることが、解除の条件となっている。
IPCによると、フェーズ1の対象選手134名のうち、75%の再評価が完了し、その結果が通知されているという。JWBFではすでにフェーズ1の書類提出は完了しているが、再評価の結果が報告されている日本人選手の氏名や人数などは、選手たちに動揺が広がらないよう、今後も公表しない意向を示した。フェーズ2においては、書類が揃い次第、順次IWBFに提出している状況だという。
新型コロナウイルス感染が世界に広がる中、各国いずれも医療機関との連携は困難を極めたことは想像に難くない。また、パラリンピックに人生をかけてきた選手たちへの配慮も必要とされる。未だ厳しい状況の中、JWBFをはじめ各国のNPCやNFの懸命な作業が続いている。
文・写真=斎藤寿子