Bリーグ公認応援番組
『B MY HERO!』
インタビューした選手に「現在成長著しい選手」「ライバルだと思っている同世代選手」「ベテランから見て将来が楽しみだと思っている若手」「若手から見て憧れているベテラン」などを指名してもらい、リレー方式で掲載するこの企画。車いすバスケットボール選手の個性的なパーソナリティーに迫っていく。
文・写真=斎藤寿子
小学3年の時に始めたバスケットボールが、好きで仕方なかったという網本麻里(カクテル)。右足首の病気のためにランニングバスケは諦めたが、高校1年時に始めた車いすバスケットボールで頭角を現すのに、そう時間は要しなかった。チーム最年少の19歳で出場した2008年北京パラリンピックでは、7試合で133得点をマークして得点王となり、メダルまであと一歩に迫る4位にまでチームを導いた。現在もその実力は健在で、日本の女子車いすバスケ界を牽引し続けている。
数々の国際大会を経験し、世界にその名を轟かせ続けてきた網本。海外チームからの女子日本代表の要注意人物には、必ずと言っていいほど、「Mari」の名が挙がる。
なかでも世界が衝撃を受けたのは、2011年に初めて開催された女子U25世界選手権だろう。なんと、メキシコ戦で51得点を一人で叩き出し、女子のワールドレコードを塗り替えたのだ。
「実は、試合前はあまり調子が良くなかったんです。でも、逆にそれで肩の力が抜けたのかな。スタートからシュートは打てば入るし、相手の動きもスローモーションじゃないけど、全て見えている感じでした」
前半を終えて、ハーフタイム中、網本はすでに自分が30点以上を挙げていることを知った。
「前半がこれだけ良ければ、まぁ、後半は落ちるだろうなぁ」
そう思っていたという。ところが、後半に入っても絶好調のままだった。
「40分間フルで“ゾーン”に入ったままというのは、後にも先にも、あの試合だけ。今でも本当に不思議です」
チームは5位とメダル獲得には至らなかったが、網本は通算で136得点を挙げ、初代の得点王に輝いた。
車いすバスケ歴16年目を迎えた網本。もちろん、日本代表として東京パラリンピックに出場し、女子日本代表としては2000年シドニー大会以来、自身としては初のメダル獲得を目指している。
しかし、その前提として大事にしていることがある。それは、所属するチーム「カクテル」だ。
「日本代表の前に、私はカクテルの一員。だから、まず目指すべきは、カクテルを勝利に導くこと。それは、クラブに入った時からずっと大切にしています」
カクテルというチームで車いすバスケを始め、育ててきてもらったからこそ、今の自分がある――そんな思いが、網本にはある。
カクテルは、今年1月に開催された「皇后杯 日本女子車いすバスケットボール選手権」で6連覇を達成。日本代表クラスの選手が多く所属する、今、最強の女子クラブチームだ。
チームが目指すのは、10連覇。現在指揮官を務める岩野博HCが就任1年目からチームで掲げてきた目標だ。
次の皇后杯でカクテルを優勝に導くこと。網本の東京パラリンピックへの挑戦は、そこから再び始まる。
(Vol.2では、網本選手が注目している選手をご紹介します!)