8月16日、国立代々木競技場第一体育館では、『BASKETBALL ACTION 2020 SHOWCASE』イベントが開催された。オールバスケットボールで日本を元気にしようと、車いすバスケットボール男子日本代表も参加。男女の5人制、3人制、そして車いすバスケが一堂に会したイベントは、国内では史上初めてのことで、軽妙な解説で盛り上げた京谷和幸ヘッドコーチは、「バスケットボールファミリーの一員に入れていただき、身が引き締まる思い」と語った。
豊島のスピードが光ったタイムトライアル
今回のイベントに参加したのは、男子日本代表チームのキャプテン豊島英をはじめ、香西宏昭、秋田啓、大舘秀雄の4人。車いすバスケの魅力を伝えようと、第一部でデモンストレーションを行った。
まずは、2メン、3メンで操作が難しい競技用車いすを自由自在に操りながらの華麗なパスさばきを披露。その後の3ポイントシュートでは緊張からか、なかなかネットを揺らすことはできなかった。それでもジャンプすることなく座った状態で、ランニングバスケと同じ距離から、同じ高さのゴールに向けてと軽々とシュートを放ち、鍛え抜かれた腕力をアピールした。
次に秋田と大舘が見せたのは、「ティルティング」という車いすバスケ特有の技。ティップオフの時や、リング下でのシュートの時などに、車いすの片輪を上げて高さを出すという高度なテクニックだ。
そして一番の盛り上がりを見せたのは、タイムトライアル。車いすを漕ぎながらドリブルをしてマーカーの間を通り抜け、往復でレイアップシュートを入れる速さを競い合った。
まずは元バスケットボール女子日本代表の中川聴乃さんが挑戦。車いす操作とドリブルを同時に行う車いすバスケならではの動きに苦戦し、1分23分20。「練習よりもうまくいった」と納得の表情を見せながらも「難しい。息が切れました……」と語り、車いすバスケのハードさを実感した様子だった。
その中川さんに目標タイムを聞かれ、「1分を切ります」と宣言した豊島に対し、京谷HCは「30秒は切れると思う」と発破をかけた。すると、豊島は世界でもトップクラスのスピードとチェアスキルでマーカーの間を難なくドリブルで進み、シュートも2本ともに一発で決めてみせた。タイムは予想を上回る25秒46。これには京谷HCも「こんなに速いとは思わなかった」と驚いた様子を見せた。
2人目の秋田も華麗なドリブルを見せ、シュートも2本ともに確実に入れたものの、1本目のシュートしたボールがアウトオブバウンズとなり、大幅にタイムをロスしたことが大きく響き、44秒50。それでもビハインド・ザ・バックの技でアピールした。
3人目の大舘は、1本目のレイアップシュートを落としてしまい、33秒32。12年間、海外でプレーしてきた香西も、ミスなく終えたものの、27秒24と惜しくもトップに立つことはできなかった。京谷HCから指名を受けた大舘が2回目にチャレンジし、1回目を上回る27秒15の好タイムを出したが、豊島には及ばず。男子日本代表のキャプテンとしてチームをけん引する豊島が、タイムトライアルでも先頭に立つかたちとなった。
“ファミリー”の一員としての役割
続いて、香西、秋田、大舘の3人は、現在オンラインで実施されているバスケ日本一決定戦「全国学生フリースローチャレンジ」にも挑戦。さらに第二部では、3X3の男子日本代表候補、女子日本代表候補との「3X3シュートトライアル」での対決に臨んだ。
シュートトライアルでは、3X3のコート内5カ所すべてのポジションで全3選手がシュートを成功させる速さを競った。すると、1カ所目でのシュートで予想以上に苦戦を強いられ、これが最後まで大きく響いてしまう。2カ所目以降は次々と華麗にシュートを決めていったが、制限時間の90秒以内に全ポジションをクリアすることはできなかった。
イベント後にはオンラインの会見も行われ、京谷HCは延期された東京パラリンピックについて訊かれると「マイナスなことばかりではないし、逆にプラスにしていかなければいけない。バスケットボールファミリーの一員として、しっかりとチーム強化を進めていきたい」と1年後に向けての意気込みを示した。
一方、豊島は「こうしたイベントに参加できたことをうれしく思います。少しでも元気を与えられていたら」と感想を語り、「大変な状況の中、東京でイベントが実現できたのは、開催するにあたってご尽力いただいた方々のおかげです」と感謝の言葉を述べた。
今回のイベントでは人数がそろわず、試合形式での迫力あるプレーを見せることはできなかった。また、デモンストレーションでも実力発揮とまではいかなかったかもしれない。それでも車いすバスケならではのプレーを披露する貴重な場となったことは間違いない。参加した4人の選手たちからも終始、笑顔がこぼれ、車いすバスケの楽しさは十分に伝わったはずだ。
バスケットボールファミリーの一員として大きな一歩を踏み出した車いすバスケ。今後も、日本を明るく元気にする役割を担うことが期待されている。
文=斎藤寿子