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12月16、17日、北九州市立総合体育館において「第19回北九州チャンピオンズカップ 国際車いすバスケットボール大会」(以下、北九州CC)が開催された。コロナ禍により中止が続き、3年ぶりの開催となった今大会には、日本と韓国の2チームが出場。22歳以下の若手による日本代表が、東京2020パラリンピック代表5人を擁する韓国の強豪社会人チームに挑んだ。結果は2戦全敗。それでも国際大会の経験がほとんどない若き精鋭たちには貴重な経験となったことは間違いない。そしてわずか1日で驚くほどの成長がそこにはあった。
JWBF(日本車いすバスケットボール連盟)では、昨年に強化体制を変更。これまでは男女ともにパラリンピックを目指す「A代表」と、男子U23世界選手権や女子U25世界選手権を目指す「U23代表」「U25代表」というカテゴリーで強化事情を行ってきた。しかし、23歳以上でA代表の強化指定選手に選出されていない選手への強化が進まないという課題があった。
そこで昨年からはパラリンピックを目指す「ハイパフォーマンス」と、U23やU25を含む将来を嘱望された選手の育成・強化を図る「次世代強化」というプログラムに分けた強化体制を整えた。しかしコロナ禍で1年延期とされた男子U23世界選手権が今年9月にあったために、男子の次世代強化事業の実質的なスタートは今回の北九州CCとなった。
今年度の男子次世代アスリートは22人。その中から今大会には、金メダルに輝いたU23世界選手権の代表のうちハイパフォーマンスの強化指定選手である鳥海連志、赤石竜我、髙柗義伸、宮本涼平を除いた8人に、4人を加えた12人が「日本代表」を結成。次世代強化事業の指導のリーダー役を務める藤井新悟コーチ(男子日本代表アシスタントコーチを兼任)がヘッドコーチとして北九州CCに臨んだ。
一方、韓国は「COWAY」というチームが来日。紹介記事によれば、今年5月に韓国国内の民間企業によって設立されたプロスポーツチーム。日本で言えばアスリート雇用の選手たちによる社会人チームだろう。メンバーには韓国代表で長い間主力を務めるオ・ドンスクやキム・ホヨンというベテランを含み、東京2020パラリンピック代表5人が揃っている。東京パラリンピックでACを務めたキム・ヤンムHCが指揮する強豪チームだ。
パラリンピックはもちろん、国際マッチの経験がゼロ、多くても3、4回という若き日本代表にとっては、まさに格上の相手。初戦は緊張感もあり、第1クォーターから15−25と離される展開となった。その後も終始主導権を奪われる形となり、35−76と大敗を喫した。
今大会はそのフラットに徹底したが、初戦では特に前半はほとんど機能せず、失点を重ねた。フラットのラインを敷く前に相手に間を割られたり、フラットからTカップに移行する際に守備が崩され、アウトサイド、インサイドの両方で量産されたのだ。
それでも後半になるにつれて、フラットがしっかりと機能する時間帯が増えていったことで、チームは手応えを感じ始めていた。もともと国際マッチの経験が乏しい選手たちにとって相手のレベルは予測をしていたものの、実際にコートに入るまでは実感としてわからなかったことばかりだった。しかしプレーをしていくうちに、肌でスピードや高さ、動きを感じたことで、それに対応していけるようになっていったのだ。それに加えて修正すべき点が明確で、それを選手たちがしっかりと理解していたことも大きかった。
試合後、全員にインタビューをすると、そろって下記の課題を挙げた。
①オフェンスリバウンドを飛び込まずにラインを作ることを優先する
②ラインが下がりすぎるとそのまま押し込まれてしまうので、高い位置でラインを作る
③トークをしてスイッチ、ローテーションなど連携して守る
④ボックスアウトを徹底してセカンドチャンスを与えない
しっかりと課題が共有されているところにもチームの一体感が感じられ、次戦への期待が膨らんでいた。
そして翌日の第2戦、日本は好スタートを切った。前日の反省を踏まえたディフェンスがしっかりと機能していたからだ。これに韓国はティップオフ直後の先制から2分もの間、得点を奪えずに苦戦。特に世界トップクラスのアウトサイドシュート力を持つオ・ドンスク、高さのあるエースのヤン・ドンギルをほぼ完璧に抑えたことで、相手に勢いを与えなかった。
今回、藤井HCが特に選手たちに求めていたのは「挑戦」と「成長」の2つ。いずれもしっかりと体現した12人の若き精鋭たちの今後に期待が膨らむばかりだ。そして彼らの奮闘ぶりにトップ選手は刺激を受け、同世代はライバル心を燃やしたことだろう。さらなる選手間の競争激化が予想され、日本車いすバスケットボール界にとっても明るい材料となったに違いない。
取材・文・写真=斎藤寿子