2024.03.15

日本の新アリーナで開催の可能性も…EASLの現在と未来【井口基史の現地レポート後編】

フィリピンのセブ島で開催されたEASLファイナル4[写真]=EASL
鹿児島南高-愛知学泉大-カリフォルニア州立大ベーカーズフィールド校-ベーカーズフィールドカレッジ出身。帰国後FIBA国際代理人資格をアジア初の受験取得。プロリーグ発足後まもなく資格返納しチームスタッフへ。富山-滋賀-岩手-大阪でスカウト/通訳/GM/クラブ代表を経験。現在は様々なカテゴリーのバスケ解説を務める。座右の銘「一緒に日本のバスケを熱くしよう!」

■ 各国のバスケ重鎮が集結

 フィリピン・セブ島で開催された東アジアスーパーリーグ(EASL)のファイナル4期間中は、多くのバスケットボール関係者が視察に訪れ、注目度の高さがうかがえました。

 まずは、アジアオセアニアバスケ界のドン。オーストラリア代表ブライアン・ゴージャンヘッドコーチ(HC)が来場。NBLシドニーキングスのHCに就任したことが発表されたばかりとあり、すぐにメディアに取り囲まれていました。

 尊敬するコーチに元いすゞ自動車・故小浜元孝監督の名をあげたことのある指揮官には日本で何度か話を聞いたこともあり、フランクに対応してくださり、オーストラリア代表との契約はパリ五輪で一旦終了、シドニーとは「3年契約」と、すべて話してくれました。

メディアの取材に応じたシドニーのゴージャンHC[写真]=井口基史


 強調していたのは、この大会の意義について。「Region(地域・圏・地帯)」という言葉を使い、「世界中で地域全体のバスケ競争力に寄与する大会はユーロリーグとEASLだけだ」と熱弁し、「アジア圏のバスケ人気、競技力の向上のために、この大会をみんなで創っていくべきだ」と、まるで各国のコーチたちへメッセージを送っているかのようでした。

■ 日本と縁ある元Bリーガーの姿も

 レオ・ライオンズ(元富山グラウジーズ他)との終わらない1on1対決「チルチル・レオ・チルチル・レオ」人気を博したジョシュ・チルドレス(元三遠ネオフェニックス)もご来場。

 EASLには投資家として参画しているそうで、一時期、ラッパーのICE CUBE氏が立ち上げた3on3団体「BIG3」でプレーする姿もみられましたが、もうプレーはしていないそう。「三遠 is エブリシング チェンジねー!」と古巣が好調なこともご存じでした。

 チルドレスだけではなく、多くの投資家がこの大会ローンチを支えているのは事実。まだ収益性があるとはいえない生まれたての大会を成功させようと、多くの投資を募っているのが現在の状況です。

 話は聞けませんでしたが、安養正官庄レッドブースターズでは、ロバート・カーター島根スサノオマジック横浜ビー・コルセアーズ三遠ネオフェニックス)が元気にプレー。3位決定戦でも18得点15リバウンドと相変わらずのキラーぶりでした。

■ セレブリティーの姿も

 Instagramフォロワー数537万を誇り、話題に事欠かない韓国出身のDJ SODAを予選ラウンドから積極的にキャスティング。コアなバスケファン以外へのリーチを意識した取り組みも感じられましたが、やっぱり主役はバスケ。この大会が今後どうなっていくのか気になるファン・ブースターのために、“EASLの一番偉い人”にも話を聞いてきました!

EASLファイナル4に登場したDJ SODA[写真]=EASL

■ 新大会構想も“FIBA公認”として継続へ

 前CEOマット・ベイヤー氏に代わり、2023年11月からCEOを務めるヘンリー・ケリンズCEOに、EASLの今後について取材しました。

 ケリンズCEOは「EASLは各国の優勝・準優勝チームが集まり頂点を決めるプロダクトであるがゆえに、各国の優勝チームが決まるまで、大会スケジュールやロケーションを確定しづらい課題がある」と隠すことなく話し、その影響は認知度、スポンサー、チケット、大会運営と多岐にわたり、スムーズなオペレーションではなかったことを認めました。また、「来シーズンは何事も早めに対処し、評判を挽回させるシーズンにする」と決意を示してくれました。

 海外メディアでは『Rising East Asia League(ライジング・イースト・アジア・リーグ/Realeague)』という同じ東アジアでの新リーグ構想が一部で報じられていますが、EASLはその団体と一線を画し、これまで通りFIBA公認の国際大会として運営していくと話しました。

■ ファンの声も認識「日本と向き合っていく」

 実際に海外のアウェーゲームに足を運んだブースターから、「直前まで情報がない」「チケットが買えない」「チケットを買ったが席がなかった」という声が上がっていたほか、チームに負担を強いている状況など、新しい大会ゆえのトラブルもコート内外でありました。

 ケリンズCEOは、こうした耳の痛い質問にもこれから信頼を取り戻していくと答え、「日本のチーム、ファン、スポンサー、メディアが求めてくるスタンダードは非常に高い。我々はそのスタンダードに合わせるべく、近く東京オフィスを構え、しっかり日本のファンとマーケットに向き合っていくつもりだ」としました。

EASLのケリンズCEO[写真]=井口基史

■ 来シーズンは?CBA参戦は?

 気になる2024-25シーズンのレギュレーションについては、ホーム&アウェー方式を継続し、外国籍のオンザコートなども同じルールで継続すると明言。

 ファイナル4開催地については、5都市ほど候補にあるとし、日本の新アリーナなども当然候補になりうると期待感を持たせてくれました。

 巨大マーケットであるCBA(中国プロバスケットボールリーグ)にも参戦を働きかけ続けていく方針ですが、政治的に一筋縄ではいかない国だけに、今は現在の大会フォーマットでの課題をクリアさせ、クオリティーを高めていく方向性だと丁寧に答えてくださいました。

■ 日本側の課題は?

 大会参加チームの地元メディアは大盛況。さらに不出場の中国メディアも参戦という取材合戦でしたが、日本メディアは私を除き4社。そのうちテレビは1社、全国紙はゼロという、今後、大会の注目度をあげていく必要があるとも感じました。

 また、Bリーグ、天皇杯、EASLと、同時進行する3大会の価値がボヤケてしまわない工夫に関する話題もあります。例えば天皇杯を“外国籍オンザコート0”とかかな。でも、それって昔やったよね。「多様性の時代にね…」とか、有志メディアともディスカッションしたりしていました。

 それもこれも琉球と千葉Jがリーグ戦で奮闘して、日本にタイトルをもたらしてくれたからできる議論ですね。

 改めてEASLをファイトした両チームと、選手を後押ししたブースターの皆さんに感謝したいです。天皇杯、残りのレギュラーシーズンもみなさんのご武運を祈念しています!

取材・文=井口基史

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