現代NBAのPGたちとの違いを指摘
2月24日から25日(現地時間23日から24日)にかけて、マサチューセッツ州ボストンにて、『MIT the Sloan Sports Analytics Conference』というイベントが行われた。
今年で第12回目となった同イベントでは、現代バスケットボールについて創案するコーナーがあり、会場にはスティーブ・ナッシュ(元フェニックス・サンズほか)がパネルディスカッションに参加した。
ナッシュは2度のシーズンMVPを獲得した実績を持ち、通算アシスト数で歴代3位となる1万335本を記録してきたレジェンドで、今年のバスケットボール殿堂入りの最終候補に入る、歴代屈指のポイントガード。
イベント内でナッシュは、サンズ在籍時にマイク・ダントーニHC(現ヒューストン・ロケッツHC)が指導した“7秒以内にショットするオフェンス”などについて語ったのだが、自身のキャリアを振り返るにあたり、意外な言葉が飛び出した。
「私はスマートだったとは言えない。1試合で20本ショットを放つべきだったかもしれない」
ナッシュは現役時代、キャリア平均でフィールドゴール試投数は10.6本、3ポイントシュート試投数は3.2本を記録しているのだが、前者は49.0パーセント、後者でも42.8パーセントというすばらしい成功率を残してきた。
とはいえ、ナッシュの代名詞となると、やはりチームメートの得点機会を演出するアシスト(キャリア平均8.5本)が思い浮かぶ。ナッシュは現代のプレースタイルと自身を比較していたようだ。
「今では、ポイントガードのプレーがちょっと違う。まずはリングへアタックすることが最初のポイントになっている。欠点として、僕はちょっとファシリテーター(促進者、ゲームの進行役)としての要素が多くを占め過ぎていたんだろうね」。
平均20得点以上を狙えるシュート力と爆発力を誇ったナッシュ
おそらく、ナッシュのことをセルフィッシュ(自分勝手)と言うものはほとんどいないはずだ。ダラス・マーベリックス在籍時にはダーク・ノビツキーやマイケル・フィンリー(元マーベリックスほか)、サンズ在籍時にはアマレ・ストウダマイヤーにショーン・マリオン(共に元サンズほか)といったスター選手たちを十二分に活かしただけでなく、ロールプレーヤーと呼ばれる選手たちにも高精度なパスを繰り出し、彼らの得点を演出してきた。
もっとも、勝負どころとなると、ナッシュは持ち前の正確なシュート力を武器に、相手チームにとっては脅威となる危険なシューターへと変貌していた。それに、キャリアハイの得点記録は42得点(2度記録)となっており、爆発力も兼備していた。そしてプレーオフに入ると、その数字は48得点にまで伸びている。これは2005年5月16日(同15日)、マブスとのウエスタン・カンファレンス・セミファイナル第4戦に挙げたものである。
ただし、ナッシュが48得点も挙げながら、その試合でサンズはマブスに敗れている。ナッシュ自身も、チームが勝つためにはチームメートを最大限に活かすことが最優先だということを意識していたのだろう。
では、もし仮にナッシュが平均20本近くのショットを放っていたら、どうなっていたか?
ショット全般において高い精度を誇っていたため、ナッシュがキャリアの中で一度も記録していない、平均20得点以上を何度も記録することができていたはずだ。平均20得点10アシスト以上という快挙も達成していたかもしれない。
それでも、所属チームをリーグ最高勝率へと押し上げてシーズンMVPに輝いていたかどうかは疑わしい。それに、現役選手たちから「最も一緒にプレーしたい選手」と慕われることも、ほとんどなかったのではないだろうか。