2勝1敗とリードしながら3連敗で優勝を逃したヒート
3月10日(現地時間9日)、クリス・ボッシュ(現未所属)が現地メディア『The Ringer』の“スポーツガイ”ことビル・シモンズのポッドキャストに登場。その中で、2011年のNBAファイナルについて語った。
2010-11シーズンのマイアミ・ヒートは、オールスターの常連だったドウェイン・ウェイドの周囲にレブロン・ジェームズ(現クリーブランド・キャバリアーズ)とボッシュを加え、“ビッグ3”を形成。レギュラーシーズンをイースト2位となる58勝24敗で終え、意気揚々とプレーオフへ乗り込んだ。
プレーオフに入ると、ファーストラウンドでフィラデルフィア・セブンティシクサーズを4勝1敗で下し、カンファレンス・セミファイナルでは優勝候補の一角とされたボストン・セルティックスを相手にウェイドとレブロンの2人だけで平均58.2得点を挙げる活躍もあり、4勝1敗で勝利。同シーズンにリーグベストとなる62勝(20敗)を挙げたシカゴ・ブルズとのカンファレンス・ファイナルでは、両チームとも平均得点が90点未満というロースコアなシリーズとなる中、ビッグ3を中心に勝負どころで抜け出したヒートが4勝1敗で制し、NBAファイナルへ進出。
そのファイナルでは、ウエスタン・カンファレンスから勝ち上がってきたダラス・マーベリックスと戦うこととなった。下馬評ではビッグ3擁するヒート優勢の中、実際に第3戦終了時点ではヒートが2勝1敗とリード。第3戦では試合終盤にレブロンのパスを受けたボッシュが決勝弾となるミドルジャンパーを決め、ヒートがアウェーで接戦を制した。
しかし、ヒートは翌第4戦から屈辱の3連敗。この年はマブスが4勝2敗でシリーズを制し、フランチャイズ史上初優勝を飾っている。
メンタル面の異変によりプレーに迷いが見られたレブロン
マブスはシリーズ平均26.0得点9.7リバウンドを挙げたダーク・ノビツキー、同18.0得点をマークしたジェイソン・テリー(現ミルウォーキー・バックス)、同13.7得点6.3リバウンドを記録したショーン・マリオン(元フェニックス・サンズほか)をはじめ、ジェイソン・キッド(元マブスほか)やタイソン・チャンドラー(現サンズ)、JJ・バレアなど、それぞれの選手たちが役割を忠実に遂行したことがシリーズ制覇のポイントとなった。
一方のヒートでは、ウェイドがシリーズ平均26.5得点7.0リバウンド5.2アシスト1.5スティール1.5ブロックと攻防両面で大活躍。ボッシュも同18.5得点7.3リバウンドと及第点の働きを見せたのだが、レブロンは同17.8得点7.2リバウンド6.8アシストという不甲斐ない結果となった。
レブロンは09、10年と2年連続でシーズンMVPに輝いた実績を誇っていたものの、ファイナルを勝ち上がるまでに見せていた支配力を、マブスとのシリーズでは発揮できなかったのである。
シモンズに「ダラスとのシリーズで、レブロンに何が起きたんだ?」と聞かれたボッシュは、このように語っている。
「(シリーズ中に)一度、シューティングアラウンドをしていた時に、レブロンが来たんだ。それで彼のシューティングを見ていたんだけど、その時に彼にはなにか心を悩ませているものがあると気付いた。俺はレブロンに向かって言ったんだ。『俺たちはホームで2試合もあるじゃないか。この調子でいこう』ってね。すると彼は『そうだな。お前は正しい。でも皆がそろって俺を失敗させたがってるんだ』と返してきた。そして俺もそう感じ始めていた。だから俺たちはもっとコミュニケーションを取って、もっと深く、細かく話していく必要があった。これではマブスを打ち負かすのはタフだなと思ったのさ」。
このシリーズにおけるレブロンは、プレーに対して迷いが見られた。シーズン中、それにファイナルまでのプレーオフではチームメートを活かしつつ、得点が必要な展開であれば積極果敢に得点を奪い、相手チームの息の根を止めてきた。それがファイナルになると、まるで別人のように消極的になってしまい、シリーズ最後の3試合でターンオーバーを14回も犯してしまった。
ボッシュが言うように、メンタル面でマブスに主導権を握られていたのだろう。また、レブロンにマッチアップしてきたキッドやマリオンといったベテランがレブロンの特徴を研究し、得意とする動きを制限されてしまっていたのかもしれない。
シリーズ終了後、レブロンはポストプレーを磨き、オフェンスのバリエーションを増やすことに成功。翌12、13年には連覇を達成し、ファイナルMVPを2年連続で獲得した。今思えば、11年のファイナルは、レブロンにとってチャンピオンとなるための最後のレッスンとなった。
なお、オールスター選出11度を誇るボッシュは、昨年7月にヒートを解雇されたものの、今でも現役復帰を目指しているという。現地時間3月24日に34歳を迎えるベテランは、今後NBAに復帰できるのか。ボッシュの動向にも注目していきたい。