「マイケルには良心があった」と語るジャクソン氏
1990年代に2度の3連覇、2000年代には3連覇を含む5度の優勝を遂げた名将、フィル・ジャクソン氏。前者はシカゴ・ブルズ、後者はロサンゼルス・レイカーズで、計20シーズンもの間、ヘッドコーチ(HC)を務めてきた。HCとして11度の優勝回数はNBA史上最多で、2007年にはコーチとしてバスケットボール殿堂入りも果たしている。
指揮官としてのキャリアにおいて、ジャクソン氏はNBA史上有数のスーパースターをコーチングしてきた。その筆頭が、マイケル・ジョーダン(元ブルズほか)とコービー・ブライアント(元レイカーズ)だろう。
努力家で、大の負けず嫌いでもあったジョーダンとコービーは現役時代、自分自身に厳しく、チームメートにも多くのことを要求してきたことで知られていた。
先日ユタ州ソルトレイクシティで行われた「Tech Conference」に登場したジャクソン氏は、両者について持論を展開。現地メディア『KSL.com』によると、ジャクソン氏はこのように語っていたという。
「マイケル(・ジョーダン)は、コービーよりもコーチングを受けて学ぶことができる何かがあった。コービーはなにか抑えきれないものを持っていた。マイケルは自身がしたことを理解していたんだろう。彼には良心があった」。
ジョーダンとコービーを、独自の見解で語ったジャクソン氏。アシスタントコーチとして加わった1987-88シーズンから、89-90シーズンのHC昇格を経て、97-98シーズンまでの11シーズン、ブルズで指揮官を務めたジャクソン氏はチーム練習の中で瞑想を取り入れるなど、様々なアプローチをしてきた。“禅マスター”と称されるとともに、“変わり者”と呼ばれることもあったほど、独特な世界観を醸し出していた。
個性の強いスーパースターを擁して最も成功を収めた名将
一方、99-00シーズンからレイカーズで指揮したコービーに対して、そして00年から02年にかけて3連覇を達成した当時の主役、シャックことシャキール・オニール(元レイカーズほか)との不仲についても話している。
「彼は信じられないほどの競争力を持っていた。シャックとプレーしていた時、彼(コービー)が不満だったのは、並々ならぬ気力が理由だったのだろう。コービーはゲームの中で、シャックが(コービーに対して)十分な配慮をしていなかったと思っていた」。
今では親しい友人関係にあるコービーとシャックだが、96-97シーズンにレイカーズでチームメートになってからというもの、たびたび不仲がささやかれてきた。03-04シーズン終了後にシャックがマイアミ・ヒートへトレードされるまでの8シーズン、両者は何度も口論していたのである。
ただ、ジョーダンをメンター(助言者)として慕っていたコービーは、憧れでもあったジョーダンを超えるべく、バスケットボールプレーヤーとして20シーズンという長い間、腕を磨き続けてきた。もともと備わっていた競争心に、ジョーダンからのアドバイスが加わり、コービーはより競争的な選手になったということもできるだろう。
あまり知られていないかもしれないが、ジャクソン氏に対して「スーパースターがいるチームでしか優勝していない」「ジョーダンやコービー、シャックがいなければ優勝できなかったのでは?」といった批判的な意見がこれまで多々あった。
しかし、スーパースターであり、独特なキャラクターの持ち主でもあるジョーダンとコービーに対して、ジャクソン氏のように独自のアプローチをして信頼を勝ち取り、3連覇を達成した指揮官はこれまでいなかったことも事実である。
NBAで3連覇したチームが00年から02年にかけて達成したレイカーズ以降、現れていないこと、そしてジョーダンとコービーがジャクソンHCの下でキャリア最高の実績を残していたことを考えると、やはり名将と呼ぶにふさわしい指揮官だったと言えるだろう。