近年ではベストと呼べるツインタワーを形成したADとカズンズ
リーグ屈指のビッグマン、ADことアンソニー・デイビスを擁するニューオリンズ・ペリカンズは、一昨季のトレード・デッドラインでサクラメント・キングスからオールスターセンター、デマーカス・カズンズ(現ゴールデンステート・ウォリアーズ)を獲得し、近年最高級の“ツインタワー”を形成した。
ケンタッキー大出身のデイビスは、同大の先輩カズンズを得たことでシーズン終盤には4試合連続で30得点13リバウンド以上を挙げたものの、最後の6試合で5敗を喫してしまい、ウエスタン・カンファレンス10位の34勝48敗でフィニッシュ。
迎えた昨季、ペリカンズは開幕からデイビスとカズンズを中心に勝率5割前後を行き来し、プレーオフ出場争いに加わった。18年1月中旬には、8試合で7勝を挙げるなど一気に調子を上げていった。
ところが1月27日(現地時間26日)に行われたヒューストン・ロケッツ戦で、カズンズが左アキレス腱を断裂してしまい、無念の戦線離脱。ロケッツ戦を終えた時点で27勝21敗だったペリカンズは、一気に急降下してプレーオフ戦線から脱落するかと思われた。
しかし、ペリカンズは2015年以来、3年ぶりのプレーオフ出場を果たした。2月中旬からオールスターブレイクを挟んで10連勝を記録し、5連勝でレギュラーシーズンを終える快進撃でリーグを席巻。
その中心にいたのは、もちろんデイビスだ。カズンズ離脱後、6度の40得点超えを記録するなど攻防両面でチームをけん引し、プレーオフ出場の立て役者となった。チームもカズンズの穴を埋めるべく、フリーエージェント(FA)でベテランセンターのエメカ・オカフォー、トレードでストレッチ4タイプのニコラ・ミロティッチを獲得する的確な補強を見せていた。
シーズン終盤からプレーオフにかけて、ペリカンズはデイビスとミロティッチの周囲にラジョン・ロンド、ドリュー・ホリデー、イートワン・モアを配置したスモール・ラインナップを敷き、見事な戦いぶりを見せたのである。
「今季はこのメンバーにカズンズが復帰し、さらに強くなるのか」という声も聞こえてきたが、今夏制限なしFAになったカズンズが下した決断は、ウォリアーズ移籍。デイビスとカズンズという近年最高のツインタワーは、早くも別々の道を歩むこととなった。
相棒移籍というショックを乗り越え、新チームで成功するべく動き出した大黒柱
7月27日(同26日)、デイビスは『CBS Sports』のインタビューで、カズンズ移籍についてこのように語っていた。
「(カズンズが移籍して)僕はちょっとショックを受けた。でもデマーカスはキャリアのこの時点において、彼自身と家族にとってベストな決断を下したんだと僕は思った。これはビジネスなんだと理解したよ」。
デイビスとしては、再びタッグを組んでプレーしたかったようだ。
「もちろん、僕は彼とまた一緒にプレーしたかった。だけど彼の状況、彼の頭の中で何が起こっているのかまでは僕には分からなかった。(17年2月に)トレードされてきて、マックス契約を受け取るに値すると思っていた中で、アキレス腱を断裂してしまったんだからね。彼にとって、本当にタフな状況だった」。
今夏のペリカンズは、カズンズだけでなくロンドもロサンゼルス・レイカーズへ移籍し、「戦力ダウンした」と評する現地メディアもいる。だが、ケンタッキー大の後輩でビッグマンのジュリアス・ランドル、ポイントガードにはエルフリッド・ペイトンを加えたことで「戦力保持に成功した」と語る関係者もいる。
デイビスはすでに、カズンズとロンド移籍のショックを乗り越えており、新チームへと切り替えている。デイビスは『ESPN』へ、こんな言葉を残している。
「今、僕はこのチームの中心にいる。チームは新たな選手を獲得してくれた。だから僕らは前に進まなきゃいけない。そして今の戦力でどのようにして成功を収めることができるかを模索していくことが求められていると思う。タフなことではあるけど、(カズンズやロンド移籍は)もう過ぎ去ったこと。こればかりはどうしようもない」。
ペリカンズは今季、デイビスを絶対的な中心選手とし、ホリデーとミロティッチ、そしてランドルを軸に戦うこととなる。特にランドルには、デイビスがベンチで休んでいる間に得点面でつなぐことが期待されている。
昨季、デイビスはMVPの最終候補にノミネートされているように、リーグ屈指のスタープレーヤーとして確固たる地位を築きつつある。そのため、現有戦力でペリカンズをプレーオフへと導くことができれば、ますます評価を上げることができるに違いない。