日本人初のドラフト指名からNBA入りを目指す八村塁(ゴンザガ大学)が、現地時間6月19日(日本時間20日)に前日会見に臨んだ。午前11時から行われた会見には指名が予想される10選手のみがメディア対応。八村は1位候補のザイオン・ウィリアムソン(デューク大学)らとともに、運命の日を前に心境を語った。
現在の心境を聞かれた八村は「何か不思議な感じがします。やっとという感じでもなく、気持ち的にもなんとも言えない感じですが。ここまで1日忙しくていろいろやっているので、いろんないい経験をしていると思います」と率直に胸の内を語った。
ドラフトを前に10位前後の指名ではないかと高評価を得ているが、それに関しては「メディアが決めること。ただそのような評価を得ているのはうれしい」と本音がチラリ。NBA入り後は、「チームの中での役割を与えられると思うので、それにすぐ対応できるような選手になりたいと思います。そして、チームに貢献したいと思います。どのチームに行くのかわかりませんが、プレーオフに出てプレーしたいと思っています」と決意を口にした。
この日は日本からも多くのメディアが詰めかけ、1位指名が濃厚と言われているザイオン・ウィリアムソンにも負けない数のカメラや記者が八村を囲んだ。それについて問われると「ようこそ(笑)」と笑いを取りつつ、「どんどん日本のバスケのために露出してもらえればと思います」と反対にメディアに対してリクエストした。
八村は中学に入ってからバスケットボールを始めたのは多くの人が承知している話だが、「その中学時代にバスケットを楽しむという根本ができました」と振り返る。会見の中でも幾度となく「バスケを楽しむ」というワードを口にした。「やっぱり中学のバスケが本当に楽しかったです。コーチもいい人で、コーチの名言で『一生懸命を楽しむ』があり、ただ楽しむとは違うところもあって、そこから始まったからバスケをずっと続けられて、ずっと楽しんでこられたと思います」と、ドラフトを前に自身のバスケ人生を振り返った。
より高いレベルの中で身に着けた自信
アメリカ学生バスケのトップ校の1つ、ゴンザガ大学において、3年生になってからはチームのエースとしてチームを引っ張った。「開幕前からこれが最後の1年だと思っていました。これは誰にも言ってなかったのですけど(笑)。最後の大会であるNCAAトーナメントが終わって思ったのは、試合が負けたということよりも、大学生にピリオドを打つことのさみしさでした。しかし、その3年間でNBAに入る準備してきたので、それはできた、NBAに入るんだと決意をしていいました」とも語った八村。
特にエースとして活躍した3年次を振り返り、「チームの主力として、いろいろ大きなゲームで勝ったり負けたりして。その中でも活躍できたことで自信にもつながったと思います。日本でも主力としてプレーはしていましたが、レベルの高いもっと大きな舞台で主力になるということはプレッシャーもあります。その中で1年間、それほど悪くない結果を出せ、チームも悪くない結果で終わったので、それが自信になりました」と胸を張る。
技術面はもちろんのこと、成長した中には精神的なものもある。「下級生の時は失敗すると消極的になっていました。その時にコーチに教わったのは、『ミスしてもすぐ切り替えられるのもバスケの技術だ』ということです。そのような教えも役になっているのではないでしょうか」と八村。
先日、男子代表の育成キャンプが行われた。その際、アメリカでプレーする後輩たちから「目標は八村選手で、同じようにNBAを目指したい」と目標を語っていた。それに対して、「僕が知らない選手たちにそう言われることはうれしいです。僕が何か特別にできるわけではないですが、僕のこういう(NBAに進む)ストリーを見て、NBAを夢見てくれることはありがたいです。これからも子どもたちに影響を与えるということが僕の目標でもあるので、そういう人たちがいること自体、正直うれしいと思います」と、頬を緩めた。
会見の後は多くのドラフト候補生とともに、NBAの活動の1つである「NBAケア」に参加した八村。そのあとにはニューヨークのスポーツショップでNBA選手として初となるサイン会も行った。「今後どのような選手になっていくのか!?」。自然と期待は膨らむが、「何も変わることはありません。今までやってきたとおりです。変えようとも思っていません。今までやってきたとおり、後輩たちにいい影響を与えられる選手になりたいと思います」とこれまでのやり方を貫くつもりだ。
運命のドラフトまであと1日を切った。「ただドラフトって、チームから指名されて握手するだけだと思っていて(笑)。本当のスタートはそのあとに来ます。ドラフトはただのイベントとして楽しみたいです」。八村はこれまで通り、自然体でその時を待つことになる。
文=入江美紀雄