9位指名からスターへと駆け上がった偉大な選手たち
八村塁(ゴンザガ大学)が1巡目全体9位でワシントン・ウィザーズに指名されたことは、日本人が関心を持つだけでなくリーグからも注目を集めることになった。
今回は過去のドラフトにおいて同じ9位指名を受けて、スターにのし上がった2人を紹介する。
■ドイツの英雄、ダーク・ノビツキー
213センチ111キロのダーク・ノビツキーは、1998年のドラフトでNBA入りしたドイツ出身のパワーフォワード。ダラス・マーベリックス一筋でプレーし、14回のオールスター選出を誇るほか、2007年にシーズンMVP、2011年にファイナルMVPを受賞した輝かしい経歴を持つ。そして今シーズンをもって21年にも及ぶキャリアに終止符を打った。
彼が多くの選手たちから高い評価を受けていたのは、独自のシグネチャームーブを確立し、それをリーグへと伝承したからだ。必殺技である通称“ワンレッグ・フェイダウェイ”は、本来のシュートと比べて特殊な形から放たれる。
後ろにジャンプしてディフェンスと距離を空ける通常のフェイダウェイに比べ、彼のジャンパーはジャンプした際に片脚のひざを90度に曲げることで、ブロックすることが非常に困難なスタイルである。持ち前の長身を活かして、止めることが難しいフェイダウェイを繰り出すことで、彼はミドルレンジを支配した。そして2011年のポストシーズンにはキャリアにおいてもハイライトとなる活躍を見せて、マブスを球団初優勝へと導いたのである。
■創造的なスコアラー、トレイシー・マグレディ
トレイシー・マグレディは1997年にトロント・ラプターズでキャリアをスタート。現役を退いた2013年まで、NBAではラプターズを皮切りにオーランド・マジック、ヒューストン・ロケッツ、ニューヨーク・ニックス、デトロイト・ピストンズ、アトランタ・ホークス、サンアントニオ・スパーズでもプレーしたリーグ屈指のスコアラーだ。
特に存在感を発揮していたのは、2000年から2004年まで在籍したマジック時代だろう。もともと身体能力が高かったマグレディは、さらに持ち前の手足の長さとスキル、そして抜群のスコアリングセンスも発揮。点取り屋として人々に名を知らしめていった。
一度侵入を許すと止めることのできないドライブ、ドリブルで揺さぶりをかけながら繰り出されるプルアップジャンプシュート、空中で鮮やかに交わすことができる、しなやかさと余裕のあるダブルクラッチ。そして何より、途端にシュートが決まり出すとディフェンスの手に負えない爆発力はリーグ随一であった。
マジック時代には4度のオールスター出場と、2度の得点王に輝き、2001年には最もリーグで成長した選手へ贈られるMIPを受賞。さらに、2004年にはキャリアハイとなる1試合62得点を叩き出すなど、素晴らしいスコアラーとしてキャリアのピークを迎えながら、ファンへ数々のセンセーショナルなプレーを残していった。
無限の可能性を秘める八村
その他、2004年のアンドレ・イグダーラ(当時フィラデルフィア・セブンティシクサーズ/現ゴールデンステイト・ウォリアーズ)や2011年のケンバ・ウォーカー(シャーロット・ホーネッツ)といった選手も9位指名だ。
NBAドラフトでは、例えばトップ3指名されたからといって、将来安泰だということは決してない。本人のハードワークとチームにおける役割次第では、どの順位であろうとスターや素晴らしいロールプレーヤーになることができる。
だからこそ、上記の偉大なる選手たちのように、同じく全体9位指名をされた八村にも、今後才能を開花させていく可能性が十分にあるということだ。指名を受けたウィザーズで、はたしてどのようなキャリアを送っていくのか、日本人だけでなくリーグからも注目を浴びていくことになりそうだ。