2019.04.10

八村塁の言葉でたどる成長の軌跡(後編)『日本代表、ワールドカップ、東京五輪への塁語録』

八村塁はアメリカだけでなく、日本代表での活動も自分を成長させてくれたと述懐する [写真]=小永吉陽子
スポーツライター

 この1年、日本とアメリカで取材した言葉をもとに、八村塁の成長の軌跡を追う企画。後半は終わったばかりのNCAAトーナメントでの感想と、ワールドカップや東京五輪を見据えた日本代表での戦いを中心とした発言をお届けしよう。日本代表での活動も、間違いなく八村塁を成長させるものとなった。

 今後の進路については、エリート8で敗れたときには試合直後だったこともあり「今は考えられない」とだけ答えている。ただ、シーズン中から今回のトーナメントを「集大成」と語っていただけに、6月のNBAドラフトにアーリーエントリーする可能性は高く、正式な発表が待たれるところだ。

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3年目のNCAAトーナメント

★エリート8で敗れ、シーズンが終わる悲しさ

「ゴンザガでプレーできたことが人生においても僕の財産になる」と八村は語った [写真]=小永吉陽子

 僕、ずっとこのチームが好きだったんですけど、終わってみてやっぱり、本当に好きだったんだなと実感しました。この1年間、この素晴らしいチームでいろんなチームと戦って、いい結果が出たり、負けたりもしたけれど、このチームで戦えたことは誇りに思いますし、うれしいですし、人生においても僕の財産になると思います。僕らはオフェンスが持ち味のチームなんですけど、トーナメントではディフェンスもいい感じになってきて、こういう高いレベルでやれたことは僕のこれからのバスケの人生においてもすごくいい経験になると思うので、これを絶対に忘れないようにしたい。今はこれでシーズン終わってしまうので悲しくなっています。

★テキサステックのしつこいディフェンス
 テキサステック戦は最初からアグレッシブに行けたんじゃないかと思います。ただ、途中で得点取れていないときがあったので、僕が行かないといけないときに、タフショットに持って行ってしまったので、そこでディフェンスが縮んだ時にパスを出したりするべきでした。僕たちがこの国で最高のオフェンス力を持つチームであるように、彼らは最もディフェンシブなチームでした。彼らはインサイドを守ってきたし、ボールに対してしつこく手を出してディフェンスしてきて、最後の数分は得点ができませんでした。それでも僕たちは毎試合、一生懸命に戦いました。

★マーク・フューヘッドコーチの教え
 ずっと「タイガーになれ、タイガーになれ」と言われて、試合では勝ちだけを求めることを学びました。僕がどれだけいい選手かということもすごく言ってくれて、そういうのが僕のこれからのキャリアの自信になると思います。

★今後の課題
 やっぱり、外のシュートの確率をもっと上げなければいけないし、いろんなことができる自分の持ち味をもっと出していけるようにしたい。大事な試合でパッと出せるようにしたい。

愛してやまないチームだっただけに、NCAAトーナメントで敗れたときにははじめて涙を流した [写真]=小永吉陽子

★はじめての悔し涙
 こんなに泣いたのは人生で初めてです。でもそれほど思いは大きかったということです。やっているときはわからなかったんですけど、終わってみればそうだったと思います。

日本代表

日本代表の経験がゴンザガでも生きた
 ゴンザガでここまでやれたのは、日本代表の経験が生きているというのが絶対にあります。ゴンザガのコーチたちも「日本代表でプレーしてほしい。Window(ワールドカップ予選)のような大きな大会を経験することが僕の成長につながる」と言って送り出してくれたけど、その通りだったんじゃないかなと思います。日本代表だと大学よりも年上の人たちとやるので、その中でリーダーになってやるのは難しいけど、その経験がゴンザガでリーダーになることにつながっています。

★20歳で「希望」と期待されること
 期待されていることは感じますし、うれしいですけど、日本代表は僕だけのチームではないし、誰か一人だけのチームでもないし、誰か2、3人だけのチームでもないと思うので。チーム全員、コーチやスタッフ、チームに関わっている人たちみんなが一丸となって戦うことでいい結果が出ると思います。

日本代表ではインパクトを与えたい
 日本代表では一番年下なんですけど、試合ではインパクトを与えるつもりでやっています。自分の良さは高さがあっても動けるところ。オフェンスではトランジションの展開で速攻を出したり、ディフェンスではリバウンドやブロックショットで貢献して、1~5番まで守れるところを出したい。

★合流期間が短くても日本代表にフィットできた理由
 バスケはチームスポーツなので、いくら個人がすごいといっても、集まってすぐに自分をどう出すかは難しいことなので、とにかくコートの内でも外でもずっとコミュニケーションを取って、話をしていました。みんなすごく優しい先輩ばかりで、僕とか(渡邊)雄太さんみたいな年下の選手が途中で入ってきてもオープンマインドで受け入れてくれたので、やっていてすごく楽しい。

代表活動を「途中で入ってきてもオープンマインドで受け入れてくれたので、やっていてすごく楽しい」と振り返った [写真]=小永吉陽子

★悔しかったWindow6の不出場
 2月の予選に参戦できなくて悔しい。大学のシーズン中でなければ絶対に予選に出ていました。僕としてはワールドカップに出場したいので、先輩に頑張ってもらいたいです。ワールドカップになったら日本代表の仲間とできることを楽しみにしています。(Window6直前のコメント)

★NBAの先輩、渡邊雄太の奮闘
 NBAは自分も目標にしている舞台なので、そこで先に雄太さんが戦っていることはすごいなと思いますし、そういうのを見て僕も頑張ろうと思います。Window4で雄太さんとプレーできたことは楽しくてしかたなかったです。

日本代表で初めて一緒にプレーした渡邊雄太の存在が八村を勇気づける[写真]=小永吉陽子

★アメリカにいても感じる日本のバスケ熱
 僕としても、日本のバスケを盛り上げたいというもうひとつの目標があるんですけど、今こっちにいても日本のバスケが盛り上がっているのを感じます。SNSを通じてもそうだし、周りの人から盛り上がっているという話を聞くと本当にうれしい。日本のバスケはまだまだこれからだと思うし、僕たちがもっと頑張って日本の国民がもっと盛り上がってくれたらうれしい。

★東京五輪出場決定の報を受けて
 この1、2年、日本バスケ協会としても、選手としても、やるべきことをやってきたんじゃないかと思います。オリンピックに出るチャンスがあるということで、日本のプレーをFIBAの大会で見せる機会があって、僕もA代表でやると決めて、いろんな新しい選手も入って、そこからずっと勝っていって、日本協会とか関係者とか、ファンとか全員が思いを寄せていたので、そこで一丸となって東京オリンピックの出場を決められたので、これは大きいと思います。

★ワールドカップに向けて
 僕はワールドカップに絶対に出場したいので、そこでどれだけ日本のバスケを見せつけられるかだと思う。今、日本のバスケが強くなっているので、それを世界に見せることはいいチャンスだと思うし、そのチャンスを生かしてもっと強くなりたい。

取材・文・写真=小永吉陽子

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