2020.02.07

シカゴ・ブルズのアウェイカラーをまとった『エア ジョーダン 1 ‘85』が2月8日に発売

『AJ1』誕生35周年の今年、様々なカラーリング展開が期待されている [写真提供]=NIKE
某ストリートメディアのシニア・エディターを経験後、独立。ひとつのカルチャーとしてバスケットボールを捉え、スポーツ以外の側面からもNBAを追いかける。

 ナイキが、『エア ジョーダン 1』の新作をNIKE.COM/SNKRSでリリースする。

『エア ジョーダン 1』が誕生したのは、1985年のこと。マイケル・ジョーダン(元シカゴ・ブルズほか/シャーロット・ホーネッツオーナー)のデビュー時にシグネチャーモデルとして産声をあげ、初めて店頭に並んでから35年を迎える今年は、アニバーサリーイヤーとして様々なカラーリング展開が期待されている。

 前置きとしては少し長くなるかもしれないが、本作のデザインに言及する前に『エア ジョーダン(以下AJ)1』が持つ意義をその歴史からひもといてみよう。

 ジョーダンはノースカロライナ大学からNBAの入団が決まった当時、アディダスが“本命”だったと言われている。そこでナイキがジョーダンと契約を締結するために制作したシューズが、現代までエポックメイキングとして語り継がれている『AJ1』である。伝説的存在でありながら現在もスニーカー制作に大きな影響を与えているティンカー・ハットフィールドがジョーダンシリーズを手がけ始めたのは『AJ3』以降で、『AJ1』はピーター・ムーアとブルース・キルゴアが短期間でデザイン。余談ではあるが、前者はアディダスのパフォーマンスロゴの生みの親であり、後者は同じくナイキの名作『エア フォース 1』のデザイナーでもある。

『AJ1』は、ナイキがNBAの規約を逆手に取ったプロモーションで一躍話題となった。発売当時、NBAの「ユニフォーム統一性に関する規約」では、白いバスケットシューズ以外を着用することは許されていなかった。しかし、シカゴ・ブルズのホームカラーをまとった『AJ1』の初期カラー“シカゴ”はこの規約に反しており、ジョーダンには1試合着用するごとに毎試合5000ドル(当時約40万円)の罰金が課せられた。しかし、ナイキはこの罰金を全て肩代わりすると同時に、「NBAがこのシューズの着用を認めなくても、諸君の着用を止めることはできない」というキャンペーンを打ち出す。NBAの規約を逆手取ったプロモーションは大きな反響を獲得し、後にNBAの規約変更にも大きな影響を及ぼすこととなった。

マイケル・ジョーダンのデビュー当時、ナイキの戦略も相まって、一気にムーブメントを起こしたAJ1 [写真]=Getty Images


 当時の常識を覆した『AJ1』は、ストリートでも名声を築いていく。その反骨精神と鮮やかなカラーリングはもちろんのこと、足首を保護するハイカットの設計と優れたクッショニングを誇るナイキエアの搭載により、バーチカルランプのスケートボーダーに最適なデザインだった。そしてランス・マウンテン、ミッキー・レイズ、ブライス・カナイツのようなスケートボード界のアイコンたちが『AJ1』を履くようになり、同モデルはストリートのマストハブとして普及していくことになる。

 無論、このモデルを語るうえで、ファッションとの関連性を無視することはできない。2008年のリーバイスとのコラボレーションを皮切りに、トライブ・コールド・クエスト、パブリック・スクールなど著名アーティストともダブルネームモデルを発売し、バスケットシューズ以上の存在として今でもスニーカーシーンで不動の王座を守り続けている。日本では、ストリートのゴッドファーザーの異名を持ち、フラグメントデザインを主宰する藤原ヒロシが最初のコラボレーター。また、近年はルイ・ヴィトンのメンズ部門のクリエイティブ・ディレクターに就任したオフホワイトのデザイナー、ヴァージル・アブローが「The Ten」と題したコレクションを展開し、そのファーストモデルを飾った“シカゴ”カラーのAJ1は、スニーカーの市場価値を決める『StockX』で3,700ドル(約40万5,000円)の値がつけられている。『AJ1』は発売以降、ファッションの文脈にも名を刻んでいるのだ。

 さて、話しを戻そう。2月8日午前9時にリリースされる『エア ジョーダン 1 ‘85』は、伝統からインスパイアされた一足だ。ベースとなるカラーリングは、ブルズのアウェイカラーをモチーフにしたもうひとつの名作“ブレッド”。しかし、本作は“ブレッド”にマイナーチェンジを施し、トゥとバンプ部分のカラーを入れ替えている。アッパーにはブラックのレザーを使用し、ユニバーシティレッドのオーバーレイをプラス。パリッとした質感を持つホワイトのミッドソールが、時代を超越したスタイルにすっきりとした印象を与えている。さらに今回のバージョンは、スニーカーファン待望のレトロなパッケージで登場。生産された23,000足のうちの一足であることを示すドローストリングバッグと、シカゴの地平線の上を飛ぶジョーダンを表現したオリジナルのハングタグなどが同梱されている。

 人気カラー、アニバーサリーイヤーモデルともなれば、完売必至。気になる方は『SNKRS』の通知設定を済ませておこう。

BASKETBALLKING VIDEO