「それは俺のやることじゃない。俺がやりたかったのは、自分が手助けできると感じるチームの一員となって、何分かプレーすることだったんだ」
今年1月下旬に43歳を迎えたビンス・カーター(アトランタ・ホークス)は、メンフィス・グリズリーズ在籍時の2016-17シーズンを最後に、プレーオフへ出場していない。
今季限りで現役引退を表明しているキャリア22年目の大ベテランは、ここ3シーズンをサクラメント・キングス、ホークスに所属。NBAの中でも決して強豪とは呼べず、覇権争いどころかプレーオフ進出も困難なチームでプレーしてきた。
これまで、カーターは「俺はプレーすることが大好きなんだ」と口にしてきた。キャリア晩年のベテラン選手は「引退前に優勝してチャンピオンリングを……」という思いから、低年俸で優勝候補のチームに加入するケースが多い中、カーターは異色と言ってもいい存在である。
では、カーターはなぜチャンピオンリングを追い求めないのか。4月29日(現地時間28日)に『Sports Illustrated』へ掲載されたインタビューの中で、カーターはこう話していた。
「それは俺のやることじゃない。興味があることではないんだ。俺がやりたかったのは、自分が手助けできると感じるチームの一員となって、何分かプレーすることだったんだ」。
40歳を過ぎてプレーしたここ3シーズン、カーターはケガなどで欠場した試合もあったが、キングスとホークスでローテーションに入ってプレーしている。昨季と一昨季はいずれも平均17分以上、今季も平均14.6分の出場時間を得て、自身よりも20以上も年の離れた若手ともプレーしている。
「俺は単純にプレーがしたかった。それでどうなったかって? 自分が持つ知恵を与えることができたかもしれないし、彼ら(チームメートたち)にとって最高のメンター(助言者)になれたと思ってる。時には伝えるだけじゃなく、実際に見せることが大切になってくるんだ。ゲーム中の状況やポジショニングといったことがね。だから俺は選手として、哀れな存在になるかもしれない。でもそれは、俺が競い合うことが大好きだからなんだ。俺としては、誰かが自分のプレーを見てくれるんだから、ベンチに座って試合をただ眺めるなんてできないのさ」。
カーターはNBA史上最長となる22シーズン目をプレーしたことで、出場試合数(1,541)でNBA歴代3位に浮上。キャリアを積むごとに磨きをかけてきた3ポイントでも試投数(6,168)で歴代5位、成功数(2,290)で歴代6位まで順位を上げており、通算得点(2万5,728)でも歴代19位と、歴代トップ20入りを果たした。
43歳までコートに立ち続けた男は、チームメートたちやファンへ最後までプレーする姿を見せてきた。新型コロナウイルスの影響でシーズン中断が続いているが、NBAのコートを去る前に、もう一度プレーする姿を見てみたいものだ。