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NBAではこれまで、ドラフトやフリーエージェント(FA)戦線、トレード、さらには所属チームで急成長を遂げることで、1つのチームに超強力な3選手が集結し、ビッグ3と評されるトリオが形成されてきた。
1990年代後半に3連覇を達成したシカゴ・ブルズ(マイケル・ジョーダン、スコッティ・ピペン、デニス・ロッドマン)、1980年代に複数回の優勝を成し遂げたロサンゼルス・レイカーズ(アービン“マジック”ジョンソン、カリーム・アブドゥル・ジャバー、ジェームズ・ウォージー)やボストン・セルティックス(ラリー・バード、ケビン・マクヘイル、ロバート・パリッシュ)、2000年代以降ではセルティックス(ポール・ピアース、ケビン・ガーネット、レイ・アレン)、マイアミ・ヒート(レブロン・ジェームズ、ドウェイン・ウェイド、クリス・ボッシュ)などがその筆頭と言えるだろう。
そして2000年代序盤に、NBAの歴史を揺るがすほどのビッグ3がオーランド・マジックに誕生する可能性があった。それがグラント・ヒル(元デトロイト・ピストンズほか)、トレイシー・マグレディ(元マジックほか)、ティム・ダンカン(元サンアントニオ・スパーズ)だった。
2000年夏。マジックはヒルとマグレディをサイン&トレードで獲得。203センチ102キロのヒルは、6シーズン所属したピストンズで平均21.6得点7.9リバウンド6.3アシスト1.6スティールを残したオールラウンダー。203センチ95キロのマグレディは1999-2000シーズンにトロント・ラプターズで平均15.4得点6.3リバウンド3.3アシスト1.1スティール1.9ブロックを記録し、身体能力に秀でたスウイングマンとして台頭した注目の若手。
恐ろしいデュオの形成に成功したマジックだったが、彼らは1999年にスパーズへ球団史上初優勝をもたらしたダンカンというビッグマンも加えようとしていた。
12月20日(現地時間19日)に公開されたポッドキャスト番組「The Legends Lounge with Trill Withers」へゲスト出演したヒルは、当時についてこのように振り返っていた。
「オーランド、マイアミ、サンアントニオ、シカゴ、ニューヨーク(ニックス)。それらすべてのチームがノックしてきた。で、僕としてはオーランドが正しくフィットする気がしていたんだ。(マグレディが)加わるのは分かっていた。そしてティム・ダンカンがやって来るチャンスもあった。僕らはそこでビッグ3を形成していたようなものだった。けどそううまくはいかなかったんだ」
マジックはヒルとマグレディを獲得するも、FAのダンカンを加えるには至らず。そしてヒルは足首のケガに悩まされたこともあり、ピストンズ時代ほどのオールラウンダーぶりを発揮できなかった。
そこでマグレディはマジックのベストプレーヤーとなり、オールスターの常連、さらにはオールNBAファーストチームに名を連ねるほどの選手へ成長。だが2001年からプレーオフへ3年連続で進出も、いずれもファーストラウンド敗退に。
結局、マグレディは2004年夏にヒューストン・ロケッツへトレード、ヒルは2007年夏にFAとなってフェニックス・サンズへ移籍。マジック、そしてヒルが描いていたシナリオは理想とはほど遠い結末になったことは言うまでもない。ダンカンとの共闘が実現しなかったことについて、ヒルはこう話していた。
「分からないね。彼は間違いなく興味を示していた。けど、今となってはティムがキャリアのなかでどこか違うチームへ行くなんて想像できないよね。真実はどうだったのか、彼がどれほど真剣に考えていたかは僕には分からない。でも僕らが一緒に訪れた時、僕としては彼が加わるんだと思っていた」
当時ヒルとダンカンは同じ代理人で、実際にダンカンはマジック移籍へ傾いていた。だがデイビッド・ロビンソン(元スパーズ)がハワイの別荘から駆けつけて説得したことでダンカンは残留を決断。その後ダンカンは2003、2005、2007、2014年にもスパーズで優勝し、フランチャイズ史上最高の選手として現役を退いた。
ヒルとマグレディはキャリアのなかでケガに苦しんだものの、バスケットボール殿堂入りを飾っており、今となってはその3選手がいずれも殿堂入りという豪華なトリオとなった。ヒルのケガがあったとはいえ、もし2000年夏にダンカンがマジックへ加入していれば、マグレディとの超強力なデュオが誕生し、ヒルのケガが完治して復帰できていたら球団史上初優勝、少なくとも優勝争いへ参戦することはできていたのではないだろうか。
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