2017.10.13
2017-18シーズン、大補強を敢行した琉球ゴールデンキングスのホームに乗りこんでの開幕節を、1勝1敗とまずまずの成績で終えて青山学院記念館へと戻ったサンロッカーズ渋谷。数試合を終えた時点では時期尚早とは思いつつ、敢えて言えば、そのオフェンスの形が見えてこない。
SR渋谷は、日本代表にも選出されたアイラ・ブラウン(現琉球ゴールデンキングス)が移籍したものの、スティール王広瀬健太、ブロックショット王ジョシュ・ハレルソン、新人王ベンドラメ礼生、と昨シーズンの個人タイトルホルダー3名に加え、元NBAロサンゼルス・レイカーズのロバート・サクレを擁するタレント軍団だ。昨季アシスタントコーチを務めた勝久ジェフリーヘッドコーチが率いるSR渋谷は、インサイドの柱であるサクレを中心としたディフェンス力の高いチームで、その守備力が今シーズンを戦っていく上での土台になるのは間違いないが、“渋谷”のチームである以上、豊富なタレントを活かした魅力あるバスケットボールを展開してほしいところだ。
厳しいディフェンスから素早くボールを奪取し、電光石火のファストブレイクが決まると、青山学院記念館は大歓声に包まれ、大いに盛りあがる。課題はハーフコートでのオフェンスだ。新戦力として期待された元NBAロサンゼルス・クリッパーズのブランデン・ドーソンが左ひざ軟骨損傷の診断を受け、全治未定なのは大きな誤算だが、ハーフコートでのSR渋谷の攻撃は、連動性に乏しく、迫力にも欠ける。ボールを回す意識は感じられるが、ガード同士のパス交換から、213センチのサクレ、208センチのハレルソンにボールを預けると、インサイドの選手の個の力に頼って周囲の選手の足は止まってしまう。
今シーズンより、ポイントガードから、より攻撃的なポジションであるシューティングガードへとコンバートされたベンドラメは、10月7日の試合後のミックスゾーンで「どうしてもインサイドに頼って、インサイドにボールを入れると周りの選手は止まってしまう……」とチームの課題を認め、「どこか単発な攻撃が目立つ。結果、僕のドライブが成功しただけで、(チームとして意図して)作ったオフェンスではない」と語った。
また、シーホース三河から移籍した長谷川智也は「三河のときには、桜木ジェイアールやアイザック・バッツに入れてから、インサイド・アウト(インサイドからアウトサイドにボールをさばくこと)して外からシュートを狙うというオフェンスの形がありました。渋谷はインサイドに入れてしまうと、そのままフィニッシュまで持っていってしまうので、そこで勝負できていればいいのですが……。周りとの連携も取れていない現状では、なかなか最後まで持っていけていないと思います」と語り、ハーフコートオフェンスの停滞に懸念を示した。
7日の三遠戦でも、サクレにボールが渡ったあとに、ゴール側を空けて、サクレに勝負をさせるのか、サクレの逆サイドでフリーの選手を作ってゴールへ飛びこんでいくのかなど、選手の意思疎通が取れておらず、ペイントゾーンが混みあったり、逆にサクレに預けっぱなしでフォローがなかったりと、オフェンスの構築にギクシャクとする場面も散見された。
このハーフコートオフェンスの課題を解決するにはどうするべきか問われたベンドラメは「今は、選手それぞれが周りを見てしまっているので、一人ひとりが『ボールをくれ!』といい意味でのエゴを出して、コミュニケーションを取れるといいなと思います」と話す。また、「自分自身も、仕掛けたドライブが効果的で、相手のディフェンスが縮まってきたときに、もっと周りを見てパスをさばけたら良かったと思っていますし、無理にシュートにいってミスした後に、腹を立てるのではなくて、冷静になれていれば……」と反省の弁を述べた。
長谷川は「一応、システムはあるのだが、今は個々でやっている感がすごくある。個々のプレーで終わってしまっている。インサイド・アウトからアウトサイド・インの単純なところ……。そのプレーにもう1人絡んでいく選手が出てくれば、攻撃バリエーションも増えてくると思います」と語り、攻撃力改善が可能であること、その伸びしろは、まだまだあることを示唆した。
アルバルク東京は、ピック&ロールを使いながら相手守備陣のズレを作って攻め込んでいくヨーロッパスタイルを志向している。シーホース三河は、桜木を中心としたハーフコートバスケットに、早いバスケットボールを組み合わせることを標榜した。照明やスモークなどの会場演出も、華やかなチアリーダーの応援も、バスケットボールを楽しむうえで、大事な要素の一つだが、中心となるコンテンツとしてバスケットボールの面白さが欠かせないことは言うまでもない。オフェンスの形が見えることも、バスケットボールを楽しむ上では、重要な要素の一つとなる。ベンドラメが「試合を重ねていくうちに少しずつ良くなってほしいし、良くしないといけないと思います」と語ったとおり、これからのSR渋谷の“攻撃の形”に期待したい。
文=村上成
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