Bリーガーにバッシュへのこだわりを聞いていく連載、第11回。今回登場するのは、狩俣昌也選手(シーホース三河)。B1中地区での激戦を戦うチームを引っ張るキャプテンは、どんなバッシュでプレーしているのか? 今回はその前編をお伝えする。
文=CARTER_AF1
取材協力=シーホース三河
クッション性能に優れるNIKE、そしてPUMA
――今シーズンに履いているバッシュを教えてください。
狩俣 NIKEとPUMAを履いています。
――NIKEはどのモデルですか。
狩俣 『HYPERDUNK X LOW』(ハイパーダンク 10 ロー)です。
――それを選んだ理由は?
狩俣 デザインの良さと、履きやすさです。履いてみたらクッションがすごく良かったことが一つ。それと僕は足幅が少し広めなのですが、その僕が履いても横が窮屈な感覚もなく履けたというのがいいところでした。
――カットが低いのもポイントですね?
狩俣 僕はローカットのシューズが好きなんです、昔から。それと、NIKEさんは何でもカッコいいですから。この1つ前に『HYPERDUNK 2017』も履いていたんですが、それも良かったですね。
――クッションの良さも気に入られたとのことですが、『HYPERDUNK 2017』では<リアクト>というクッショニング技術を搭載していて、『HYPERDUNK X LOW』は<ズームエア>です。そのクッションの違いをどのように感じましたか。
狩俣 クッションはふわふわした感触が好きなので、『HYPERDUNK X LOW』の履き心地の方が好きですね。『HYPERDUNK 2017』は硬さもあったというか。ただグリップは『HYPERDUNK 2017』の方が効いていたなと感じました。
――今シーズンはクッションの良さを優先して『HYPERDUNK X LOW』を選んだわけですね。
狩俣 はい、そうですね。それと先ほど挙げたPUMAのシューズも履いています。
――そのお話をぜひおうかがいしたいと思ってきました! そのPUMAのモデル名は?
狩俣 『CLYDE COURT』(クライドコート)です。
――今シーズンの狩俣選手を見た時、それを履いていて本当にビックリしました(笑)。それを履こうと思ったきっかけは?
狩俣 単純にカッコいいと思ったこと。それから、日本ではまだ履いている選手がいなかったことも大きいです(笑)。NBAでは、PUMAを履く選手が今シーズンから出始めましたよね。【注1】 PUMAと契約したルーキーの3選手を注目して見ていて、僕も履きたいと思っていて。そうしたらシーズン初めにアメリカで発売されたので、僕もトライしてみた、という流れです。
【注1:PUMAは2000年以降バスケットボールシューズの開発・販売をほぼ停止していたが、昨年になり本格的な展開を再開。昨年のNBAドラフトで全体1位となった新人王候補デアンドレ・エイトンを含む有望な若手選手と契約し、新作バッシュの『CLYDE COURT』を発売した。当初は日本での販売はなかったが、この1月になってPUMA JAPANが日本でも正規販売を開始し、話題を呼んでいる】
――フェニックス・サンズにドラフト1位指名された、デアンドレ・エイトンもPUMAと契約して話題になりましたね。ちなみにこの『CLYDE COURT』はどのように入手されたのでしょう?
狩俣 海外からの直接購入です。Eastbay(アメリカのスポーツ用品通販サイト)を利用しました。
――そうすると試着はできませんよね。PUMAは久しくバッシュを発売していなくてメーカーとしてのサイズ感もわからなかったと思いますが、それは大丈夫でしたか?
狩俣 でも、実際履いてもしサイズが合わなかったら、NIKEを履けばいいなと(笑)。
――ただ海の向こうから届いた『CLYDE COURT』は、狩俣選手の足にきっちり合ったと。実際の履き心地はどうでしたか?
狩俣 『CLYDE COURT』はクッションに<エナジービーズ>【注2】が導入されていて、その感触は悪くないなと。NIKEのシューズに比べれば少し重いですけど、それも気になるレベルではなくて。デザインも好みでした。
【注2:エナジービーズはPUMAが近年になって開発したクッショニング技術。小さな球状の素材でミッドソール内を埋めることで、ソールがどんな形に屈曲しても十分に衝撃を吸収する。『CLYDE COURT』には、エナジービーズと、ポリウレタン素材を再生成したイグナイトフォーム、その2種を融合させたクッショニングシステムが採用されている】
――重さという話題が出ました。『CLYDE COURT』はソールがフラットな構造ですが、そこに<エナジービーズ>を複合的に活用する技術を搭載したこともあり、全体的な重心が下部に寄り重さを感じるという印象もあります。そういう面も含めて、『HYPERDUNK X LOW』との履き心地の違いというのはいかがでしょうか。
狩俣 僕は元々軽いシューズが好きなので、そこの違いは感じます。でも『CLYDE COURT』も足運びにマイナスにはならないと言うか、重心が下にあるのは悪い方には出ていないです。他には、僕はソックス状の作りのバッシュを履いたのは『CLYDE COURT』が初めてでしたが、動きづらさは感じずに足にフィットしてくれて。ローカットではなくこういう形状のバッシュもありだな、と思わされました。
――クッションの感触はどうでしょう、「他のバッシュのクッションと違うな」と思う瞬間はありますか?
狩俣 あ~、<エナジービーズ>が他とどう違うかはあまり気にならないというか、気にしていませんでした(笑)。ただ、もっと硬い感触かと思っていたんですが、初めて足を入れた時、見た目に反して結構ふわふわしたクッションだなと感じて。その最初の印象で、「あ、これは履けるな」と思いました。
誰よりも先に履いたPUMA『CLYDE COURT』
――サイズが合い、クッションの感触も良かったので試合でも履かれたということですね。今シーズンに狩俣選手が初めて『CLYDE COURT』を履いて出場した時は、個人的に非常に衝撃を受けまして。「あれ、あのオレンジのシューズって、もしかして…」と狩俣選手の足元をずっと凝視して、映像がアップになった瞬間「やっぱりそうだクライドコートだ!」と一人で叫んでしまいました(笑)。
狩俣 ありがとうございます、一番狙っているのはそこなんです(笑)。他には誰も履いていない、そしてわかる人にわかってもらえる、そんな優越感といいますか(笑)。
――私が知るかぎり、Bリーグで『CLYDE COURT』を履いたのは狩俣選手が初めてですし、現在も他に履いている選手はあまりいないように思います。
狩俣 そうですね、そう思います。そういう(パイオニア的な)ものは大事だと思っていますから(笑)。
――それは確かに大事です(笑)。もう少し機能面について聞かせていただきます。狩俣選手のプレーでは、マッチアップ相手にストレスを与え続けるマンマークだったり、献身的にヘルプに向かう姿勢だったりというディフェンスの部分が特に印象的です。そうした部分はフットワークが重要視されますが、ご自身のプレーに対してシューズに求めるフィーリングはどのようなものですか。
狩俣 その面においては、僕は「より止まる」ことを重要視しています、グリップが効くかどうかを。それと、先ほどお話しした軽さも重要です。他には、シューズが足にしっかりとフィットすることも大事ですね、シューズの中で足が動くのは好きではないので。僕は新しいシューズを履いたら、まずはディフェンスの動きから試してみるのですけど、そういった部分を主に確認しますね。
――ありがとうございます。ここからは狩俣選手がこれまでどんなバッシュを履いてきたかをお聞きしていきます。ところでバスケットボールを始められたのはいつ頃ですか?
狩俣 小学1年生の終わりから2年生の初め頃だったと思います。ミニバスからです。
――それから各年代でどんなバッシュを履いてこられたかを教えてください。
狩俣 最初に履いたのは、CONVERSEの『ALLSTAR』だったと思います。あの星が付いたシューズですね。小学6年生の時は、『AIR JORDAN 12』を履いたりもしました。兄がいるのですけど、マイケル・ジョーダン(元シカゴ・ブルズ他)のことをよく知っている世代で、その兄の影響はかなり受けました。
――『AIR JORDAN 12』は、お兄さんのおさがりということではなく?
狩俣 おさがりではなくて、兄に「これがカッコいいよ」と教えてもらったものを、自分でも「うわカッコいい」と思ってそれを履いていました。白黒のカラーでしたね。
――『AIR JORDAN 12』は、アッパーも含めて全体が硬い作りですが、そのあたりはどうでしたか。
狩俣 はい、かなり硬いと思います。ただそれよりはもう、カッコいいので(好きだった)。性能とかはほとんど覚えていないですが、硬いバッシュだったというのだけは覚えていて、あとになって「よくあの時履けていたな」とは思いました。
――中学校ではどんなバッシュを?
狩俣 中学に入って初めてMIZUNOのローカットを履いたんです。それを選んだのは、やはり兄から勧められたからでした、モデル名は覚えていないのですが。僕以外には誰も履いている人がいなかったので、その優越感もよかったですね(笑)。
――中学校では、そのままずっとMIZUNOですか?
狩俣 ASICSの『GEL BURST』も履きました。あとREEBOKも履きました。『QUESTION』のような有名なものではなかったですけど。
――中学校時代は、かなり色々なメーカーのバッシュを履かれていたのですね。高校時代はどうでしたか。
狩俣 高校ではASICSを履いたり、またJORDANブランドのバッシュを履いたり。AND1の『TAICHI MID』を履いたりもしました。それに、CONVERSEから出ていたドウェイン・ウェイド(マイアミ・ヒート)の初期モデルも履いていました。
――CONVERSEのウェイドモデルですか!? あのバッシュ、日本で入手するのはかなり大変だったのでは?
狩俣 あれは沖縄で輸入商品を扱っているショップで購入した記憶があります。そうした海外限定とか日本ではなかなか手に入らないバッシュを取り扱っているところでした。
――AND1の『TAICHI MID』も履かれたとのことですが、そちらはどんなきっかけでしたか。
狩俣 『TAICHI MID』は、小学生の時にNBAのダンクコンテストでビンス・カーター(アトランタ・ホークス)が履いていた【注3】のを見て、その印象が強かったからと、兄の影響もあったと思います。
【注3:ビンス・カーターがダンクコンテストに出場したのは、2000年のNBAオールスターゲームでのこと。この時PUMAとの契約破棄についての係争中だったカーターは、契約を交わしていないAND1の『TAICHI MID』を履きコンテストに出場。史上最高と言われるワンマンショーを演じて一躍スターダムに駆け上がり、その際履いていた『TAICHI MID』も注目されることになった】
――なるほど、あの伝説のスラムダンクコンテストを見て、さらにお兄さんの勧めもあって。
狩俣 はい。当時はAND1が全盛期を迎えた頃で、人気が上がっているのは知っていましたし、ストリートバスケもすごく好きでしたから。AND1のmixtapeというビデオを兄が見せてくれて、その影響は大きかったです。
(後編に続く)