2018.07.01
Bリーガーにバッシュへのこだわりを聞いていく連載、第7回。今回は、篠山竜青選手(川崎ブレイブサンダース)。チームの顔であり日本代表でもプレーするポイントガードは、そのキャリアでどんなバッシュを選んできたのか? この取材では篠山選手にたっぷりとお話をうかがうことができた。そこで2回に分けてインタビューをお伝えする。今回はその前編。
取材協力=川崎ブレイブサンダース
文=CARTER_AF1
――「このバッシュを履こう」と決めた理由は?
篠山 『GEL TRIFORCE 2』が出る前に『GEL TRIAX(ゲルトライアックス)』を履いていて、ホールド感の良さや、切り返しの際も足にしっかり吸い付いてくる感覚を気に入っていました。ただ、「少し重たいな」、という感覚が自分の中であったのですけど、ASICSさんから「『GEL TRIAX』の機能を継承して軽量化したバッシュが出ますよ」と『GEL TRIFORCE』を紹介していただいて。「じゃあそれを履いてみよう」と乗り換えたのがきっかけです。
――『GEL TRIFORCE 2』は私も履いたことがありますが、それまでのものと比べて軽くなっているとはいえ、重量もそれなりにあるかなりしっかりしたバッシュだという印象があります。篠山選手はポイントガードですが、軽くて柔軟なものよりも頑丈なバッシュの方が好みということでしょうか。
篠山 もちろん軽ければ軽い方が有難くはありますけど。足をしっかり包んでくれる感覚や、切り返しで(内部で足が)滑らない、足が動かない感覚とかを(重視している)。何と言うか、しっかり履けている、地面と近いところでしっかり履けているという安心感が、僕の中で最優先なので。この(『GEL TRIFORCE 2』の)機能を持っていてもっと軽いものが出れば、もちろんそれはうれしいですけどね。他のバッシュを履いてみると、軽くても切り返しでちょっと怖かったりするので。
――あと、篠山選手としては接地感が高くて、コートが近い(感覚の)方が?
篠山 はい。クッション性に優れているものを履くと、ちょっと浮いている感覚というか、ふわふわするのが僕はあまり好みではないので。それだったら、フロアと近い感覚の方が僕は好きです。僕はインソールを入れ替えていますが、そうしたフロアとの近さがある中に、インソールで少しクッションを入れています。
――それは、既製品の中に元からあるインソールを外して?
篠山 それを外して交換しています。僕用のインソールもASICSさんに作ってもらっていまして。足型をとり、走っている時やジャンプして着地した時など、(それぞれの動作において)足裏のどの部分にどのように荷重がかかっているか、体重が外側に乗っているのか内側に乗っているのか、という癖のようなものも計測してあります。そして、それに合わせて(インソールのバランスを)調節したり、あと僕は扁平足なので、土踏まずのところを少し上げて作ってもらっています。
――『GEL TRIFORCE 2』では、アウトソールがフラットに近い構造となり外側に倒れにくい作りとなっていますが。篠山選手としては、アウトソールのエッジ部分までを(接地面として)使うことよりも、倒れない安定感というものをより優先しているということでしょうか。
篠山 そうですね、アウトソールのエッジまで(接地面が)めくれ上がっているバッシュも履いたことはあります。ただ、足が全部乗っていないというか、一回り小さいソールの上に自分の足が乗っている感覚があって、それに違和感があったというか。それだったら、僕はこういうフラットなソールの作りの方が、しっかりバッシュを履けている、という感覚になれるので。
――『GEL TRIFORCE 2』を履いていて良いと思える部分、他には何がありますか。
篠山 僕はポイントガードなので、左右はもちろん前後にも切り返したり、急停止・急発進というのが特に多いポジションです。このバッシュは(ボディ全体が)強い作りなので、そうした場面で安心してビタッと止まれるなと。ディフェンス時の切り返しやオフェンス時のコースを止められた際のステップバックでも、足が安定する感覚があります。そういう咄嗟の瞬間の一歩目がしっかり出せるところも、僕がこのバッシュを気に入っている部分です。
――フロアが近くて、足が浮かない感覚。そしてプレーする上で足の固定感・安定感を重視する篠山選手としては、『GEL TRIFORCE 2』というのは非常に好みに合うバッシュと言えますね。
篠山 はい、今自分の中ではベストです。
――実は、『BLAZE NOVA』についてもお聞きしようと思っていました。実は私あのバッシュはかなり気に入っていて、筋力がなくてか細い自分にも合っているので(笑) でも、「あれ? 篠山選手履いてないな?」 と思っていたんですよ(笑)。
篠山 (笑) ASICSさんからもだいぶプッシュしてもらいましたし、リーグでも2試合くらい履きました。ただ、シーズン中にバッシュを変えるというのは、僕の中では(感覚の変化により)少しリスクもあるので。今シーズンはとりあえずあの2試合だけにして、慣れている『GEL TRIFORCE 2』に戻しました。
――なるほど。オールスターでのお披露目【注1】もよかったですよね。熊本でのオールスターゲームには私も行きましたが、「ああオールスターで履くんだ!?」と思って(笑)。
篠山 あ、そうだったんですね(笑) まだ発売前でしたけど、ああした(プロモーションの)やり方はNBAでもオールスターであったりするじゃないですか(笑)。
【注1:ASICSの新作である『BLAZE NOVA』は、今年3月に発売。ASICSは早くからプロモーションを展開した。篠山選手は1月に熊本で行われたBリーグオールスターゲームでこれを着用し、発売前のお披露目を行った】
――かつてNBAのオールスターやプレーオフで新作を発表したJORDAN BRANDの『AIR JORDAN』シリーズのような。――続いて、篠山選手のこれまでのことをお聞きします。バスケを始められたのは、ミニバスの時でしょうか。
篠山 はい。小学校3年生の時です。
――その頃、どんなものを履いていたか覚えていますか?
篠山 初めは母のおさがりで、『AIR JORDAN』の、あれはいくつかなぁ? バルセロナオリンピックカラーのもので。
――バルセロナカラーとなると、『AIR JORDAN 7』ですね。
篠山 そうだ、『(AIR JORDAN)7』です。
――お母様のものとなると、サイズは大丈夫だったのですか?
篠山 結構ぶかぶかだったんですけど、バッシュはまだちゃんとしたものを持っていない時で。多少大きくても「これを履いて最初はやってみなさい」と。
――確か、お兄さんとお姉さんもプレーされていていましたよね?
篠山 はい。うちは3人兄弟なのですが、全員プレーをしていました。あと母もです。
――なのに、ご兄弟のおさがりではなくて、お母様のおさがりで。
篠山 そうです(笑)。
――で、いきなり『AIR JORDAN』から(笑)。
篠山 はい、『AIR JORDAN』から(笑)。
――では、その後は?
篠山 それからはASICSを履いたり。あと小学生の時は一度、黒い『AIR PENNY 2』を履いたり。6年生になったら、ASICSの『ALL JAPAN SL-L』も。
――なんと、いいとこ履いてますね~。
篠山 はい(笑)。『ALL JAPAN』を履いている人はバスケがうまい、というようなことがあるじゃないですか。だから六年生になったら『ALL JAPAN』を履こう! というのを下級生の時から思っていたので。
――『AIR PENNY 2』を履いてみようと思ったのは?
篠山 母の中で、日本人の足に合っているのはやっぱりASICSだというのがあって。兄はNIKEとかを履いていましたが、(母から)「やっぱりASICSにしなさい」と言われたことがありました。その影響で、僕もASICSにしておいたのですけど、でもどうしても僕は、カッコいいのを履いてみたい、という欲求があって。その頃に読んでいた月バス(月刊バスケットボール)、当時はシューズの広告もすごく多くて。(そこで見た)『AIR PENNY 2』の黒が自分の中ですごくビビッと来て。
――その瞬間、「これを履きたい!」と。
篠山 そうです。それで「1回履かせてくれ」と。そうしたら母も、まだ小学生で筋力も全然ないし、ケガなどのリスクもないだろうから、小学生のうちに好きなものを履いておきな、と。で、『AIR PENNY 2』を買ってもらって履いたんですけど。すごくカッコよくて良かったけど、『AIR PENNY 2』の丸ヒモ? あれがすごくほどけやすいんですよ。試合中に何回もほどけちゃって、監督にすごく怒られて(笑) で、怖くなってASICSに戻しました(笑)。
――うーん、平ヒモにする、という選択肢もあったような?(笑)。
篠山 ですよねぇ? 当時の僕にはそれが思い浮かばなかった(笑) でも、あの丸ヒモ込みでカッコよかったんです。あの黒い『AIR PENNY 2』はもしまた販売されることがあったら絶対買うんですけどね。そして中学生の時は、AND1に出会いました。AND1の『TAICHI MID』を中3で。中1、中2の時はASICSを履いていましたけど、中3で『TAICHI MID』に出会って、これもビビッときて。また「これ1回履かせてくれ」と母にお願いして。
――それもきっかけとしては部活の先輩の影響ではなく、広告からですか。
篠山 雑誌の広告と、あとはMIXTAPE【注2】ですね。あれを中学の外部コーチが貸してくれて。それがAND1との出会いだったのだと思います
【注2:AND1 MIXTAPE(ミックステープ)は、ストリートバスケットボールに代表されるようなハイライトシーンを収録し音楽と共に編集した映像集。AND1の知名度を一気に押し上げ、チームを結成しての世界ツアー等にも派生するなど、人気を博した】
――あの同じ人間とは思えない人達の映像を見て(笑)。
篠山 はい、はい(笑) それでAND1というブランドを知って、ストリートっぽい新しいブランドで、中学生にはすごくカッコよく見えたので。『TAICHI MID』はすごく(足に)合っていて、好きでしたね。
――そうして『TAICHI MID』で中学を終え、高校へ、ですか。
篠山 そうです。『TAICHI MID』で、最後の夏の大会は出たと思います。『TAICHI MID』で(中学の部活を)引退して、高校入学するまでの期間は、多分『ZOOM BRAVE』、田臥(勇太/栃木ブレックス)さんモデルの白赤を履いていたと思います。中学生ぐらいの頃だと、とにかく「カッコいいのを履きたい」という自我ばかりが湧いてきて、ASICSとは一時の別れを(笑) それで高校生になってからは、だいたいASICSを履いていたんですけど。その間あいだで、また『TAICHI MID』を履いてみたりだとか、K1X(ケイ・ワン・エックス)にも挑戦したりだとか。
――おっと!? 意外な名前が(笑)。
篠山 はい(笑) 本当にそれは初期の、日本に入ってきてすぐのものを履きました。
――初期というと、まさか『CHIEF GLIDER』ですか?
篠山 ああはい! 『CHIEF GLIDER』【注3】です。
【注3:ドイツのスポーツメーカーK1Xが、バスケットボール市場参入の初期に発売した『CHIEF GLIDER』(チーフグライダー)。当時の日本ではまだ知名度が低く流通数は多いとは言えなかったものの、現在のK1X人気の礎となった】
――まさかあれを履かれていたとは! 私もあのモデル好きだったんですが、どうでした?
篠山 好きでしたね。(履き心地も)良かったです。K1Xは、僕が高校1年生の時の3年生の先輩が履き出したんですよ。それを見て、「何だあれは!」となって、すぐ電話して。それも月バスか何かに載っていたお店だと思います、どこのお店だったかはちょっと忘れちゃいましたけど。
――いや~私、『CHIEF GLIDER』をバスケで履いていたという方とお話ししたのは人生で初めてなので、今すごくテンション上がりました(笑)。
篠山 ええ本当ですか?(笑) 実は北陸高校ではプチブームになっていたんですよ、K1Xは。
――おおそれは!(笑) K1X好きの友人に伝えておきます、北陸高校でブームになっていたよと(笑)。
篠山 はい、一時ブームになっていました(笑)。
――では高校時代はASICSを履きつつも、AND1を履いたり、K1Xを履いたりしていらしたと。ASICSは、何を履いていましたか?
篠山 ASICSは、3年生の時のインターハイは、『GEL HOOP』でした。ウインターカップは、『GEL BURST』のマジックテープで留めるタイプのものを履きました。上級生になるにつれて筋力もついてきていて、やっぱりASICSがいいなぁと思えてきたというのが、高校の3年間の流れでしたね。でも高校を卒業してから、大学の時はチームでCONVERSEを履いていたので、4年間はそれを履いていました。
――当時のCONVERSEのバッシュというと?
篠山 う~ん、非売品? みたいなのものを履いたり、ドウェイン・ウェイド(マイアミ・ヒート)のバッシュをずっと履いていました。
――『WADE MID』とか、懐かしいですね。私も履いていたんですが、ちょっと足に合わなくて(笑)。
篠山 そうそう。僕もちょっと(足に)合わなかったです(笑)。
――大学を出られてからは、もうずっとASICSで?
篠山 はい!
【この一足~バッシュへのこだわり】 篠山竜青「多くのメーカーのバッシュを履いてきましたが、やはり“本気ならアシックス”です」(後篇)はこちらのリンクから→ https://basketballking.jp/news/japan/20180612/72842.html
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