【この一足~バッシュへのこだわり】狩俣昌也「Bリーグで『PUMAといえば“狩俣”』と言ってもらえるようになります」 (後編)

シーホース三河のキャプテンとしてチームを引っ張る存在でもある狩俣昌也 [写真]=B.LEAGUE

Bリーガーにバッシュへのこだわりを聞いていく連載、第11回。今回登場するのは、狩俣昌也選手(シーホース三河)。B1中地区での激戦を戦うチームを引っ張るキャプテンは、どんなバッシュでプレーしているのか? 今回はその後編をお伝えする。

前編はこちら

文=CARTER_AF1
取材協力=シーホース三河

バスケットボールキャリアにおいて大きな意味のある、K1Xとの出会い

狩俣はBリーグで初めてPUMA『CLYDE COURT』を履いてプレーする [写真]=B.LEAGUE

――前回は狩俣選手のバッシュ遍歴を高校時代までお聞きしました。その後はどんなバッシュを履かれましたか?
狩俣
 大学ではAND1とJORDANブランドの『JUMPMAN』シリーズを履きました。大学を出て千葉ジェッツに入団した時にAND1がサプライヤーになってくださったので、それからはAND1を履き続けました。確かその頃は、『DRAGON MID』などを履いたように記憶しています。辰年の記念で発売になったバッシュで、作りはハイカットだったのですけど、柔らかく軽い作りになっていたので。千葉時代から琉球ゴールデンキングスに移籍した年の途中まで履いていました。

――琉球時代の途中からは何を?
狩俣
 その時からK1Xにしました。それからはずっとK1Xです、福島ファイヤーボンズでも、シーホース三河に来てもK1Xを履いていました。

――K1Xのバッシュが日本で流通しだしたのは十数年前からだったと思いますが、狩俣選手が琉球時代にそれを履こうと思ったきっかけは?
狩俣
 ええっと、まずは周りでK1Xを履いている人がほとんどいなかったからですね、そこは大事なので。被らないというのが(笑)。

――ええ、大事だと思います(笑)。K1Xで最初に履いたモデルを教えてください。
狩俣
 ミッドカットの『ANTI GRAVITY』(アンチグラビティ)というモデルでした。

――『ANTI GRAVITY』といえばK1Xを代表するバッシュですね。『ANTI GRAVITY』は、PUMAの『CLYDE COURT』のイメージにも近い、フラットな作りのソールになっています。そのソールの形状などは、それまで履いていたAND1のバッシュとの違いを感じたりは?
狩俣
 気になるような感覚の違いはなかったです。それまではAND1を履いていて、試し履き用でK1Xを送っていただいた時に比べてみたのですけど、(性能面での優劣など)大きな差はないなと。僕に(K1Xを履かないかと)声をかけていただいたこともうれしかったですし。それもK1Xに変えてみようと思った理由ですね。

――『ANTI GRAVITY』は1年ほど履かれていましたが、その後は同じK1Xの『PARADOXUM』(パラドクサム)にされましたね。それは『PARADOXUM』がローカットモデルだったからでしょうか?
狩俣
 はい、その時はずっとローカットを履きたいと思っていたんです。ですから『PARADOXUM』が発売された時、これだと。

――履いてみてどうでしたか。
狩俣
 ローカットになって足首の自由度が増して動きやすかったですし、『ANTI GRAVITY』より軽さもありましたし、性能面ではそこが良かったです。あとはカラーリングの豊富さと、デザインそのものでしょうか。”K1X”と大きくサイドに入っていて、目立ちますよね。観戦してくれるファンの皆さんが「何アレ?」となる感じも欲しいので(笑)。

――その感じが、プレーへのモチベーションにもなると。
狩俣
 ええ、それはあります(笑)。

――狩俣選手はそうして昨シーズンまで、長くK1Xを履かれていましたが。K1Xを履いていたゆえのエピソードはありますか?
狩俣
 K1Xを履いていた時、それをPRする際のモデルに起用していただいたのは有難かったですし。長い間履いていたので、小さいお子さんがファンレターを渡してくれる時に「僕も大きくなったらK1X履きたい」と言ってくれたりしたことは、すごくうれしかったですね。「僕も同じようにK1Xを履ける選手になれるよう頑張ります」というように。

――「K1Xと言えば狩俣選手」というイメージで、狩俣選手に憧れた子供たちからそのようなレスポンスがあったわけですね。他に何かありますか?
狩俣
 う~ん、そうだなあ……やはりK1Xなのですが、bjリーグのオールスターに選ばれた時に僕のオリジナルモデルを作ってもらえたことがありまして。カラーリングは普通ですが、僕専用のオリジナルロゴをつけてくれたんです。出場記念として製造してくれまして、何足かの限定で販売もされたと思います。

 他には、またPUMAの話になりますけど。『CLYDE COURT』が壊れてしまったというのは面白いエピソードになるでしょうか。試合で使っていたからというのはありますけど、ショックでしたね(笑)。

――ああ、それは……せっかく海外から取り寄せて、まだまだ履こうと思っていたのに、と(笑)。
狩俣
 そうなんです。友人達からは「お前ついにそれ買ったか」と言われ。SNSでも反響ありましたし、選手からも「俺も履きたかったのに、先越された」と言われたりもしていたのに。

――しかしながら、BリーグでPUMAを最初に履いたのは狩俣選手、という称号は勝ち取りましたから。今後も『CLYDE COURT』の別のカラーもリーグで履かれますよね。もう、「日本でプーマといえば」というイメージになるぐらいに。
狩俣
 もうPUMAと言えば僕、になると(笑)。そこは譲りたくないですね。ですから今後も、新しいカラーが出れば『CLYDE COURT』はどんどん買って、どんどん履いていくべきだなと思っています(笑)。

バッシュはその人の個性を表すもの

――ではここで別の質問を。これまでに狩俣選手が履きたくても履けなかった、憧れのバッシュというのは何かありましたか?
狩俣
 ASICSのカンガルー革で作られたシューズ、『POINT GETTER』です。

――折茂武彦選手(レバンガ北海道)も、子供の頃に履くことが叶わなかった憧れのバッシュとして名を挙げていました。
狩俣
 そうだったんですね。僕も小学生の時はすごく憧れていました。でも(価格が)高くて手が届かなくて。

――それもお兄さんの影響ですか。
狩俣
 確かミニバスで強かったチームと対戦した時、そのチームにいた上手い選手が履いていたので、それが憧れになったんだろうと思います。

――それは絶対に履きたくなりますね。両親にお願いしたとか?
狩俣
 おねだりしたとは思います、本当に履きたかったですから。でも、(許可がおりず)履くことはなかったですね(笑)。

――では、憧れた・参考にしたプレーヤーは? と聞かれたら、狩俣選手は誰を挙げますか。
狩俣
 バスケを始めてすぐの頃は、マイケル・ジョーダンだった気がします。そして小学6年生ぐらいからは、田臥勇太選手(栃木ブレックス)です。秋田の能代工業高校で高校9冠をしていた時代で、すごく憧れていました。

狩俣選手が「一度マッチアップしたい」と語ったミロシュ・テオドシッチ [写真]=Getty Images

――NBAではジョーダン、日本では田臥選手に憧れたと。逆に、国籍は問わず狩俣選手がマッチアップしてみたい選手と聞かれたら?
狩俣
 今は、ミロシュ・テオドシッチ(ロサンゼルス・クリッパーズ)【注1】ですね。見ていてわくわくするあのパスセンスは素晴らしいなと。ジェイソン・ウィリアムズ(元サクラメント・キングス他)も好きだったので、テオドシッチは彼に似ているなと思うこともあります。あのイマジネーションはすごいですね。

【注1:ヨーロッパ最高のプレイメーカーと称されて久しい、セルビア出身のポイントガード。30歳にしてNBA挑戦を期しクリッパーズに加入、NBAでもそのパスセンスを発揮し、コート上の魔術師とも表現される】

――プレー用のバッシュも含め、スニーカーに類するシューズは現在何足ほど所持していますか?
狩俣
 10足くらいだったと思います、その中でプレー用は4足くらいです。

――シューズを選ぶ上で、デザイン上のこだわりなどはあります? 自分以外に履いている選手があまりいないという要素に加え、カラーリングで好きな色などはいかがでしょうか。
狩俣
 特にカラーリングでこれというこだわりはありません。もちろん、その日の対戦相手のチームカラーなどは避けますが。色自体で言えば、黒とか白というようなシンプルな色が好みではあります。それか、真逆の奇抜な配色か、ですね。

――そんな狩俣選手が、これからバスケを始めようという人が、バッシュ選びに迷っている場面に遭遇したとします。狩俣選手なら、そこでどんなアドバイスを送りますか?
狩俣
 僕だったらまずは、他の人と被らないバッシュを、と考えてしまいますけど(笑)。迷ったなら、好きなデザインで選んでしまうのがいいかなと思いますね。履き心地ももちろん大事ですが、自分がカッコいいと思った好きなデザインのバッシュを履けば、それだけで気持ちが上向きますから。

――ちなみに狩俣選手もそうだったのですか。
狩俣
 はい。新しいおろしたてのバッシュとか、自分が気に入ったデザインのバッシュを履く時は、その日の練習に臨むテンションがいつもとは違ってくる、というのはあります。それで機能の部分も合えば言うことなしだなと。

――まずは好きなデザインで選んでみる、その中で機能面でも足に合うバッシュに最終的に決める、ということですね。
狩俣
 はい、それがいいんじゃないかなと思います。

――では、狩俣選手にとって、バッシュとはどんな存在ですか?
狩俣
 それは、難しい質問ですね…、プレーの一部になるものとも言えますけど、”個性”でしょうか。僕の個性を表してくれる、僕の一部となるものだと思います。試合で履くバッシュを選ぶこと自体でも、機能を第一に選んで履いている選手がいますし、ずっと同じモデルを履き続けている選手もいますし、僕のように他に誰も履いていないから試してみようと選ぶ選手もいると思いますし。そうしたところも選手の個性だと思えます。

――選んだバッシュや、それを選ぶ過程もそれぞれの選手の個性だと。
狩俣
 例えばバッシュの履き方という部分にも個性が出ると思うんです。僕は結んだシューレース(靴ひも)は中に入れるのが好きなのですけど、外に出して長く見せる人もいますから。

――最後に、これだけは言っておきたい、ということがあればぜひ。
狩俣
 少し前にインソールを作ってもらったのですけど、それを担当した方から「バッシュはまず踵を合わせてから履くようにするといいよ」と、アドバイスされました。この連載を読んでる皆さんも、バッシュを試着する際にはしっかり踵を合わせてから履いてみてください。より足に合うバッシュが見つかると思います。

狩俣選手が自費で購入したPUMA『CLYDE COURT』 [写真]=CARTER_AF1

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