秋田ノーザンハピネッツとの息詰まる大接戦し中断期間へ
2月11日、ウィングアリーナ刈谷で行なわれたシーホース三河と秋田ノーザンハピネッツの第2戦は、息詰まる大接戦となったが、最後はベテランの冷静なプレーが三河に勝利をもたらした。2連勝した三河は“貯金”を今季最大の4に伸ばし、中地区3位をキープ。一方の秋田は今季チームワーストタイとなる6連敗で中断期間を迎えた。
第1戦で完敗を喫した秋田は、前日よりさらにハードなフィジカルディフェンスを遂行。第1クォーターの残り3分で5-2とロースコアなディフェンスゲームになる。我慢の展開の中、三河は「ファウルトラブルや体力の消耗を考慮して」温存していた桜木ジェイアールをコートに送ると、桜木がベテランらしい老獪なプレーでゲームをコントロール。そこからは壮絶な打ち合いとなる。三河のエース・金丸晃輔が40分フル出場で41点を叩きだせば、秋田はインサイドを制したジャスティン・キーナンが34得点で譲らない。
一進一退の凌ぎ合いが続いた第4クォーター、秋田は小野寺祥太の連続得点、下山大地の3ポイントシュートなどで抜けだし、残り1分半で86-93と7点のリードを奪う。しかしホームの“大青援”に後押しされた三河は、狩俣昌也、金丸が果敢にリングにアタックして、フリースローやリバウンドで同53秒に2点差まで詰め寄る。
勝負を決めたのは、第1戦で唯一無得点に終わり、快勝に沸くチームの中で悔しい思いをしていたキャプテンだった。ウォーミングアップでギリギリまで3ポイントシュートの練習をしていた狩俣に、タイムアウトで鈴木貴美一ヘッドコーチが声をかけた。
「シュートを狙え。空いているぞ」
試合終了残り17秒、アイザック・バッツからのパスを受けた狩俣は、迷いなくシュートを放つ。同点の3ポイントはリングを射抜き、さらに同4秒にファウルで得たフリースローも決めて勝ち越し。三河が土壇場で逆転勝利を飾った。
秋田のジョゼップ・クラロス・カナルスHCは「残り17秒で同点のシチュエーションで、コート上に若い選手が多かったために判断が良くなかった。オーバータイムでもいいのに、中山拓哉が強引にドライブしてターンオーバーを犯し、長谷川暢も簡単にファウルしてフリースローを与えてしまった。その前の時間帯の(ファウルアウトになった)シチュエーションも含めて、結果として勝てる試合を落としてしまった」と悔やんだ。
一方、三河の鈴木HCは「相手は『抑えてやるぞ』とカリカリして、大事なところで2回ファウルをした。最後で冷静になれなかった。僕らはベテランがいるので、冷静に粘り強くやることができたと思います」と勝負所で冷静にプレーした選手を称えた。
チームとして、若手選手を「勇気を持って育てる」
「岡田(侑大)選手に経験させたくて出したのですが、(秋田ディフェンスの)激しさに戸惑ったみたいで、本来のシュートが入らなかった。それでも、そういう(若手に経験させる)ことをしながら、最後まで諦めないで1点差で勝てたということは、チームにとっても非常によかった」
若手を育てることと勝ち続けることの両立は簡単なことではない。鈴木HCは特別指定選手の岡田、熊谷航ら若手選手を「勇気を持って使った」中で勝利を収めたことが、今節の収穫だと強調する。
「開幕5連敗をしてチームとして余裕がない中でも、怖がって、前からいた選手ばかり使っていては、チームとしての伸びしろがない。今日のように思わぬファウルをしたり、ターンオーバーしたり、若手を使うことはリスクがあるが、ベテラン選手が見えないところをかばいながらやってくれている。天皇杯でもアルバルク東京さん相手に若手を使うコーチはおそらくいないと思うし、今日の秋田さんもディフェンスがフィジカルでリーグでもトップクラスのチーム。そういう試合に出すことで、彼らの良い経験になる。今日は大事なところでは代えましたが、勇気を持って、育てるつもりで出しています」
経験豊富なコーチや選手に支えられながら、急成長を遂げている岡田は、「狩俣さんなど周りの選手がリードしてくれるので、思いきってできている。シュートが入らなくなっても、最後は金丸さんやジェイアールさんが決めてくれるので安心して、自分は攻める姿勢を貫きたい。まだ、自分で行こう行こうという意識が強すぎて、ターンオーバーや無理なシュートを打ってしまうところがあるのは課題です。自分に見えてない部分を、KJ(松井啓十郎)さんがハーフタイムにアドバイスをくれて、そこで気がつくことも多い。先輩から学ぶべきところを学びながら、若い選手と新しい三河をつくっていきたい」と貪欲に話す。
「試合内容も全体的に良くなっているし、徐々に勝ち方も覚えてきている。この中断期間は非常に大事だと思っています。ベテランには少しがんばってもらって、若い選手にあわせた練習をしっかりしたいと思います」(鈴木HC)
バイウィークを経て、若手とベテランが融合した三河がどんな進化を遂げていくのか期待が高まる。
文=山田智子