2019.01.31
キャプテンとエースは満面の笑みで勝利のハイタッチをかわした。クールなエース・金丸晃輔(シーホース三河)がこれほど感情を表に出すのは珍しい。その表情にはこの試合のタフさと、ライバルとの対戦を楽しんだ充実感がにじみ出ていた。
三河と琉球ゴールデンキングスの第2戦は、1点を争う激戦の末、ホームの三河が76-74で前日の雪辱を果たした。序盤は琉球が主導権を奪う。後手に回った三河は、7-14とリードされた第1クォーター残り3分40秒、キャプテンの狩俣昌也とルーキーの岡田侑大をコートに送ると、狩俣が「昨日はガードのところ、特に並里(成)には22得点8アシストとかき回されたので、今日はそこを徹底した」(鈴木貴美一ヘッドコーチ)という戦術を見事に遂行して、試合の流れを一変させる。
三河で同じポイントガードとして切磋琢磨し、橋本竜馬(現琉球)からキャプテンを引き継いだ狩俣。「2年間、彼からたくさん学ぶことがあったので、成長する姿を見せたかった」と橋本と激しいマッチアップを繰り広げてオフェンスファウルを誘い、チームのエナジーを高める。昨日の第1戦でも、橋本に激しくプレッシャーをかけてミスを誘うと、そのルーズボールにダイブし、橋本のお株を奪う熱いプレーでアリーナを熱狂させた。さらに琉球時代のチームメートである並里にも、「基本的に沖縄出身の選手には負けたくない」と闘志むき出し。72-72の同点で迎えた第4クォーターには、並里からボールを奪取して速攻。ファウルで得たフリースローで1点リードすると、最後までこのリードを守り切って勝利を収めた。
キャプテンの奮起に呼応するように、攻撃では金丸が牙をむいた。第1クォーターのうちに追いつくと、第2クォーターから攻め気を全面に出し1on1からシュートをねじこみ続けた。「昨日から3ポイントをやらせない戦略は見えていた。昨日はちょっと無理して打ったかなという印象があったので、今日は2ポイントの比率を増やした」と冷静に語る日本屈指のスコアラーはゲームハイとなる24点をマーク。さらに特別指定選手の岡田が15得点、途中加入のケネディ・ミークスが15得点19リバウンド4ブロックショットと攻守にインサイドを制圧。終盤の勝負どころを託されたベテランの桜木ジェイアールが連続得点で試合を締め、チーム一丸で勝利をつかみ取った。「今日はいろいろな選手が得点を取って、それぞれがしっかりと仕事をしたのが良かった。でも一番大事なのはこういう試合を継続すること」と金丸は連戦に向けて気持ちを引き締めた。
盟友・橋本とは、コート上で時折言葉や笑顔を交わしたり、前日に続いてフリースローの際に橋本が金丸の周りを一周するパフォーマンスを見せるなど、激しく、時に和やかに火花を散らした。「(フリースローの時のような)そういうことも含めて楽しかった。欲を言えば、マッチアップしたかったですね。琉球のディフェンスはスイッチしないので、機会がなかった」と残念がった。第1戦の「フリースローのシーンは気合いを入れにいった」との橋本の弁を伝えると、「敵か味方かわからんですね」と顔を輝かせ、「今季はポイントガードをやってない時期もあったが、僕は彼がポイントガードをやってる時ほど怖いものはない。パスを散らせるし、フォワードの選手、シューターを活かす能力はリーグナンバーワンだと思っている」と変わらない信頼でライバルを讃える。
この勝利で再び貯金生活に入った三河は中地区3位、ワイルドカード争いでも2位に浮上した。古巣との対戦を「新しい日の幕開け」と表現した橋本同様、三河にとっても「敵か味方かわからない」元チームメートとの熱戦は、逆襲の後半戦の幕を開けるエナジーになったのかもしれない。
文=山田智子
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