2023.06.22

TOKYO DIMEに加入した藤岡麻菜美の想い…「もういいかな」と諦めかけたコートに再び

母校のコーチを務めながら3x3で再スタートした元日本代表の藤岡 [写真]=バスケットボールキング
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 3人制プロバスケットボールチームのTOKYO DIMEが6月20日に実施したトヨタ自動車 アンテロープスとの公開練習に、緑色のユニフォームを身にまとった元日本代表の藤岡麻菜美が姿を見せた。2月にシャンソン化粧品 シャンソンVマジックを退団してから4カ月。チームメート、そしてかつての対戦相手とコミュニケーションを取り合い、コート上では時折笑顔を見せながらプレーした。

 5人制のコートを離れたあと、「プレーするのはもういいかなって。指導者一本でやろうと思っていました」と当時を思い返した藤岡に、シャンソンOGで、DIME女子を初年度からけん引した森本由樹(現アドバイザリーコーチ)さんから「ちょっと体を動かしにこない?」と誘いが届いた。母校の千葉英和高校バスケットボール部でヘッドコーチを担う藤岡は当初「普通に体を動かすだけで、自分はもう(選手として)やらないと思っていました」。経験する前は「お遊び」と感じていた3x3だが、実際にプレーすると、印象とは全く違う風景が広がっていた。

「いざDIMEの練習に参加したら、すごく本気で取り組んでいて、素直にカッコいいなと。自分のイメージとは真逆のことが行われていました」

 チームには、2017年にユニバーシアード日本代表で一緒にプレーした加藤臨、高校の1つ後輩にあたる坪内瑠愛が在籍。「もう一度違う環境で、彼女たちと一緒にやりたいと思いました」と、かつてのチームメートが3x3をプレーしていたことも藤岡の心を動かした。

3ポイントラインからシュートを狙う藤岡 [写真]=バスケットボールキング

 練習に参加する傍ら、田村裕、大西ライオンとともに共同オーナーを務める岡田優介アルティーリ千葉)と話を重ねた。チーム名「DIME」は“アシスト”を意味する言葉。『世界一を目指し、常に勝利に拘る』、『人と人を繋ぎ、心を豊かにする存在に』、『3×3競技とバスケットボール競技の普及・発展に寄与する』の3つをチーム理念として掲げるDIMEに惹かれていった。

「岡田オーナーからチームコンセプトや3x3について聞いたら、もう一度競技をやるのもいいかなと感じ始めました。プレーヤーとしてはもちろん、人としてしっかりすること。そういった部分も大事にされていて、そういった人のところでバスケットボールをプレーするのもいいかなと思いました」

 5月22日にDIMEとの契約が発表。引き続き母校での指導をメインとしているため、練習に参加できるのは1週間に3回あるうちの2回が基本で、「行ける時に参加させてもらっています」と、二足の草鞋を履きながら日々を送る。練習試合ではあるもののトヨタ自動車戦にも出場し、会場に駆けつけたファンにお披露目された。

「まだ慣れていない部分があるし、体を満足に動かせていません。バスケットボールだけど、全くの別競技なのかと思うぐらい。めちゃめちゃキツいです」

1on1を仕掛ける藤岡 [写真]=バスケットボールキング

「休む暇がないので、5人制より、2、3倍も切り替えが早いですし、もう本当に大変です」とスピーディーな展開に苦戦しつつも、「自分がもっと溶け込めたら、パスを出すタイミングやスクリーンプレーを伝えられると思っています」と5人制での経験を徐々に還元していく構えだ。「5人制とは違って3ポイントラインのシュートが大事になってきます。積極的に狙っていきたいです」と、3x3で重要視されるアウトサイドシュートも習得していく。

 ただプレーするのではなく、3x3での経験を日々の指導にも役立てているという。「切り替えの面では5人制に活かされることが多いと感じています」。千葉県内では高校年代における3x3の大会も開催されているようで、「3x3を生徒たちにやらせてみたいとも思っています」と競技の普及にも努めていくつもりだ。

 志半ばで5人制の舞台から去ることになり、「ファンの皆さんにしっかりと説明できなかった。ユニホームを着て、バスケットボールをプレーしている姿を見せられなかったという心残りがありました」。それでも、TOKYO DIMEという新たな“居場所”を見つけた。

「ファンの皆さんやスポンサーさんと関われる機会が多いので、いろいろな方と触れ合って、いろいろな価値観を知って、人としての引き出しを増やしていきたいと思っています。バスケットボールを通じてそういったことができるのはすごく素敵だなと思います。競技は変わりましたけど、バスケットボールをプレーする自分を見に来ていただけるとすごくうれしいです」

 取材の最後、顔をほころばせながら「体が動く限りプレーしたいですね(笑)」と話した藤岡が、再び「大好きなバスケット」とともに歩み始めた。

プレーできる喜びを噛み締めていた [写真]=バスケットボールキング

文=酒井伸

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