2019.11.08

決勝まで3連続KO勝利の「ノビサド」が3x3クラブの頂点に

決勝トーナメントではさすがの強さを発揮したノビサド [写真]=FIBA 3x3 World Tour Utsunomiya Final 2019実行委員会
フリーライター

やっぱり強かったノビサド。通算4度目の戴冠

日本では2度目のファイナル開催。会場は栃木県宇都宮市の二荒山神社参道 [写真]=FIBA 3x3 World Tour Utsunomiya Final 2019実行委員会


 東京オリンピックの前哨戦と言っていいだろう。3x3クラブ世界一を決める、「FIBA 3x3 World Tour Utsunomiya Final 2019」が、11月2日と3日の2日間にわたって、栃木県宇都宮市にある二荒山神社参道のバンバひろばで開催された。日本にFinalがやってきたことは、2014年にゼビオアリーナ仙台で開かれて以来、2度目となる。

 3x3の男子主要大会をおさらいすると、大きく2つ。国別対抗戦となる「FIBA 3x3 World Cup(以下W杯)」と、クラブ対抗戦となる「FIBA 3x3 World Tour(以下WT)」である。Utsunomiya Finalは、後者のWTという世界各地を転戦するツアー大会の最終決戦地で行われる大会であり、シーズンチャンピオンが生まれる唯一の舞台だ。FIBAが定める大会の格付け(グレード)は10段階ある中で最も高く、今季は11戦あったMastersという大会の優勝チームを含むシーズン上位12チームが集結。過去3年間、Mastersが行われた日本の歴史的なベニューで、熱戦が繰り広げられた。

 今大会は12チームが3チームずつ4つのプールに振り分けられて予選を実施。上位2チームが2日目へ進出するレギュレーションの下、Mastersのシーズンランキング1位のリマン(セルビア)や、2位のリーガ・ゲットー(ラトビア)、昨季の覇者であるノビサド(セルビア)も延長戦の末に辛くも白星をもぎとり、1勝1敗で予選を2位通過した。

 そして一発勝負の決勝トーナメントでは、前日に苦しんだノビサドが、準々決勝から決勝まで3ゲーム連続で21点先取のノックアウト勝利を飾って、ファイナル連覇を達成した。通算では実に4度目(2014、2015、2018、2019)の戴冠。“3x3世界最強”と評されるチームは、改めてその真価を証明した。

 昨シーズンの彼らはMastersで5度の制覇から、Finalを優勝で締めくくるまで32戦無敗という大記録を打ち立てたが、今シーズンのMasters優勝は2度に留まり、Utsunomiyaでも初日はターンオーバーが目立ち、リズムに乗れない姿があった。しかし翌日は終始、見違えるような高い集中力でゲームにフォーカスして、攻守に他を圧倒。決勝では予選で敗れたプリンストン(アメリカ)を中盤に突き放して、21-17で見事にリベンジを果たした。Final MVPに選出されたタマス・イヴォセフは「最終的には自分たちが”勝者”だということを見せられた」と、王者として堂々と胸を張った。

東京2020に向けてアメリカが本格的に3x3参戦

今大会にはアメリカから2チームが出場(右はプリンストン) [写真]=FIBA 3x3 World Tour Utsunomiya Final 2019実行委員会


 3x3の母国であるセルビアからチャンピオンが生まれた一方で、Finalのベスト4にはバスケットボールの母国であるアメリカから史上初となる2チームが名を連ねた。MastersのレギュラーシーズンMVPを受賞したドミニク・ジョーンズを擁するニューヨーク・ハーレムと、6月のW杯でセルビアを撃破するなど初Vを遂げた同国代表を3人そろえるプリンストンの登場で、これまではヨーロッパ勢が幅を利かせていた勢力図は塗り替えられつつある。

 特にプリンストンは今大会の初戦でノビサドを19-10で破り、決勝こそ敗れはしたが、17-21と最後まで食い下がった。元NBAミネソタ・ティンバーウルブズのロビー・フンメルは、「(決勝は)良いゲームだったと自分たちでも思っています。ノビサドとは何回も対戦していて、すごいチームだということは理解をしているのですけど、今回のようなに最後が2本のフリースローで終わってしまったことは、ゲームをしている側としては満足のいかない終わり方だった」と悔しさを隠さなかった。ただそれでも「良いシーズンだったと思います。W杯でもWTも良い戦いができた」と、ファイナリストに到達できたその過程は大きな財産になった。

 さらに彼らの躍進に、ライバルも称賛を惜しまない。3x3世界最高の選手であるノビサドのドゥサン・ブルトは、Finalでセルビア代表として負けたW杯の借りを返すような戦いぶりであったが、その言葉にはリスペクトが溢れていた。「我々は今シーズンすべてのレベルの大会で彼らと何度も対戦し勝ったり、負けたりしてきました。Challenger(WTの下部大会)、WT、W杯、そして最後のWT Finalは2日間で2回対戦しました。私からしてみると、彼らは一番恵まれたチームです。運動能力の高い、素晴らしい選手たちで、今はそれに加え経験が備わってきました。彼らとの対戦はいつも素晴らしい。―私はあのチームを尊敬しています。試合に敬意があり、ズルをしない(勝ち試合を逃すこともあるし、今年2度我々をトーナメントから弾き出すこともできたのに)―勝てば喜ぶし、負けても勝者を祝うことができる、真のスポーツマンシップを持っているチームです」

 海外転戦を重ねて、ついにアメリカも主役に躍り出た今シーズン。続く2020年から2023年の4年間において、WT Finalはロサンゼルスでの開催も決まっており、バスケットボールの母国で3x3の機運がより一層高まっていくだろう。クラブ世界一の称号を手にする日もそう遠くはない。

 来年はいよいよオリンピックイヤーを迎える。男女の出場国枠は既報の通りそれぞれ8カ国中、4カ国が決定。男子のセルビアや日本も切符をつかんだ。その一方で、アメリカは3月の「FIBA 3x3 Olympic Qualifying Tournament(以下OQT)」で出場権の獲得に挑む。プリンストンのロビーも「OQTで勝ち抜くことは非常に難しい条件ではあるけど、チームとしてそこを勝ち抜いて、オリンピックに出場する権利を得たい。東京でゴールドメダルを獲ることが僕たちのゴールです」と、並々ならぬ意気込みを持つ。2019シーズンはUTSUNOMIYAで終わるが、3x3プレイヤーたちの歩みはTOKYOへ向けて、止まることなく突き進んでいく。

文=大橋裕之