2018.01.06

鈴木HCの指示による詳細なディフェンスが奏功し、オフェンスも活性化した三河

川崎との試合でチームの戦いぶりに好感触を得た三河の鈴木HC[写真]=山口剛生
大学時代より取材活動を開始し、『中学・高校バスケットボール』編集部を経て独立。メインフィールドである育成世代から国内バスケット全体を見つめる"永遠のバスケ素人"。

 1月6日、「第93回天皇杯・第84回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会」のファイナルラウンド男子準決勝がさいたまスーパーアリーナで行われた。第4試合、シーホース三河川崎ブレイブサンダースと対戦し、87-68で勝利した。

 三河は序盤から主導権を握り、一時は20点以上の点差を積み上げ、その流れを一度も譲ることなく完勝した。三河の鈴木貴美一HCは「最後は辻(直人)くんのすばらしいシュートで追い上げムードになったが、最初にめいっぱい離せていたので、そこで勝負が決まっていました。楽な展開で勝てたと思います」とコメント。12月に行われた直接対決は1勝1敗。力の差はほとんどないと言っていい。一発勝負のトーナメントの怖さを感じる一戦となった。

 鈴木HCは試合前、選手1人ひとりにかなり詳細なディフェンスの指示を与え、選手たちはそれを見事に遂行した。特に重点を置いたのは辻のシュートに対するケアと、ニック・ファジーカスのペイントエリアでのキャッチ&シュート。川崎のポイントガードを務める篠山竜青は「相手ガードのプレッシャーが強いという印象は(レギュラーシーズンで)ありましたが、今日はディナイもハードで、エントリーが簡単にできず、重いオフェンスになってしまいました」と感触を語っている。

東芝がオーナーとして迎えた最後の天皇杯。優勝の夢が途切れた川崎の篠山[写真]=山口剛生

 一方の川崎は、ミスマッチを突いた桜木ジェイアールを軸とする三河のオフェンスを守れなかった。篠山は「(桜木)ジェイアールにローポストでボールを持たれたときに、逆サイドにいるダニエル・オルトンにイージーに得点を取られてしまいました。そのことでアウトサイド陣も意識がインサイドに寄ってしまって、簡単なハンドオフのプレーを何本もやられてしまいました」と悔やむ。川崎の北卓也HCは、三河戦のポイントをディフェンスとコメントしていたが、そのディフェンスが機能せず第1クォーターから10点のビハインド。今シーズンの大きな課題であるリードされたときのオフェンスの稚拙さを立て直すことができず、さらに大きな点差をつけられた。

インサイドの脅威となったオルトン(三河)は、22得点11リバウンド4アシストと大暴れ[写真]=山口剛生

 「いいディフェンスをしたことでオフェンスまでよくなりました」(鈴木HC)という三河と、ディフェンスの失敗がダイレクトにオフェンスのメンタルにも響いた川崎。最終クォーターは辻が3ポイントシュートを4本決めて意地を見せたが、冒頭の鈴木HCのコメントのとおり、その点差はあまりに大きかった。「(追い上げを)最初からできるチーム。応援してくれたファンには残念な姿を見せてしまった」と篠山は話した。

 三河の金丸晃輔は「負けたら終わりのトーナメントでは、リバウンドやルーズボール、ディフェンスが大切」と話す。出場した選手たちがそれぞれ自分たちの役割を果たし、泥臭く戦い抜いた三河は、2年ぶりとなる決勝の舞台でもそれを見せられるか。

文=青木美帆

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