満22歳以下の選手を対象に、個人の能力に応じた環境を提供することを目的として運用されている「特別指定選手」。これまで数多くの選手が特別指定選手としてBリーグ各チームに加入してきたが、今年も多くのホープたちが参戦してきた。滋賀レイクスターズへ加入した野本大智もその一人で、帯同初戦となったサンロッカーズ渋谷戦で出場を果たすと、3戦目にはスターティング5に抜擢。その後スタメンで起用され続けており、早くも先発の地位を確立している。筑波大学で主力として活躍してきた野本は、どのような思いを持ってプロの舞台乗り込んできたのか。
インタビュー・文=岡本 亮
取材日=2021年2月4日
滋賀の緻密な中にも自由さがあるバスケに惹かれた
――12月にインカレが終了してから滋賀レイクスターズへ特別指定選手として加入しましたが、加入を決めた理由を教えてください。
野本 自分が入団して試合に出れるかどうかというところが決め手になりました。正直、今ほど試合に出られるとは思っていませんでしたが、コートに立てる機会も少なくないのではないかと考え、入りたいと思いました。
――チームにどういう印象を抱いていましたか?
野本 今シーズンはジョーダン(ハミルトン)がボールを持つ時間が長いと感じていますが、その中でショーン(デニス)さんのバスケは緻密な部分もありますし、その中にも自由さもあっていいなと惹かれていました。
――筑波大学では1年生からベンチ入りを果たし、大学生活を順調に歩んできましたが、4年生の時は新型コロナウイルス感染拡大の影響で思うように練習や試合ができなかったと思います。どのような影響がありましたか?
野本 今まで当たり前にやってきたことができないというのはすごい感じました。でも、それでありがたみというか、ありきたりですがバスケットができる幸せを実感できたので、いい経験だったのかなと思います。
――メンタル的にも難しい状況だったと思いますが、どのようにモチベーションを維持していましたか?
野本 最終学年なので、そこでモチベーションが落ちるということはあまりなかったですね。また再開する時に向けて、常に準備をしていました。
――筑波大は部内での競争が激しいと思いますが、それが力になっていますか?
野本 もちろん。同じポジションでも世代のトップレベルでやってきた選手が集まっていますし、気を抜けばすぐに抜かれる。プレータイムもなくなってしまいます。そういう緊張感はシーズンをとおしてずっとあったので、やらなきゃいけないと思える環境でした。
これから壁にぶつかることが多くなると思うので、しっかり準備しないといけない
――プロを意識し始めたのはいつ頃でしょうか。
野本 3年生のインカレが終わった時くらいですかね。チャンスがあったら一度経験してみたいなと。
――卒業後の進路はプロが第一志望でしたか?
野本 「教員になろう」と思って筑波に入りました。でも、1年からベンチ入りできるなんて思っていなかったですし、そういう経験を吉田(健司)先生が与えてくれたので、次は「実業団でバスケをしてみたい」と感じ、社会人になってもバスケを続けたいという思いが芽生えました。そして、3年生になってインカレで主力と言っていいか分からないですけど割とプレータイムをもらって、「じゃあ今度はもっと上の舞台に挑戦できたらいいな」となり、今に至る感じですね。
――1月23日のサンロッカーズ渋谷戦がプロ初出場となりましたが、はじめてコートに立った時の心境を教えてください。
野本 緊張とやらなきゃいけないことで頭がいっぱいというか、できることは頑張ろうという感じで、余裕はなかったですね。
――SR渋谷はBリーグでも1,2を争うディフェンスが激しいチームで有名ですが、それをプロ初戦で体感できたのは大きいのでは?
野本 すごく大きいと思います。その後の試合にもSR渋谷戦の感覚があるから、よりいいプレーができていると思います。
――1月27日の琉球ゴールデンキングス戦ではプロ3試合目にして初先発を飾りました。
野本 スタートと告げられた時は驚きましたが、やはりうれしかったです。うれしさと驚きがありましたね。
――プロのコートで感じた自身の課題は?
野本 まずは滋賀のディフェンスシステムにしっかり慣れないといけません。オフェンス面では、まだまだ周りが見えておらず、落ち着きもないのでそういう部分を改善したいです。
――日本人以外のヘッドコーチははじめてとのことですが、デニスHCはどんな指揮官ですか?
野本 バスケットの面では、すごく細やかな指導をされています。僕はまだまだ経験の浅いプレーヤーなので、そういう指導をしていただきたいと思っていました。あとは熱量があって、エネルギッシュなのも特長です。毎日同じ熱量でやってくださるので、自分も頑張らなきゃとモチベーションが上がります。
デニスさんはバスケット以外でも気さくにコミュニケーションを取ってくださる方です。僕は英語が分かるわけじゃないので、たまに「何言ってるのかな?(笑)」という時もありますが、笑顔で何か話そうとしてくれる姿勢というか、そういうのも親しみやすい。ここに来て良かったなと思っていますし、尊敬できる人です。
――滋賀の街の印象を教えてください。
野本 失礼な言い方かもしれませんが、都会ではないですよね。でも、僕がこれまで暮らしたことのある群馬県・茨城県と意外と似ていると思っていて。滋賀はすごい住みやすいですし、琵琶湖など自然も豊かで、心も落ち着きます。
――ブースターの印象は?
野本 かなり暖かく迎えてもらいました。自分がスティールしただけでも盛り上がってくれるのでプレーしてる側としてもうれしいですし、もっと頑張ろうと思わせてくれる存在です。
――今シーズン、残りの試合はどう戦っていきたいですか?
野本 自分が思っていた以上によく入れた序盤でしたが、これがこのまま続くとも全く思ってないですし
これから壁にぶつかることの方が多くなるのかなと思っているので、メンタル・スキルの部分で準備しないといけません。試合を楽しみながら、ルーキーらしくエネルギッシュにプレーし続けたいと思います。
――最後にブースターへメッセージをお願いします。
野本 ホームでまだ勝利を挙げられていないので、早く勝利する姿を見せたいですし、一緒に勝利を分かち合えたらと思っています。応援よろしくお願いします。
野本大智(のもと・だいち)滋賀レイクスターズ
1998年6月25日生まれ、群馬県出身。183センチ82キロで、ポジションはポイントガード。群馬県立高崎高校では全国的に無名ながら一般入試で筑波大学へ入学し、1年次からインカレでロスター入り。インカレでは優勝1回、準優勝2回を果たした。1月7日に滋賀レイクスターズへの入団が発表され、プロ3戦目となる1月27日の琉球ゴールデンキングス戦では先発の座を勝ち取った。物怖じしないアグレッシブなプレーが特長で、果敢にゴールを狙う。