2017.10.25

聖和学園が3年ぶり3回目のウインターカップ出場。「全国では面白い試合ができるようにチャレンジ」

宮城県を勝ちあがり、ウインターカップ2017出場を決めた聖和学園 [写真]=小永吉陽子
スポーツライター

 平成29年度 第70回全国高等学校バスケットボール選手権大会(ウインターカップ2017)出場権を懸けた、第39回宮城県高校バスケ選手権大会が、10月14日から16日にわたり気仙沼市総合体育館で開かれた。宮城にはすでにインターハイ(全国高等学校総合体育大会 バスケットボール競技大会)準優勝によって、推薦枠で出場権を得ている明成高校がいるため、明成を除いたチームによって出場権が争われ、出場権を獲得したチームと明成による決勝が行われた。

東北学院の尾上春樹 [写真]=小永吉陽子

 出場権争いは聖和学園高校東北学院高校の一騎打ちとなったが、勝負を決めたのは後半に走った聖和学園だった。前半はリード力と得点力が光る3年生の福川柚輝と尾上春樹がけん引した東北学院が5点リードで主導権を握るが、後半、東北学院の運動量が落ちたところで、聖和学園がエース遠藤由空を中心に持ち味である速攻を繰りだし、80-64で制した。

「この試合は我慢することがポイントでしたが、そのとおり、粘ってディフェンスをすることで後半に走って逆転できました。勝てて本当にうれしい」と聖和学園・阿部昭宏コーチは3年ぶりの出場に喜びを表した。

 最終日に行われた明成と聖和学園との決勝は、明成が92-58で圧倒。インターハイ準優勝の貫禄を見せつけ、6年連続11回目の優勝を飾った。

冬まで残る3年生は4人。信念のチーム作りで予選に臨んだ聖和学園

聖和学園の遠藤由空 [写真]=小永吉陽子

 女子部では伝統ある聖和学園だが、男子部のウインターカップ出場は3年ぶり3回目。初出場は2011年で、明成に勝って悲願の出場だった。明成は創部2年目の2006年に初出場を果たしてからすでに4度のウインターカップ制覇を誇るが、2011年だけは出場を逃している。その逃した1回をもぎ取ったのが聖和学園だ。そして、2回目の出場は2014年。これは明成が八村塁を主体に2年チームながらインターハイで準優勝したことにより、代表枠を得たものだった。

 過去2回はウインターカップでベスト16に入る力があるチームだったが、今回は「県で明成に次ぐ2位になれるかどうかギリギリの実力で、難しいチャレンジでした」と阿部コーチ。試行錯誤の1年間だったが、行きついたのは「生半可な気持ちでは全国大会には行けない」という信念を貫いたチーム作りだった。

「宮城には明成という全国区のチームがいることにより、僕らにも出場のチャンスが巡ってくることもあります。けれど、出場枠が増えても増えなくても、予選まで続ける覚悟のある選手は続けてほしい。出場枠が増えたあとに引退を撤回することはナシだと、夏の予選の時に3年生と約束をしました。チームの気持ちを一つにして戦いたかったからです。3年生数名が夏で引退する難しさがありましたが、覚悟のもとで残ってくれた3年生4人はチームを引っ張ってくれたし、今は下級生が伸びてきて、ようやく戦えるチームになりました」と阿部コーチは手応えを語る。

聖和学園の千葉勇祐 [写真]=小永吉陽子

 この夏、選手たちは隣県の福島で行われたインターハイを見に行き、刺激を受けてきた。キャプテンの千葉勇祐は言う。

「インターハイで明成が決勝に進出したときはみんなで感謝して喜びました。そこからは『絶対にウインターカップに出る』という明確な目標ができて、モチベーションが一気に上がって練習の雰囲気も良くなりました。何人かの3年生が抜けることは不安でしたが、今ではメンバーが変わっても走れるチームになったと思います」

 ウインターカップ出場の目標は達成した。だが、阿部コーチは「ここまでは県内を勝ちぬくためのチーム作りでしかなかった。全国で戦うにはここからが課題」だと言う。

「明成相手にはドライブを試みてもゴール下でつぶされ、フィニッシュまで持ちこめませんでした。このままでは全国大会でも同じように止められてしまいます。フィニッシュを決めるためには、もう一つパスを増やしたり、合わせたりすることが必要で、実際に明成と試合をしたことで、そのレベルを体感できたことが収穫。『全国はこんなもんじゃないぞ』と、試合をとおして恩師に教えられました。あと2カ月で面白い試合ができるチームになれるようチャレンジです」と阿部コーチは、自身の仙台高校時代の恩師でもある佐藤久夫コーチとの対戦から得た学びを語る。これから大会までの2カ月間は全国区の戦いを身につけることを目指す。

「チームがダメな時にどう戦うか」夏の敗戦から進化を目指す明成

明成の村上孝太 [写真]=小永吉陽子

 ウインターカップの予選が免除されている明成にとっては、目的意識のある実戦から離れることになり、また決勝だけ参戦する戦い方には難しい面もあった。そのため、たった1試合とはいえ、内容を重視して大切に戦っていた。新人戦を睨んで下級生を起用しつつ、「精神的な安定とチームプレーの精度を高めること」(佐藤コーチ)をテーマに臨んだ大会だった。現状では下級生が台頭し始め、選手層は厚くなってきている。

 インターハイで逃した日本一を獲るためにキャプテンの相原アレクサンダー学は「チームがダメになった時こそ、みんなでコミュニケーションを取って戦うことが課題」だと語る。夏の悔しい敗戦からさらなる進化を目指す明成だ。

文=小永吉陽子