2017.12.27

福大大濠相手に互角に渡り合った北陸学院、今年のチームを構築したのはコーチと選手間による“勉強と修正”

大学時代より取材活動を開始し、『中学・高校バスケットボール』編集部を経て独立。メインフィールドである育成世代から国内バスケット全体を見つめる"永遠のバスケ素人"。

 12月26日、東京体育館で「ウインターカップ2017 平成29年度 第70回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の男子3回戦が開催された。前大会3位の北陸学院高校(石川県)は福岡大学附属大濠高校(高校総体1/福岡県)に70-76で敗れた。

 北陸学院のエース・大倉颯太は、後輩たちに向けたコメントを求められると「もっともっと勉強して、勝ち方を追求してほしい」と話した。「練習しろ」とか「頑張れ」といった言葉の前に”勉強”が出るところに、今年の北陸学院の本質があるように感じた。

 今年の北陸学院のスタメン平均身長は181.6センチ。創部5年の歴史の中でもっとも小さいチームだ。昨年のチームも最長身190センチで留学生を擁するチームを打ち破る見事な戦いぶりを見せたが、190センチオーバーのフロントラインをズラリとそろえた福大大濠を相手に互角に戦った今年のチームも、間違いなく素晴らしいチームだった。

 濱屋史篤コーチも「ハーフタイムで1点ビハインドという展開は、当初描いていたプランよりもいい展開でした。最後は大濠さんの3ポイントシュートが当たりだして修正が効きませんでしたが、最後の最後まで自分たちの流れでプレーできたと思っています」と手ごたえを感じている。

福大大濠の先発SF横地は191センチ。北陸学院戦では3ポイント2本を沈め、19リバウンドを奪った[写真]=兼子慎一郎

 チームの発足当時、濱屋コーチは5年の歴史でもっとも小さいチームを勝てるチームにするため、相当悩んでプレースタイルを作ってきたと振り返る。そして、「自分も世界のバスケをいろいろ見て勉強してきたし、選手もいっぱい勉強してくれました。そういった意味でいい融合ができたんじゃないかなと思います」と続けた。

 熱心な指揮官につられて、選手たちも積極的に世界の試合映像を見た。「NBA、NCAA、ユーロリーグ。僕もめっちゃ見ますけれど、選手たちも相当見ていますよ。練習や試合中の発想を見ていれば、すぐにわかります」。

 濱屋コーチはその一例を笑いながら教えてくれた。

 「僕が作ったセットオフェンスをちょっとアレンジしてみて、『バレるかな? バレないかな?』ってこっちの顔色をうかがうんです。『お前ら、何してるんだ!』みたいなことを突っ込みながらも、そういう発想がとてもおもしろくて。トップダウン型の指導はあまり好きではないので、あいつらの意見を聞いて、どう戦いたいか、どうマッチアップしたいかを聞きながら、少しずつ戦い方を修正していきました」

 「北陸学院を選択したことに間違いはないですか?」と記者に尋ねられ、しっかりうなずいた大倉も言う。

 「指導者に習うだけのバスケットというのも一つの形だと思うんですが、『選手たちからの意見があってコーチもいて』というのがうちのチームの強みです。コーチが勉強しているぶん自分たちもよく勉強して、やりたいバスケットを探し求めてきました。それが北陸学院らしさだなと思います」

選手間でセットオフェンスをアレンジしてきたという北陸学院。バスケットの勉強に費やした時間は相当なものだったに違いない[写真]=兼子慎一郎

 大倉という世代屈指のポイントゲッターが抜け、チームはまた新しいスタイルを模索する。

 「来年も小さいチームですが、日本バスケ自体、世界に出れば小さいわけです。小さいチームでも大きなチームを倒せるということを証明するのが北陸学院の役割。次こそはメインコートに戻ってきて、北陸学院の強さを日本中に見せたいと思います」

 濱屋コーチは力強く宣言した。

文=青木美帆

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