2017.12.29

強気の我慢が勝因! 大阪桐蔭がウインターカップ初制覇!!

2度の延長となった大激戦の末、初優勝を勝ち取った大阪桐蔭高校[写真]=兼子慎一郎
バスケットボールキング編集部。これまで主に中学、高校、女子日本代表をカバーしてきた。また、どういうわけかあまり人が行かない土地での取材も多く、氷点下10度を下回るモンゴルを経験。Twitterのアカウントは @m_irie3

 12月28日、『ウインターカップ2017 平成29年度 第70回全国高等学校バスケットボール選手権大会』は女子決勝を迎え、ともにどちらが勝っても初優勝という大阪桐蔭高校(大阪府)と安城学園高校(愛知県)が対戦した。

 安城学園にとって、いかに竹原レイラ(3年)をどう守るかがこの試合のポイントだったと言えるだろう。出だし、安城学園の金子寛治コーチはボックス&1を選択したが、「外角へのプレッシャーをかけられず3ポイントシュートもやられたので、ゾーンプレスからマンツーマン(ディフェンス)に戻した」(金子コーチ)ことで、試合が動き始める。

 さらに大阪桐蔭のゾーンディフェンスに対して、金子コーチは「練習でもやらせたことのない野口(さくら)にポイントガードをやらせた」ことがチームに流れを生み出し、内外から相澤ひかり、千葉暁絵がドライブや3ポイントシュートを決め、第2クォーターで逆転に成功した。

試合終盤になるにつれて、得点を伸ばしていった相澤は16得点を記録[写真]=兼子慎一郎

 大阪桐蔭にも誤算があった。「自分が自分がという気持ちが強すぎて、空回りした」と大阪桐蔭の指揮をとった永井雅彦アシスタントコートが振り返ったように、竹原が本来の調子を出せない。竹原に入ると安城学園は2人が素早く寄り、竹原を自由にさせない。安城学園が38-30とリードして前半を折り返した。

 後半は大阪桐蔭の我慢の時間が続く。最大で14点ものリードを奪われ、さらに竹原とリバウンドやルーズボールで貢献していた永井唯菜がファウルトラブルに陥り、思いどおりのプレーができなかった。この場面で永井アシスタントコーチは「ここで逃げたらやられてしまう。交代させるつもりはなかった」と、強気の采配を見せる。さらに永田舞、鈴木妃乃、小田垣李奈のガード陣が奮起する。

永井はオフェンシブ・リバウンド10本を含む17リバウンド、17得点と殊勲の活躍[写真]=兼子慎一郎

 安城学園2点リードで迎えた第4クォーター終盤、大阪桐蔭の鈴木が値千金の3ポイントシュートを決めて同点。その後、互いにターンオーバーを犯して試合は延長に入っていく。残り2秒、安城学園は野口からゴール下の深津彩生へパスがつながり、決着は再延長にもつれ込んだ。

 ここでは深津、相澤ひかりが決めて安城学園がリードを奪うも、大阪桐蔭は竹原がファウルアウトするも、小田垣、鈴木のドライブで応戦。そして、残り約7秒、ドライブを仕掛けた鈴木が小林明生へパス。小林はこれをねじ込み、激戦にピリオドを打った。

歴史に残る50分間におよぶ戦いとなった今年の女子決勝戦を制し、喜びを爆発させる大阪桐蔭高校[写真]=兼子慎一郎

 「最後は相手のガード陣に脚力があったので心配していましたけど、ドライブでやられました」と試合後の記者会見で明かした金子コーチ。「いいトライができた反面、もったいなかった部分もあったので、今日の試合は出来としたら90点。ただ1年間を通して振り返ると今大会を含めて、3年生を中心によく頑張ってくれたと思います」と、下級生中心のメンバー構成ながら、普段からチームを引っ張った3年生の労をねぎらった。

 8本の3ポイントシュートを決め、両チーム最多の27得点をあげた鈴木に対し、「鈴木はあれぐらい3ポイントが入る選手。元々ドライブで切れる子で、メンタルも強い。最後も逃げなかった。ドライブで切っていけばスペースができる。ただこれも結果論。選手たちはよく戦ったと思う」

思い切りのいい3ポイントシュートとドライブで大阪桐蔭を活気づけた鈴木[写真]=兼子慎一郎

 日本体育大学、松下電器で幾度も栄冠をつかんできた永井アシスタントコーチにしても、指導者としては初の全国タイトル。「森田(久鶴)先生に感謝ですし、もちろん選手にも感謝」と、表情を崩した。

文=入江美紀雄

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