BリーグやWリーグの選手たちに、高校時代のことを振り返ってもらうインタビュー企画、
第7回は福岡県の九州産業大学付属九州産業高校出身の熊谷尚也だ。
今ではBリーグを代表するオールラウンダーとして活躍する熊谷選手だが、高校までは全く無名選手だったという。
そんな熊谷選手の自身の基礎を作った高校時代について話してもらった。
写真=B.LEAGUE
取材協力=川崎ブレイブサンダース
強豪校出身でもなくエースでもなかった中学時代
――バスケを始めたきっかけは?
熊谷 最初は兄弟の影響でサッカーを始めたのですが、すぐに辞めて、その後父のすすめで小3からバスケを始めました。
――熊谷選手の出身の福岡県は全国的に見てもバスケが盛んで、強豪チームが中学、高校とあります。
熊谷 中学は強豪校ではなかったので、最高成績は市大会に出場する程度でした。
――その中で熊谷選手の役割は? エースですか?
熊谷 エースではなかったです。チームメートに上手い選手がいたので。選抜などにも選ばれることもなく、特に目立つような選手ではありませんでした。
――九州産業大学付属九州産業高校に進学した理由は?
熊谷 父親の知り合いが職員でいらっしゃったことと、当時バスケ部ができて3年目ということで伝統あるクラブではなかったこともあり、気楽にバスケができると思って進学を決めました。
――高校の練習にはすぐになじめましたか?
熊谷 先輩方も良い人たちばかりでしたし、同級生もおもしろい人たちばかりだったのですぐになじめたかと思います。
――練習メニューが厳しくて部活をやめたいと思ったことはありますか?
熊谷 週の内に体育館が使える日が少なく外練がたくさんあったのでそれは嫌いでしたが、やめたいとは思わなかったです。
――名物練習はありましたか?
熊谷 ルーズボールの練習が夏休みの定番で先生がライン際にボールを投げてそれを飛び込んで取り、レイアップを決める。僕はレイアップ禁止で全てダンクしろと言われてやってました。
――当時のコーチに教わったことで思い出に残っていること、今でも役になっていることは?
熊谷 それまで背が高かったこともありずっとインサイドプレーばかりでしたが、高校からアウトサイドのプレーをさせてもらえるようになったことです。そのおかげで今こうして3番ポジションでプロになることができたと思います。
インサイド中心からアウトサイドのプレーにもチャレンジ
――思い出に残っている試合は?
熊谷 先輩たちの最後の大会で、今まで一度も勝ったことのなかった相手に逆転勝ちした時です。自分たちの代の最高成績はウインターカップ予選の2次トーナメントに出場です。多分ベスト32ぐらいだったと思います。
――福岡県は福岡第一、福大大濠など、強豪チームがありますが、対戦したことはありますか?
熊谷 実は一度もないんです。そこまで勝ち上がれるほどの力がなかったからですね。いつも県大会の決勝が近所で行われていたので、観戦にはよく行っていました。
――日本体育大学へ進学するきっかけは?
熊谷 長崎の高校によく遠征に行っていて、その時の監督さんが日体大卒の方で大学に話をしていただいて。当時の日体大のヘッドコーチの方がわざわざ福岡まで来てくださってプレーを見ていただいき、大学進学のお話をいただくことができました。
――高校3年間を振り返って、どのような点で成長できましたか?
熊谷 先ほども言いましたが、中学までは身長が高かったこともあり、ポジションを固定されていました。高校でアウトサイドのプレーに挑戦していなかったら、今の自分はないと思ってます。当時から様々なことに挑戦できたことが今の自分の成長につながっていると思います。
――新型コロナウイルス感染拡大の影響で思い切りバスケができない部活生にメッセージをお願いします。
熊谷 今のこの状況では思いきりバスケットができないですが、いつか必ず元の状態に戻って思いきりバスケットができる日がくるので、今はまず体調に気を付けてお家でできる地道なトレーニングを積み重ねる有意義な時間にしてほしいです。
――そんな中高の部活生へアドバイスをお願いします。
熊谷 みんながみんなプロを目指しているわけではないと思いますが、プロを目指している選手、そうでない選手みんながこの学生である時を楽しんでください。いろいろなことに挑戦して、有意義な学生生活を送ってほしいと思います。
※所属は2019-20シーズンのもの
熊谷尚也(くまがえ・なおや)川崎ブレイブサンダース
長身を活かしたリバウンドと高い身体能力を持ち味として、 2018年8月に行われた「第18回アジア競技大会(夏季大会)」では日本代表メンバーに選ばれ、 「FIBAバスケットボールワールドカップ2019 アジア地区予選」の日本代表候補メンバーにも選出された。2019-20から川崎ブレイブサンダースでプレー。38試合に出場(うち20試合先発出場)し、1試合平均6.2得点、リバウンド2.0本を記録した。