2023.10.19

【クローズアップ】かごしま国体でリーダーシップを発揮…大会を盛り上げた平岡皇太朗(茨城)と千保銀河(新潟)

決勝の舞台で顔を合わせた茨城の平岡(左)新潟の千保(右)[写真]=小永吉陽子
スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者に。国内だけでなく、取材フィールドは海外もカバー。日本代表・Bリーグ・Wリーグ・大学生・高校生・中学生などジャンルを問わずバスケットボールの現場を駆け回る。

優勝した茨城のチームリーダー平岡皇太朗

「燃ゆる感動かごしま国体」少年男子は茨城が2連覇。新潟が準優勝、静岡と宮城がベスト4という結果で幕を閉じた。その中で際立った活躍をしていたのが、優勝した茨城の平岡皇太朗(土浦日本大高校)と、準優勝した新潟の千保銀河(開志国際高校)という、決勝に進出した両キャプテンだ。

 どちらも高校2年。「自分は去年の国体で優勝しているので、経験を伝えようとチームを引っ張りました」(平岡)、「高校1年間の経験の差はとても大きいので、1年生たちに声掛けをしようとやってきました」(千保)と、両チームのキャプテンがリーダーシップの重要性を語るように、参加資格がある高校2年生の早生まれの選手が主軸になったチームは、大会を通して崩れない強さを発揮した。

 茨城のキャプテン平岡皇太朗は土浦日本大のポイントガード(176センチ)。中学時代は新潟の白新中で全中優勝(4校同時優勝)。父は土浦日本大の先輩でインターハイ制覇の経験を持ち、選手として新潟アルビレックスBB等で活躍し、ヘッドコーチとしても同チームで采配をふるった平岡富士貴。長男の陸太朗(白鷗大学3年)、次男の善太朗(日本大2年)も土浦日大出身であり、親子そろって土浦日大を牽引するバスケ一家に育った。

平岡富士貴氏を父に持つ平岡皇太朗 [写真]=小永吉陽子


 平岡の良さは、周りを生かすゲームコントロールと、自分で攻め込む得点力の両方を兼ね備えていることだ。決勝の新潟戦では、21得点、10アシスト、10リバウンドでトリプルダブルの大活躍を披露。相手のエースガードである北村優太がファウルトラブルでベンチに下がった終盤には、「状況をよく見極めてゲームを作ったところが抜け目なかった」と佐藤豊文監督(土浦日大高校)も褒めたたえたほどで、指揮官が絶大な信頼を寄せる“懐刀”としてチームを引っ張った。

「決勝で20点差を巻き返せたのは、前半は重い展開になっても我慢して、後半にプレッシャーディフェンスから流れを変えてブレイクを出せたからです。僕は去年の国体で優勝経験があるし、自分が崩れたらチームが崩れるので、そこは自覚を持って経験を伝えようとやってきました。土浦日大以外の選手とコミュニケーションを図れてチームが一つになったのが優勝の要因です。将来は日本を背負って戦えるガードになりたい」(平岡)

U16日本代表の経験で一皮むけた千保銀河

 決勝で35得点8リバウンド4アシスト、3ポイントも5本成功。新潟のキャプテン千保銀河は、今年の夏に大きな飛躍を遂げた選手だ。

 188センチのフォワードで、リバウンド、ドライブ、3ポイントとオールラウンドに活躍。今年9月にはU16アジア選手権の代表として国際舞台に立ち、インターハイでは2年生ながら準優勝した開志国際高校で活躍、国体でも準優勝に貢献した。インターハイまでは力が出せないことも多かったが「アジア選手権の経験はものすごく大きくて、日本代表として責任を持って戦うことや集中して戦うメンタルの大切さを学びました」と心の面で成長できたと振り返る。

U16アジア選手権にも出場した新潟の千保銀河 [写真]=小永吉陽子


 この夏のかけがえのない経験は、国体でのキャプテンシーとして発揮された。決勝の茨城戦で劣勢になってきた後半、「まだまだここから」「ディフェンスをやろう」――という千保の声が1年生たちを奮い立たせていたのだ。そして、自身も意地の3ポイントを決めて粘りを発揮した。

「自分はこれまでキャプテンの経験がなかったので、国体でキャプテンをやることは難しかったのですが、U16を経験したことで声掛けの大切さがわかったので、声掛けすることを意識してやりました。やっぱり、高校生の1年間の経験の差は大きいので、2年生の自分が引っ張ろうと思いました。この夏はアジア選手権、インターハイ、国体を経験して本当に忙しかったけど、成長できた夏でした。この経験を開志国際でも発揮したい」(千保)

ベスト4の静岡と宮城で光った1年生たち

 静岡は野津洸創(藤枝明誠高校1年)が得点源として活躍。期待されている得点だけでなく、190センチのサイズでボール運びをしてパスもさばき、リバウンドにも跳びつくオールラウンダーぶりを発揮した。その活躍ぶりに石谷優二監督(浜松湖北高校)は「静岡の大黒柱」としてコートに送り出した。準決勝の茨城戦では19得点10リバウンド4アシスト2スティールを記録し、エースとして気を吐いた。

オールラウンドなプレーでチームを引っ張った静岡の野津洸創 [写真]=小永吉陽子


 準決勝では力が及ばず茨城に敗戦。「自分が得点源として任されたけど決めきれなかった。国体でたくさんの経験ができたので自分のチームで頑張りたい」(野津)と課題を持ち帰った。藤枝明誠では、1年生ながら早くもスタメンに抜擢されており、インターハイや日清U18トップリーグにおいて経験を積んでいるだけに、今後の活躍が期待される選手だ。

 ガードが多く選出されていた宮城の中でも、多くの仕事をこなすガードとして存在感を放っていたのが三浦悠太郎(仙台大学附属明成高校1年、185センチ)だ。6月に亡くなった佐藤久夫コーチが「色々なことがこなせるガードにしたい」との思いで、春先から時折起用していた選手で、意表を突いたプレーが得意。国体でも前線から当たるディフェンス、ボール運び、アシスト、得点、リバウンドと「何でも屋のような選手として、エネルギーあるプレーをしてくれた」(仙台城南高校・岡崎涼監督)とフル回転だった。

 父は能代工業高校(現・能代科学技術)、日本体育大学で活躍し、日本リーグのNKKでプレーした三浦祐司。二人の姉もバスケ選手というバスケ一家に育った。長女の舞華は白鷗大4年で今夏のユニバ代表に選出され、二女の瑞貴は仙台大明成の先輩であり、現在は日本体育大1年。自身も地元宮城の強豪、明成の門を叩いた。

バスケ一家で育った宮城の三浦悠太郎 [写真]=小永吉陽子


 チームが苦境のときに打破しようと果敢にトライする選手だが、準決勝ではファウルが込んでしまい、大型選手を前にしたときのディフェンスやシュート精度に課題を残した。

「国体ではチームが困ったときに助けたり、ミスマッチならゴール下で攻めることはできたけれど、跳び込みリバウンドのところで体力が持たなくて、手を使ったディフェンスをしてファウルになってしまったので練習で直します。これからも、色んなことにチャレンジする選手になりたいです」(三浦)

写真・文=小永吉陽子

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