2024.05.20

「能代カップに出たからこそわかることがある!」…大会の意義・夏への意気込みを聞く【前編】

優勝を決める試合となった開志国際対藤枝明誠 [写真]=バスケットボールキング
バスケットボールキング編集部

 能代カップ2024が5月3日から5日まで、能代市総合体育館で行われた。大会結果は、優勝は開志国際高校(新潟県)、2位が藤枝明誠高校(静岡県)、3位が東山高校(京都府)、以下、日本航空高校(山梨県)、駒澤大学附属苫小牧高校(北海道)、 そして県立能代科学技術高校(秋田県)の順位となった。

 今回で37回目を数える歴史あるこの大会は、田臥勇太宇都宮ブレックス)をはじめとする能代工業高校(現・能代技術科学高校)OBたちがプレーしてきたことでも知られている。能代工業高校と覇を競い合った出場チームはその年の高校タイトルを目指す有力校を中心に、国体の選抜チームの場合もあった。

 さらにはアメリカ高校バスケ界の強豪、モントロスクリスチャン高校といった海外のチームも含まれている。ちなみにモントロスクリスチャン高校が出場した際には現在、アルバルク東京のジェネラルマネージャーを務める伊藤大司氏が在学しており、能代カップで凱旋帰国を果たしている。さらにチームメートには後にNBAでプレーするグレイビス・バスケスがおり、その卓越したプレーで目の肥えた能代のバスケファンを唸らせた。

 加えて、能代カップの開催時期の絶妙さも、この大会の存在意義を大きくしていると言える。大会が行われるにはゴールデンウィーク期間中。これが終わると、各地のインターハイ予選はちょうど佳境を迎える時期となる。強豪同士が競い合うことで、初めて分かる自分たちの課題や問題点がうかびあがってくる。参加チームは大会を通して自分たちの力を確認して、“宿題”を持ち帰り、さらに強化を進めていくことになる。

 そこで、今回出場したチームに能代カップに出場することの意義や今後に向けての意気込みなどを聞いてみた。

能代カップはバスケの聖地で行わる大切な大会。耐える気力を養える

 第1試合の日本航空戦を逆転のブザービーターを食らい逆転負けを喫した開志国際。しかし、その後は、安定した試合運びで4勝1敗として、勝敗で並んだ藤枝明誠との直接対決の結果により、第37回大会のチャンピオンとなった。ちなみに今回の優勝でコロナ禍により中止になった大会を挟んで初優勝から4連覇を達成した。

 大会を振り返り、富樫英樹コーチはキャプテンで司令塔の清水脩真が体調不良によりぶっつけ本番だったことを明かした。それもあり「1試合目はそれが出たかな。2試合目から良くなりました。久しぶりにフルメンバーで試合をしたので、コンビネーションも尻上がりに良くなりましたね」と試合をするごとに調子を挙げていったチームに手応えを感じたようだ。

清水脩真の復調とともに開志国際も調子を上げていった [写真]=バスケットボールキング


 現在、1年生の高橋歩路(横手市立十文字中学、NBANOSHIRO BASKETBALL ACADEMY出身)を将来性を見込んでスターターに抜擢している。これについて、「リバウンドは弱いのですが、よくやっていると思います」と富樫コーチは及第点をつけた。

「実は2年生のポイントガードを連れてきてない状況です。戻ってくれば清水の負担も減るはず。インターハイには万全な態勢で臨みたいと思います」と夏の本番を見据えた。

能代カップはやっぱりバスケの聖地で行われる大会」と、富樫コーチは能代カップのイメージを話してくれた。「実は4連覇中で縁起の良い大会でもあります(笑)。ここで公式戦のような雰囲気の中で試合ができるのはありがたいですね。リーグ戦でスケジュール的にも厳しいですが、耐える気力を養うこともできる。ずっと続いてほしいと思います」

能代カップは自分たちの現在地を教えてくれる

開志国際戦で14得点を挙げた藤枝明誠の野田凌吾 [写真]=バスケットボールキング


「若いチームのもろさが出ました」と大会を振り返ったのが藤枝明誠の金本鷹コーチ。最終日、勝ったほうが優勝という開志国際との一戦は、第1クォーターから終始ペースを握られ、58−83で敗れた。

 藤枝明誠の武器といえば、チームディフェンス。ボールマンに対するプレッシャーはもちろんのこと、連動した動きの中で相手のオフェンスを封じ込める印象がある。しかし、「集中力が散漫でプレーで体現できず、甘えが出ていました」と振り返った。

 さらに「試合をする前に開志国際という名前と戦っていたのかもしれません。昨年は勝たせてもらっていますが、それもあり慢心というか、準備不足な面が多かったと思います」と指摘した。

 昨年までエースの赤間賢人(現東海大学)を筆頭に下級生から経験を積んできた最上級生たちがコートで躍動し、インターハイやウインターカップで上位進出を果たした。しかし、今年、キャプテンを務めるボヌ リードプリンスが3年生になったものの、その分、経験の少ないメンバーが多い印象だ。

 藤枝明誠は今回、能代カップに初出場を果たした。「伝統のある大会で、ここに来るだけでも光栄です」と語る一方、「全国で上位を狙うチームの中でどうプレーできるのか。自分たちの現在地も見えてきます」と大会の意義も語る。

 インターハイ向けて、キャリアの少ないメンバーを徹底的に育てる時期とも言える。だからこそ金本コーチは「選手たち自身で感じてほしい」と強調した。能代カップで感じたものを血や肉にしていくのは選手たちの意識次第だ。

バスケ以外の面でも学ぶことが多かった

 駒澤大学附属苫小牧の田島範人コーチは能代工業出身。それだけに「初めて教え子たちを連れてこられて感無量です」と笑顔で答えてくれた。大会前に合宿を行って準備したというが、「全国で優勝を狙うチームにディフェンス、オフェンスがどれくらい通用するかを課題にしていましたが、予想以上に通用しなかったなというのが感想です。それと選手層がどうしても薄いので、これだけのハイレベルのチームが集まった中で強度の高いプレーをすると、疲労から集中力が切れることもありました」と大会を総括した。

駒大苫小牧の得点源の一人、宮森昊太 [写真]=バスケットボールキング


 加えて、「北海道ではやり過ごせるミスがここでは許されない。一つひとつ丁寧にプレーしなければと感じました。このレベルのチームになると、一つのミスで一気に流れをもっていかれて、それが命取りになります」と、初めて出場したからこそわかるプレーへのこだわりを実感したようだ。

「全国のトップレベルのチームは立ち居振る舞いから違います。しっかりしているなと感じました。バスケット以外のところが優れていて、そのうえに技術や戦術もきっちりしている。強いチームはこういうことを徹底しているだと気づかされた大会でした」

 駒大苫小牧も抱えきれないほどのお土産を抱えて地元に帰っていった。

(後編に続く)

文=入江美紀雄