東山高校(京都府)は昨年の高校主要大会において、北海道札幌市で開催された「令和5年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」では準優勝、「U18日清食品トップリーグ2023」では2位、そして年末の「ウインターカップ2024」ではベスト8進出と、コンスタントに上位進出を果たしたものの、念願の全国優勝に手が届かなかった。
しかし、今年の東山はさらに注目だ。4月に行われた飯塚カップでは、ライバルと目される福岡大学附属大濠高校、福岡第一高校(ともに福岡県)、開志国際高校(新潟県)を破って優勝して、高校タイトル争いに名乗りをあげた。昨年から主力として活躍する瀬川琉久(3年)、佐藤凪(2年)は健在。さらに昨年の全国中学校大会、ジュニアウインターカップを制した四日市メリノール学院中学(三重県)から中村颯斗(1年)が加入するなど、まだまだチーム力がアップしそうな勢いだ。
今回、インターハイを控える東山を訪問。大澤徹也コーチ、共同キャプテンの1人、松島慎弥、PGにもトライする佐藤、そしてスーパールーキーの中村に話を聞いた。
取材協力=日本シグマックス
撮影=吉田孝光
5月の能代カップで取材した際、チームの仕上がりに不満をもらしていた大澤コーチ。インターハイの京都府予選でも「ボールが止まってしまって個人で打開している」と課題をあげていた。
「5月の段階に比べて良くなっている部分はあるので、インターハイの本番まで仕上げていきたい」と語る大澤コーチは、「相手がどうかというより、いかに自分たちのバスケをやりきれるかが課題です」と現状を説明してくれた。
そして、瀬川不在の時間が多くあったことにより、佐藤の自覚が芽生えていることも東山にとっては大きいと言えるだろう。
「実はインターハイ予選で一番落ち着いていたのが凪なんです。そういう振る舞いに成長を感じますし、チームのバランスをどのように取るかをとても考えている。下級生が入ってきたことでさらに自覚も増しています」
インターハイもいよいよ決まった。目指すチームの像がさらに明確になり、東山は夏の本番に向けて準備を進めていく。
「練習ではやっていたのですが、セカンドユニットが出ていって流れを変えることは、試合ではあまりできていませんでした。第1クォーターは瀬川や凪、中村を中心にオフェンス中心のメンバー構成になっているので、第2クォーターはセカンドユニットが出ていって、相手のオフェンスを止めることが近畿大会ではできました」
先に大澤コーチが話してくれたセカンドユニットの成長は、松島自身も感じていたようだ。
東山には瀬川、佐藤、中村とエース級の得点力で勝ち上がっていくイメージがあるが、実は泥臭いプレーでチームを支える選手がいるときに力を発揮する。
「僕が中心になってルーズボールやリバウンドを頑張ったり、留学生に対するコンタクトプレーも厭わないような泥臭いプレーを率先していきます。そんなプレーをインターハイでは期待してください」
「インターハイ予選は納得の行くプレーができませんでしたが、近畿大会に向けて内容にこだわっていこうと話をしていた中で、すごくいい内容で4試合を勝ちきることができ、インターハイに向けて良い大会だったと感じています」と、佐藤は振り返る。
新チーム結成以来、瀬川不在の時期に成長を遂げているのは大澤コーチだけでなく、自身も感じていることのようだ。
「ポジション的にもポイントガードをやることになるので、チームを勝たせなければいけないという責任感を感じてプレーするようになりました。下級生が入ってきたことによる責任も出てきたと思います。まだプレーでチームを引っ張るというのは自分のスタイルではないと思いますが、インターハイでは琉久さんを頼らずに勝利に導けるようになりたいです」
さらに去年のインターハイの決勝を経験しているものとして覚悟も話してくれた。
「去年の悔しさは忘れられません。それにこれまでのバスケ人生の中で日本一になったことがないので絶対に勝ちたいと思っていますし、勝たなければいけないと思います」
そんな強い気持ちを秘めながら、佐藤は勝利を目指すに違いない。
「中学まではい動けなくなることはなかったのですが、高校では相手も大きくて。大事な大会を前に思いどおりにプレーができず、チームに迷惑をかけました」と肩をすぼめた。
しかし、高校のバスケに順応するには時間はかからなかった。さすがにインターハイ予選ではプレッシャーのためか精細を欠く部分もあったが、近畿大会では持ち前の思い切りの良さが復活。少なからずチームの勝利に貢献した。
「今はスリーポイントが僕も武器です。琉久さんや凪さんがドライブしてからキックアウトでいいパスがもらえるんで、それをキャッチ&シュートで決めることが自分の仕事ですし、そして武器だと思っています」
夏の本番の前でさらに成長したプレーを見せてくれそうだ。